西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神職の身分

各神職身分に応じた袴

昨日は「階位」についてまとめさせていただきましたが、今日は神職の「身分」についてまとめさせていただきます。

身分については、階位のように神社本庁の庁規には定められてはいませんが、「神職身分に関する規定」により、神職には身分が与えられることになっており、国家が神社を管理していた戦前は、神職は官吏(国家公務員)に準ずる待遇とされていましたが、現在の身分とは、官吏やそれに準ずる立場としての身分ではなく、あくまでも“神職としての身分”です。なお、ときどき神職のことを「神官」という言い方をする人がいますが、歴史的用語として使う場合はともかく、現在の神職は「官」ではありませんから、この言い方は正しくありません。

■身分の概要

神職には、職階(宮司権宮司禰宜権禰宜、出仕など)や階位(浄階明階正階権正階、直階)とは別に、「身分」の制度があります。神職身分は、上から順に、「特級」、「一級」、「二級上」、「二級」、「三級」、「四級」の6等級に分かれており、本人の神職としての経歴、地位、功績、本庁への貢献度等に基いて決定されます(本庁や神社庁主催の各種講習への参加の有無も本人の経歴に含まれます)。

僧侶の場合、僧階に応じて袈裟の色が変わることは一般にもよく知られていますが、神職の場合は、身分に応じて袴(はかま)の色が変わります(袴の色については後述します)。つまり、階位や職階はその神職の外見から判別することはできませんが、身分は、その神職が穿いている袴の色から判別することが可能なのです(ただし、白い袴など規定にない色の袴を穿いている場合は判別できません)。

なお、階位と身分の違いについてですが、「階位」は神職になるための資格で、「階位」を有することが「身分」を授かる前提条件とされます。ですから、ただ階位のみを有しているだけでは「神職」とはいえません。階位を有しているだけの人は、あくまでも神職として任用される資格を有しているに過ぎないのです。階位を有し、かつ神職として神社に奉職し、権禰宜以上の職階を授かって、その人ははじめて「神職」とされるのです。つまり「神職身分とは、階位と、権禰宜以上の職階を有している者に与えられる神職としての地位」といえます。

ですから、一般の参拝者から見れば、神務に携わっている神社の職員はすべて神職(神主)と映るのでしょうが、神社本庁の規定では神職身分を有して初めて「神職」とされるので、階位を持っていても神社に所属していない人や、あるいは神社の職員として神務に直接携わっていても権禰宜より低い職階(宮掌、典仕、出仕など)の職員は、本庁の規定に従えば、厳密には「神職」とはいえません。

ちなみに、身分と階位は一応別個の制度なのですが、「神職身分に関する規定」によれば、「一級」以上は原則として「浄階」、「二級上」及び「二級」は「正階」以上を有する者でなければその地位に任命または選考されないとされています。

■各身分の該当者

【特級】統理。伊勢の神宮で大宮司の職にある者。表彰規定第二条第二号の表彰を受けた者。

【一級】伊勢の神宮少宮司の職にある者。表彰規定第二条第一号の表彰を受けた者。浄階を有する者で身分選考委員会の選考を経た者。

【二級上】伊勢の神宮禰宜の職にある者、別表神社宮司または権宮司の職にある者、二級神職の者のなかから身分選考委員会の選考を経た者。

【二級】伊勢の神宮禰宜の職にある者、別表神社宮司または権宮司の職にある者、三級神職で身分選考委員会の選考を経た者。

【三級】伊勢の神宮権禰宜または宮掌の職にある者。権正階以上の階位を有する者。

【四級】その他の神職(具体的には直階の権禰宜のことです)。

■身分の内訳

平成16年度末当時のデータでは、神社本庁に所属する神社の神職数は21,590名(うち男性18,912名、女性2,678名)で、この21,542名の身分の内訳は、「特級」が89名(全員男性)、「一級」が239名(全員が男性)、「二級上」が2,076名(男性 2,053名、女性23名)、「二級」が4,641名(男性 4,444名、女性197名)、「三級」と「四級」の合計が14,545名(男性12,087名、女性2,458名)となっています。

■身分による祭祀の服装

神職が穿く袴(はかま)や、大祭時に着装する正装の袍(ほう)や冠(かんむり)は、身分に応じて色や紋が異なります。具体的には以下の通りです。

【特級】袍は黒色、袴は白固織有紋、冠は繁文

【一級】袍は黒色、袴は紫固織有紋、冠は繁文

【二級上】袍は赤色、袴は紫固織文藤の丸共緯、冠は繁文

【二級】袍は赤色、袴は紫平絹無紋、冠は繁文

【三・四級】袍は緑色、袴は浅黄色(浅黄平絹無紋)、冠は遠文

ということですが、文章だけ読んでもよくわかりませんね。白固織有紋とか紫固織文藤の丸共緯など、一体どんな色や模様を指すのか、字面だけでは私もよくわかりません。そこで今回は、各身分に応じた袴を実際に穿いた状態の写真を、記事の冒頭に貼付してみました。袴は左側から高位な順に並んでいますが、「特級」の袴だけは、この写真には写っていません。「特級」の袴は、一言で簡単にいうと、白地に白紋付の袴です。白い袴に白い紋が入っているわけですから、近くで見ると確かに紋様が浮かび上がって見えるものの、遠くから見ると、単に白単色の袴にしか見えないことが多いです。

写真の一番左側の袴が「一級」の袴で、紫地に濃い白紋付の袴です。その右隣の袴が「二級上」の袴で、紫地に薄い白紋付の袴です。「一級」と「二級上」の袴は、このように並べて見るとその違いは一目瞭然(白い紋の濃さが違う)なのですが、どちらかの一方のみを見た場合、見慣れていない人であればどちらの級の袴なのか、判別に迷うこともあります。なお、「二級上」の右隣の、紋なしの紫単色の袴が「二級」の袴です。

その隣、一番右側の水色の袴が、「三級」及び「四級」の神職が穿く袴です。この水色は、厳密には浅葱色(あさぎいろ)という色で、水色とは微妙に異なる色らしいのですが、実際には水色にしか見えません。「三級」と「四級」の神職合計数は、全神職数の7割弱を占めるので、神職の大半はこの浅葱色の袴を穿いていることになります(私も穿いています)。なお、三級・四級の神職が大祭時に着装する袍は、上記の文中では「緑色」となっていますが、この緑色の袍は、実際には極めて青色に近い色です。

上記(規定されている色)以外の色で、神社の職員が穿く袴には、白色、緑色、紺色、灰色、赤色等があります。実は結構いろいろな色の袴があるのです。このうち白色や緑色(松葉色)の袴は、主に神職見習い(まだ神職身分を有していない出仕や実習生等)が穿きますが、白色の袴は、身分を有している神職でも、他所の神社に助勤に行く場合や、神社庁や他所の神社に研修を受けに行く場合、あるいは葬祭、霊祭、清祓等に奉仕する際にも穿くことがあります。ちなみに、私が神職養成機関に在学していたときに実習していた京都府内の神社では、職員は祭典時と御祈祷時のみ身分に応じた色付きの袴を穿き、平常は、皆(宮司禰宜権禰宜も典仕も)白色の袴を穿いていました。札幌近郊にはこういった神社はないようですが、道外では、職員全員が身分に関係なく白色の袴を穿いている、という神社も少なくはないようです。

灰色の袴の色は、正確には鈍色(にびいろ)といい、この鈍色の袴は身分に応じた袴ではなく用途に応じた袴で、具体的には葬祭時に穿く袴です。普通、葬祭では、身分に関係なく鈍色か白色の袴を穿きます。なお、鈍色の袴を穿いた場合は、その上に着装する狩衣もしくは袍なども、鈍色のものとなり、祝詞後取が持つ祝詞袋も鈍色のものとなります。

赤色の袴は、正確には緋袴(ひばかま)といい、これは神職の穿く袴ではなく、巫女の穿く袴です。あくまでも巫女の穿く袴なので、女子神職が緋袴を穿くことはありません。女性神職は、男性神職同様、各身分に応じた色の袴を穿きます。ただし、女子神職として神社に採用されていてもまだ神職身分を有していない女性職員は、緋袴を穿くこともあります(つまり権禰宜を拝命して正式な神職となるまでは巫女という扱いです)。

袴の色は原則として身分に応じてはいますが、前述のように身分を有していても白色の袴を穿く場合や、あるいはまだ身分を有していない職員(出仕等)であっても御祈祷時や外祭時のみは浅葱色の袴を穿く場合もあるので、穿いている袴の色だけでその人の身分を断定することは必ずしもできません。

なお、本庁及び神社庁の役職員のうち神職ではない者が、本庁及び神社庁の役職員の資格を以って祭典奉仕する場合、本庁の理事、監事と、神社庁の庁長は「一級」、神社庁の副庁長は「二級上」、本庁の参事、主事と、神社庁の理事、監事、支部長、参事、主事は「二級」、本庁及び神社庁の録事は「三級」の神職の服装で奉仕することになっています。

ただし、この項で詳しく述べた身分に応じた袴や装束の制度は、あくまでも神社本庁の制度です。ですから、本庁包括外の神社の神職にあっては、何色の袴を穿こうと何色の装束を着装しようと、本庁の関知するところではありません。とはいっても、だいたいの単立神社は、本庁の服制が準用されているようですが。ただし、教派神道は独自の服制を用いているところが多く、例えば出雲大社教では、本庁では正式に用いていない小直衣を正式な装束として用いていますし、天理教金光教では、本庁が採用している平安時代の垂纓冠ではなく、奈良時代の冠を用いています。

■神職養成機関を卒業した場合の身分

大学に開設されている高等課程(4年間)や専攻科Ⅰ類(1年間)、もしくは養成所に開設されている専修課程(2年間)を卒業すれば、卒業時に「明階検定合格、正階授与」とされ、また、大学や養成所に開設されている普通課程Ⅱ類(2年間)を卒業すれば、卒業時に「正階検定合格、正階授与」とされ、いずれの場合でも「正階」が授与されます。普通課程のⅠ類(1年間)を修了した者や、普通課程Ⅱ類を1年間で辞めた者には(申請すれば)、「権正階」が授与されます。このへんの事情については、昨日詳しく述べさせていただきました。

しかし、大学や養成所の卒業時に階位を授与されても、神社に奉職しなければ、神職の身分は授与されません。しかも、神社に神職として採用されたとしても、普通、最初は「出仕」等の見習いから始まるので、やはり身分は授かりません。身分が授からないということは、身分のなかでは最も下位の「四級」ですらなく、そういう言葉はないですが、あえていえば「無級」ということです。前述のように、本庁の規定では権禰宜よりも下の職階は「神職」とは見なされないからです。しかし、権禰宜を拝命すれば、拝命と同時に本庁より「三級」の神職身分が授与されます。

つまり、権正階以上の階位を持っている場合(養成機関のうち予科以外の課程を修了した者全員が該当)、身分は「三級」から始まるのです。「四級」は直階の権禰宜のみなので、すでに正階もしくは権正階を取得している高等課程・専攻課程・専修課程・普通課程の卒業生の場合、「四級」を授かることはないのです。「三級」よりも「四級」の神職数が少ないのは、こういった事情にもよります。

なお、「神職身分〜級とする」と記された「身分の証」(証書)が授与されるのは「二級」以上で、「三級」、「四級」の場合は身分の証は特に授与されません。ただし北海道神社庁の場合は、神職身分を初めて授かった者には、神社庁にて神職徽章を授与しています。私も頂きました。

■長老について

「長老」という地位は、神職身分の規定の枠内にあるものではありませんが、実質的に「特級」より上位の身分として扱われているため、最後にこの「長老」という地位についても簡単に触れておきます。「長老」とは、「特級」の身分を有している神職のなかで最高の功績状を授与された者に対して贈られる敬称で、長老になると、長老名簿に登録され、鳩杖が贈られます。

更に、本庁は長老に対しては様々な特別厚遇をすることになっており、例えば、古稀喜寿、米寿に相当する歳においては敬祝の意を表する、本庁の祝典に際しては招待する、本庁の刊行物を贈呈する、神職を退いた場合にはその在世期間中は年金を贈与する、死亡した場合はその旨を公示し、弔辞を呈し、玉串料を贈る、などの事項が「長老に関する規定」の第二条に定められています。

ただし、前述のように「長老」は正確には「神職身分」とは異なるものなので、「長老」に対応した祭祀服装の規定等はありません。「長老」は「特級」の身分を持っている者の中から選ばれるので、「長老」の神職は、祭典においては「特級」に対応した服装で参列することになります。

(田頭)