西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神饌(しんせん)

西野神社本殿

神饌」とは、神社や神棚にお供えする飲食物(供物)の事で、古くは「ミケ」といいました(現在でも祝詞の中では「御食」と書いて「ミケ」と読みます)。

家庭の神棚においては、米、塩、水の3種、もしくはそれに酒を加えた4種を神饌としてお供えするのが一般的ですが、神社においては、祭典の種類や規模によってその内容は大きく異なるものの、大抵の祭典では米、酒、餅、魚、乾物、野菜、果物、塩、水などを神饌としてお供えします。神饌をお供えするのは“神をもてなす”という趣旨からです。

神饌は、元々は古代人の食生活を反映したものが多かったのですが、長い歳月の流れでその調整・調理や盛り付け・飾り付けなどが形式化していき、また、日本人の食生活が変化していった事もあり、時代の経過と共に神饌の内容は大きく変化していきました。特に、明治8年に「官国幣社以下神社祭式」が定められて以降は、神饌は全国的に画一化されたものになりました。

「官国幣社以下神社祭式」によると、官国幣社社格を持つ神社の大祭では、大社の場合は11台以上、中社の場合は10台以上、小社及び別格官幣社の場合は9台以上、中祭では大・中・小社共に7台以上、小祭では大・中・小社共に5台以上と、神饌の台数(神饌を載せる三方もしくは高杯の数)が定められ、その品目も具体的に定められました。

現在、神社本庁の「神社祭式」においては、神饌の具体的な内容については「神饌の品目 概ね左の如し」として「和稲、荒稲、酒、餅、海魚、川魚、野鳥、水鳥、海菜、野菜、菓、塩、水等」「神饌の他、其の他の産物等を副へて奉ることを得」とだけ記されており、大・中・小社の別や、大・中・小祭式の別につては挙げられておらず、また、台数についての規程もありません。これは、戦後になって社格そのものが廃止された事と、祭祀を画一化しないで一社の実情に任せて誠心誠意奉仕せしめるという趣旨からです。

なお、調理して供える神饌を「熟饌」(じゅくせん)、生のままお供えする神饌を「生饌」(せいせん)といい、熟饌の調理には火打ち石などで起こした神聖な炎(忌火)を使いますが、現在、神社でお供えされる神饌のほとんどは生饌です。


◆西野神社の神饌

当社の場合は、小祭や中祭では8台、大祭では10台、大祭の中でも特に新穀勤労感謝祭新嘗祭)の時は11台の三方を用いています。以下に、当社の祭典でお供えする神饌の具体例を表形式にしてまとめてみます。表中の1台目、2台目、というのは神饌を載せる三方の台数の事です。



1台目2台目3台目
4台目5台目6台目7台目8台目
9台目10台目11台目
小祭、
中祭
乾物野菜果物塩、水


大祭乾物野菜果物菓子塩、水
新嘗祭荒稲和稲清酒、濁酒乾物野菜果物菓子塩、水
地鎮祭、上棟祭米、酒乾物野菜果物塩、水



表中の「魚」とは、具体的には鯛(たい)の事です。鯛は祝い事の魚であるため、葬祭などで御霊前に「魚」をお供えする場合には使いませんが、神社で行われる祭典では、当社の場合は常に鯛をお供えしています。

表中の「鳥」とは、鳥そのものをお供えする事を意味している訳ではなく、鳥の「卵」を以ってその代用としています。卵は何個も積み重ねて載せますが、ただ積み重ねるだけでは滑べり落ちてしまうので、卵と卵の隙間には米もしくは塩などを詰めて、卵が滑らないように固定します。実際に本物の鳥を神饌としてお供えしている神社もなくはないですが、現実的な問題から、ほとんどの神社では卵で代用しています。ちなみに、私が神職養成機関在学中に助勤に行った神社の中では、春日大社奈良県奈良市)と橿原神宮奈良県橿原市)の2社では、本物の鳥を神饌として使っていました。しかし、神饌としてお供えされる鳥は、スーパーなどで売られている様な肉だけの状態になっている訳ではないので、本物の鳥を神饌としてお供えしている神社では、神社の職員に鳥を捌く事の出来る技能が求められそうです。

表中の「乾物」とは、「干物」とも表記し、当社の場合はスルメと昆布を麻紐で縛って「乾物」としてお供えしております。

「荒稲」(あらしね)とは、鎌で刈り取って束ねた稲穂の事で、和稲(にごしね)とは、精米(白米)の事です。単に「米」とだけ表記されている場合は和稲を指します。「菓子」は、当社の場合は紅白饅頭などをお供えする事が多いです。

以下の写真は、当社での大祭の時の神饌です。神饌の台数は一見12台に見えるかもしれませんが、手前側の列の中央の2台は神饌が載った三方ではなく、神社本庁幣帛と総代幣帛が載せられた大角なので、神饌の台数としては、表中で記させて頂いた通りの10台です。

西野神社 大祭神饌

なお、今日の記事の一番上に貼付した写真は、某団体の盛業繁栄の御祈祷時に当社本殿の大前にお供えされた神饌で、この写真では三方の台数は5台となっているため、この例は、表中には記されておりません。

また、外祭の神饌については昨年1月22日付の記事「外祭の神饌」で詳しく記させて頂きましたので、そちらも併せて御参照下さい。


◆他社の神饌の例

私がかつて実習していた、京都府内に鎮座する某八幡宮(旧官幣大社)の祭典でお供えされる神饌の実例と、その当時私が在学していた某神職養成機関の祭典でお供えされる神饌の実例を、以下に表形式でまとめさせて頂きました。

なお、以下の表は、お使いのブラウザのウィンドウの大きさに合わせて縦横の比率が自動的に変化するため、もし、表全体が縦に細長く表示されて見辛くなっている場合は、ウィンドウを画面一杯に最大表示させるか、あるいは、ブラウザの左側に「お気に入り」や「履歴」の枠が表示されているのであればそれを閉じるなどして下さい。



1台目2台目3台目
4台目5台目6台目7台目8台目
9台目10台目11台目



小祭米、酒、餅海魚乾物野菜果物、塩、水





中祭荒稲、和稲、黒酒、白酒海魚、川魚海菜野菜果物、塩、水



大祭荒稲、和稲黒酒、白酒海魚川魚野鳥水鳥海菜野菜果物塩、水
厄除交通安全祈願祭米、酒、乾物特別祈祷神饌特別祈祷神饌特別祈祷神饌果物、塩、水





献酒祭神矢米、酒海菜野菜果物、塩、水



献茶祭、崇敬者大祭米、酒乾物野菜果物菓子、塩、水



結婚式祈祷撤下神饌御守、御札菓子、塩、水





地鎮祭米、酒乾物野菜(7種)果物、塩、水









月始祭、
月次祭
果物塩、水幣帛





学期終了奉告祭米、酒乾物野菜果物菓子、塩、水




学神祭米、酒乾物野菜果物菓子、塩、水



創立記念大祭荒稲、和稲海魚川魚乾物野菜果物菓子、塩、水幣帛


寮祭米、酒乾物野菜果物、塩、水




上記表中で紹介させて戴いた某八幡宮では、小祭や外祭では白木の三方を、中祭や大祭では黒塗りの高杯(たかつき)を、結婚式では黒塗り(一部朱塗り)の三方を使っていました。小祭では1座につき5台、本殿は3座あるので計15台の三方を使い、中祭では1座につき7台、計21台の高杯を使い、大祭では1座につき11台、計33台の高杯を使っていました(但し小・中・大祭ともに、実際にはこの台数以外にも崇敬会用や摂・末社用の神饌を載せる三方も用意します)。

表中の「魚」や「海魚」は鯛(たい)もしくは鮭(しゃけ)で、「川魚」は鯉(こい)を使っていました。「海菜」はワカメ、昆布等で、「乾物」の場合はそれらに加えスルメ等も含めていました。

「鳥」・「水鳥」は卵で、「野鳥」はささみで代用していました。今は代用品を使っていますが、昔は、「水鳥」には鴨を、「野鳥」には鶏を使っていたそうです。

「黒酒」(くろき)は清酒、「白酒」(しろき)は濁酒を使い、黒酒、白酒はそれぞれ甕(みか)に入れ、陪膳が大前で甕から盃に移していました。なお、本来は、白酒とは神田から収穫した米で醸造した白色の原酒の事で、黒酒とは、その白色の原酒に薬灰を加えて灰色に着色した酒の事で、白酒・黒酒ともに濁酒なのですが、某八幡宮では、濁酒と清酒を組にして白酒と黒酒の代用としていました。

ちなみに、伊勢の神宮では、三節祭(6月と12月の月次祭、10月の神嘗祭)では白酒、黒酒、醴酒(れいしゅ)、清酒(せいしゅ)の4種のお酒がお供えされます。

某八幡宮小祭
八幡宮での小祭の神饌です。

三方は1座につき5台で、本殿は3座あるので計15台用います。

この写真とすぐ下の写真の2枚は、祭儀課の職員の許可を得て神饌所にて撮影させて頂いた写真で、これらの神饌は、祭典が始まるとここから本殿の大前に伝供されていきます。

某八幡宮大祭
八幡宮での大祭の神饌です。

高杯は1座につき11台で、本殿は3座あるので計33台用います。

高杯はその構造上、三方よりも持ち辛いので、重い神饌(主に野菜や果物)が載せられている高杯の場合、いつも以上に、特に落とさないように気を遣いながら伝供します。


◆珍しい神饌

護國神社合祀祭
これ(左)は、一昨年、某護國神社で執り行われた合祀祭で助勤させて頂いた時、祭典の始まる直前に神饌所にて撮影させて頂いた写真です。

靖國神社護國神社の祭典では、お祀りされている御祭神が記紀(神話)に登場する神様ではなく実在した人間(戦没者)であるため、缶ビールや煙草などが御祭神の好物として神饌に含まれています(手前の列、左から2台目の三方)。

普通、神饌にビールや煙草等の酒肴品が含まれる事はないので、こういったものが神饌に含まれるのは靖國神社護國神社の神饌における際立った特色といえます。

特殊神饌
これ(左)は、奈良県奈良市に鎮座する、世界遺産にも登録されている某大社の例祭(勅祭)で助勤させて頂いた時に撮影させて頂いた写真です。

「特殊神饌」と称される、極めて珍しい形式の神饌なのですが、お供えされている神饌の具体的な内容は、…特殊すぎてもはや何だかよくわかりません(笑)。

特殊神饌
これ(左)も、上と同じく奈良の某大社の特殊神饌の写真です。

これ以外にも、伊勢の神宮賀茂御祖神社賀茂別雷神社日吉大社談山神社諏訪大社などの特殊神饌も有名です。特殊神饌は、大抵熟饌が中心となっています。


(田頭)