西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神職の階位

階位証

神社本庁包括下の神社の神職は、必ず「階位」を有しています(神社本庁についての詳細は、昨年8月5日付の記事を御参照下さい)。

「階位」というのは、一言でいうと、神主の資格もしくは免許に当たるもので、階位を取得しなければ、事務員、警備員、巫女等の神職以外の職員として神社に採用されることはあっても、神職(神主)として本庁包括下の神社に任用されることはありません。神社本庁の庁規第八十七条にも、「神職は階位を有し、且つ、神社神道を信奉する者のうちから任用する」と明記されており、階位を取得することは神職になるための絶対前提条件とされているのです。

同じ八十七条の条文のなかには、「権禰宜相当以上の職員を神職といふ」と明記されていることから、現実には、階位を取得して神職として神社に奉職しても、権禰宜(ごんねぎ)以上の職階を得なければ本庁からは神職としての扱いは受けませんが、まずは階位を取得することが、神職としての出発点となるのです。

神職には、階位の他にも、神職身分(特級、一級、二級上、二級、三級、四級)や神職としての職階(宮司宮司代務者、権宮司禰宜権禰宜宮掌、典仕、出仕など)がありますが、こういった身分や職階も、階位を取得しているという大前提のもとに授与されるものなので、まずは階位を取得しなければ、身分も職階も授かることはありません。こういったことからも、階位は、神職制度の基本中の基本ともいえます。

以前、私が個人的に運営していたホームページにて神職の階位や身分について詳しく記したことがあったのですが、今日は、そのときの文章をもとに、再度、階位について詳しくまとめてみることにします。

■階位の概要

神社本庁に所属する神社で神職権禰宜以上)に任命されるためには一定の資格を要し、その資格を「階位」といいます。階位は上から順に、浄階(じょうかい)、明階(めいかい)、正階(せいかい)、権正階(ごんせいかい)、直階(ちょっかい)の5階等に分かれており、神社本庁の階位検定委員会が候補者の性行、経歴、試験の成績等により検定を行い、適格者には統理が階位証を授け、階位が授与されます。最上位の階位である「浄階」については、資格要件を具備する者について階位検定委員会で選考によって検定しますが、「明階」以下の4つの階位については、「試験検定」もしくは「無試験検定」により階位が授与されます。

最も上の階位である「浄階」も最も下の階位である「直階」も、正式な神職として任用される資格であるという点においては何の変わりもありません。では、取得する階位によって何が違うのかというと、これ以外にも細かい違いはあるのですが最も大きな違いとしては、下の階位になるほど拝命される職階の制限を受けるということです。例えば、別表神社(平成16年末の時点で本庁包括下の神社は79,057社ですが、そのうち別表神社に指定されている神社は346社)の場合、「明階」以上の階位を持っていなければ宮司権宮司に任命されることはないですし、同様に、宮司代務者や禰宜は「正階」以上、権禰宜は「権正階」以上の階位を有していなければ任命されません。

諸社(別表神社以外の神社)の場合は、宮司宮司代務者は「権正階」以上、禰宜以下は「直階」以上の階位を有していなければ任命されません。つまり、全国の神社の大多数は諸社ですから、現実には、「権正階」以上の階位を持っていれば神社の代表者(法人としての代表役員)である宮司にはなることはできますが、最も下の階位である「直階」では、どの神社においても宮司になる資格はないということです。ただし、神社庁が特別の事情があると認めた場合は、条件を付して「直階」を有する者でも宮司代務者に任命されることはあります。

明階」以上の階位には職階の制限が一切ないので、「明階」と「浄階」との間には、基本的に実務上の違いはないということになります。なお、階位には昇階の制度があるので、「浄階」以外の階位については、試験を受けたり講習を受講することで、上の階位に昇階することも可能です。ただし、階位の検定試験は、基本的に誰でも受験はできるものの(受験条件はありますが、現職の神職であれば大抵その条件は満たしています)非常に試験の難易度が高く、また講習は、受講することができればほぼ間違いなく昇階しますが、受講資格にいろいろと制限があり、しかも開講する場所や期間も限られており、誰でも気軽にすぐに受講できるというものではありません。

■階位を取得する一般的な方法

前項でも述べたように、階位は「試験検定」もしくは「無試験検定」のいずれかにより取得します。「試験検定」は、その名の通り試験を受けることで階位を取得する方法ですが、階位の検定試験は非常に難易度が高いため、現実には「試験検定」により階位を取得する者は極希で、階位取得者の大多数は「無試験検定」(神職養成機関に入学したり、もしくは階位検定講習を受講するなどして階位を取得する方法)により階位を取得しています。

ちなみに平成16年度は、「試験検定」により明階正階権正階の検定合格証を交付された者は計8名(受験者は54名)で、「無試験検定」により明階正階権正階の検定合格証を交付された者は計834名でした。この比率をみても、「試験検定」はかなり難易度が高いことがわかります。なお、「試験検定」は明階正階権正階の3つの階位のみ実施されており、浄階と直階の試験検定は実施されていません。

というわけで、「試験検定」はあまり現実的な階位取得方法ではないため、この項では詳しくは触れません。以下はすべて、「無試験検定」についての解説です。

明階について

明階」については、神職養成機関の高等課程(國學院大學神道文化学部と、皇學館大學の文学部神道学科に設置されている4年間の課程)、専攻科Ⅰ類(國學院・皇學館の両大学に設置されている2年間の課程)、専修課程(京都國學院にのみ設置されている2年間の課程)のいずれかの課程を修了すると、修了時に「正階」が授与され、さらに明階検定の合格証も同時に交付されます(既に正階を持っている者は明階検定合格のみ交付)。

以前は、國學院・皇學館の両大学の高等課程を卒業すれば、卒業と同時に「明階」が授与されていたのですが、平成14年に「階位検定及び授与に関する規定」が大幅に改正され、現在は、両大学を卒業しても卒業時に直ちに「明階」は授与されず、卒業時は、「明階検定合格、正階授与」とされます。規定の改正後に発足した京都國學院の専修課程も同様で、卒業時は「明階検定合格、正階授与」とされます。

この「明階検定合格、正階授与」とは具体的にどういうことなのかといいますと、卒業時には「正階」が授与され、「明階」は直ちには授与されないものの、検定の合格後2年間、神社(本庁や神社庁も含む)で職員として実習を積み、さらにこの2年間のうちに所定の研修を所定期間(初任神職研修と、各種研修を4日間以上)受講すれば、検定合格の2年後、申請するだけで無試験で「明階」が授与されるということです。

つまり「明階検定合格」とは、直ちに「明階」が授与されるわけではないもの、実質的には明階の取得が約束されているのと同じことといえます。ただし、前述のように明階取得の条件には「神社での2年間の実習」と「所定の研修の受講」が含まれているので、この条件を満たしていない場合(卒業後神社に奉職できなかった場合や、奉職できたとしても社務が忙しかったり、もしくは宮司の許可を貰えず、研修に行くことができなかった場合など)は、明階検定に合格していても明階は授与されません。なお、昨今の奉職状況の厳しさを考慮し、この「2年間」という期間に対しては、「神職として奉職した場合のみ」とは限定されておらず、神職として採用されなかった場合(事務職員や巫女などとして奉職した場合)でも、神社で2年間在職すればその要件が満たされるという救済措置が採られています。

ところで、ここまで述べてきた課程(高等課程、専攻科Ⅰ類、専修課程)は全て、卒業時に「明階検定合格、正階授与」となる課程ですが、卒業時に「明階検定合格、明階授与」、つまり卒業と同時に直ちに明階が授与されるという課程もあります。それが、「専攻科Ⅱ類」と「明階総合課程」です。

専攻科Ⅱ類は、2年間の就学期間を以って、大学院での専門教育と並行して明階課程を履修する課程で、國學院・皇學館の両大学院に設置されています。

明階総合課程は、「高等課程などの修了者に継続的な学習機会を提供し、明階授与の道を開き高等教育の完結性を図る」という目的で、平成16年度から皇學館大学に開設された新しい課程で、来年度からは國學院大學にも開設されます。当初は國學院・皇學館とも平成16年度に同時に開設される予定だったのですが、その時点では國學院ではまだ新学部の発足から4年が経っていなかったため(従来の文学部神道学科が発展的解消し、新たに神道文化学部が発足しました)、新しい学部の第一期卒業生を出してから開設することになり、初年度の開設は見送られたのです。

明階総合課程は、明階検定合格後2年以内の者、もしくは専攻科Ⅰ類、専修課程を卒業した者、あるいは高等課程(つまり國學院・皇學館の両大学の学部)に在学している学生(4年生)が履修要件を満たし、修業年限は「6ヶ月以上」です。学部生が大学在学中にこの課程を履修した場合は、実質的に大学卒業時に明階が授与されることになります。

この項で述べた各課程の入学資格は、両大学の高等課程が高校卒業以上、京都國學院の専修課程が短大卒業以上(もしくはそれと同程度)あるいは正階保持者、両大学の専攻科Ⅰ類及びⅡ類が大学卒業者となっています。なお、平成15年度の「明階」取得者のうち、83.8%は神職養成機関、11.5%は神職経歴、4.4%は試験検定、0.3%は戦前切替により階位を取得しています。

正階について

神職養成機関の普通課程において2年間の全課程(Ⅱ類)を修了するか、もしくは、国大や皇大において開講される正階取得のための階位検定講習会を受講し、その後所定期間神社で実習を行えば、「正階」が授与されます。

神職養成機関の普通課程とは、具体的には、京都國學院の普通課程、志波彦神社塩竈神社神職養成所の普通課程、出羽三山神社神職養成所の普通課程、神宮研修所の普通課程、熱田神宮学院の普通課程、大社國學館の普通課程、國學院大学の別科神道専修の各課程をいいます(全7校)。ちなみに、私は京都國學院の普通課程を卒業して階位を取得しました。今回貼付の写真が、私が授与された「正階」の階位証(ただしこの写真では一部の文字を削除しています)です。

神職養成機関の普通課程は、Ⅰ類・Ⅱ類ともに高等学校卒業以上(かそれと同程度)の者、もしくは大社國學館にのみ開設されている予科の修了者が入学可能です。

権正階について

神職養成機関の普通課程(前項の7校)において1年間(Ⅰ類)学ぶか、もしくは通信教育課程である大阪國學院権正階課程(2年間)を修了するか、あるいは、各神社庁・国大・皇大において開講される権正階取得のための階位検定講習会を受講し、その後所定期間神社で実習を行えば、「権正階」が授与されます。

平成15年度の「権正階」取得者のうち、65.6%は講習会、24.5%は通信教育(大阪國學院)、5.2%は神職経歴、3.1%は神職養成機関(大阪國學院以外)、1.1%は試験検定、0.5%がその他により階位を取得しています。

●直階について

神社庁・国大・皇大において開かれる直階取得のための講習会を受講するか、もしくは大社國學館予科(1年間)あるいは通信教育課程である大阪國學院の直階課程(1年間)を修了すれば、「直階」が授与されます。

平成15年度の「直階」取得者のうち、90.7%は講習会、残り9.3%は通信教育(大阪國學院)により階位を取得しています。平成15年度は養成機関(大社國學館予科)で直階を取得した人はいませんでした。ちなみに、養成機関のなかでは唯一、大社國學館予科のみ、最終学歴が中学校卒業でも入学可能です。

ということは、最終学歴が中学卒業の者であっても、まず養成機関の予科大社國學館にのみ設置)で1年間学び、次に養成機関の普通課程(7校に設置)で2年間学び(卒業時に正階授与)、その次に養成機関の専修課程(京都國學院にのみ設置)で学び(卒業時に明階検定合格)、その後2年間神社で実習を積めば、トータルで7年間という長い月日がかかるものの、「明階」の取得は可能な訳です(ただし専修課程を卒業後、国大もしくは皇大の明階総合課程を履修し、明階総合課程を最短の6ヶ月で修了すれば、「明階」の授与はさらに1年半早まります)。専修課程は平成15年度に発足したばかりなので、実際にこういう過程を経て「明階」を取得したという実例はまだありませんが、少なくとも制度上は、このような過程を経れば中学卒業者でも「無試験検定」での「明階」の取得は可能です。

■講習会で階位を取得する方法

前項では、主に神職養成機関に入学して階位を取得する方法について記しましたが、養成機関に入学する方法以外にも、講習会で階位を取得するという方法があります。後継神職の不足を補うために各神社庁や国大・皇大の両大学において、短期集約的教育を以って、正階検定講習会、権正階検定講習会、直階検定講習会の各講習会が実施されているのです。神職子弟の多くは神職養成機関に入学して階位を取得していることと思いますが、実際には講習会で階位を取得する人も多いので、この項では講習会についても簡単に触れておきます。

階位の講習会を受講する場合は、自分が受講しようとする階位よりすぐ下の階位を持っていなければ、その講習会は受講できません。ですから、階位を持っていない者や、あるいは「直階」しか持っていない者が、いきなり「正階」の講習会を受けることはできません。「正階」の講習会を受講するには、既に「権正階」の階位を取得していることが条件となるのです。

また、数年前までは、講習受講後に奉職する神社が決まっていない場合でも講習会は受講できたのですが、現在は、予め奉職神社が決まっていなければ講習会の受講は認められません。それに加え、講習を申し込む際には推薦者(神社庁長や支部長など)からの推薦状も必要となります。そのため、神社に何の伝手もない人が講習会を受講することは、現実的にはかなり難しいといえます。過去には、敬神崇祖の念もなく、ただ「神職の資格が欲しいから」とか「資格を持っていればバイトできるかも」といった軽い気持ちで受講する者も少なくなかったため、それで段々と講習会の受講条件が厳しくなっていったと聞いています。

なお、講習会の受講には年齢制限があり、国大主催の講習会は65歳以下、皇大主催の講習会は70歳以下の者が受講対象となっています。神社庁主催の場合は各神社庁によって異なるので一概にはいえませんが、例えば京都府神社庁主催の講習会の場合は「75歳未満」となっています。北海道では、受講希望者が少ないため、ここ数年、階位の検定講習会は開講されていません。

■階位の内訳

最新のデータは不明ですが、平成12年末当時のデータによると、神社本庁に所属している神社の神職は全国に21,222人おり(ただし本庁、神社庁、神宮の職員は含めていません)、その21,222人の階位の内訳は、「浄階」が323名(2%)、「明階」が5,548名 (26%)、「正階」が8,344名 (39%)、「権正階」が4,145名 (20%)、「直階」が2,862名 (13%)となっています。

平成16年度中に階位を授与された人の数は1,372名で、その内訳は、「浄階」が35名、「明階」が115名、「正階」が419名、「権正階」が276名、「直階」が527名となっています。なお、この内訳の正階取得者には、明階検定合格者も含まれています。

■備考

神社本庁包括下の神社が本庁から離脱した場合、その神社に所属している神職は、原則として階位が抹消されます(ただし明治神宮の場合は、宮司が本庁に対し暫くの時間を置いて再び本庁に合流することを確約したため、責任役員以外の職員の階位は離脱後も例外的に維持されています)。階位を有することは神職身分を得るための前提条件とされているので、階位が抹消されるということは、同時に神職身分も失うということです。

ただし、離脱前に、本庁の包括下にある別の神社に転任すれば、階位・身分は保持されます。階位の剥奪(抹消手続)は、本庁を離脱したことに対してのペナルティということなのでしょうが、しかし、階位や身分はあくまでも本庁包括下の神社でだけ適用される制度ですから、単立になったり他団体に加盟してしまえば、そもそも階位や身分などは必要のないものといえるでしょう。また、離脱する神社も、階位を失うことは当然承知した上で本庁から離脱するのですから、階位の抹消は、決して厳しい処分とはいえないでしょう。

ちなみに、本庁を離脱した神社が、その後、再び本庁の包括下となった場合(そういうことは滅多にありませんが)、その神社の神職は、階位を申請することで、抹消前の元の階位が復活します。階位の申請という事務手続きは必要になるものの、新たに養成機関で学んだり講習会を受講したり検定試験を受けたりせずとも、階位は授与されることになります。

(田頭)