西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

宮司になるにはどうすればいいのか?という質問の回答を検証

先程、階位神職の資格)についてネットで検索をしていたら、「YAHOO!知恵袋」の『神社で宮司さんになるにはどうすればなれるのでしょうか?』という質問のページ(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q138490448)がヒットしました。この質問に対してはいくつかの回答が寄せられていたのですが、そのうちベストアンサーに選ばれていたのは以下の回答でした。

國學院大學あるいは皇學館大學にて神職養成課程を修了し、正階以上の階位を取得することが基本です。大きな神社でも神職養成機関があります。 しかし、正階以上の階位を取得しても、いきなり宮司にはなれません。大きな神社であれば、出仕といった神主見習いを経験し、権禰宜、禰宜、権宮司を経て宮司となります。 しかし、宮司は、宗教法人としての神社の代表役員ですから、責任役員たる氏子総代の協議によって認められ、さらに神社本庁に具申し任命されます。宗教法人たる各神社には夫々、規則があり、宮司には任期があります。任期満了毎に、責任役員の協議によって再任されることになります。なお、大きな神社の禰宜を経験し、他の中規模の神社の宮司に転任する場合もあります。

誰もが閲覧可能なネット上で間違った情報が発信されているのは看過できないので(笑)、僭越ながら、ベストアンサーとされたこの回答に対して突っ込みを入れさせて頂きます。

神社本庁包括下の神社は、事務的な諸手続きや待遇などの面における扱い上、「別表神社」(正式な名称は「別表に掲げる神社」)と「諸社」(別表神社以外の神社の事で全国の神社の大半は諸社です)の二種に区分されており、宮司として任用されるには、別表神社であれば明階、諸社の場合は権正階以上の階位を取得していなければまりません。但し、諸社の場合、神社庁長が特別な事情があると認めた場合は、条件を附した上で直階の神職でも宮司代務者になる事ができます。この場合の条件とは、なるべく早く権正階を取得する事を約束する事などです。

つまり、別表神社宮司になるには明階が必要ですが、それ以外の神社であれば権正階を取得していれば宮司になる事ができ、また、宮司になる事はできないものの宮司代務者であれば直階の神職でも条件付きながらなる事ができるという事です。ですから、この回答にある「正階以上の階位を取得することが基本です」というのは誤りです。実際、全国には権正階宮司さんが沢山活躍されており(勿論札幌支部管内にもおられます)、この回答はそういった宮司さん達を無視したものであり、正確さを欠いています。

正階以上の階位を取得しても、いきなり宮司にはなれません」とありますが、これも正確な言い方ではありません。一般論としては「まぁ、確かにそうかもしれない」と概ね同意はできますが、出仕・権禰宜禰宜などの職階を経ないでいきなり宮司になるという例外も現実にはあるからです。特に、現在の宮司の後継者を早急に求めている小規模な神社の場合などでは、そういった事例が起こる事もあります。

この回答の後半部には、「責任役員たる氏子総代の協議によって認められ」とありますが、平成18年4月7日付の記事で詳しく解説させて頂いたように、責任役員と氏子総代は本来は全く異なる役割を与えられており(現実には同一人物がその両方の地位を兼ねているという事例は確かに多いのですが)、責任役員と氏子総代は必ずしも“イコール”の関係ではないため、この言い方も、少し正確さが欠けていると思います。かなり細かい指摘かもしれませんが…。

また、この質問に対しては、別の回答者から次のような回答もされていました。

皇學館大学か國學院大学で神官の勉強して、神社に就職してください。大手神社だと、そこの宮司は無理でも傘下の神社の神主宮司になれることもあります。祢宜ぐらいには、がんばれば確実になれます

「神官っていつの時代の話ですか?」「神社の場合は“就職”ではなく“奉職”ですよ」「神主宮司って何ですか?その言い方だと、逆に神主ではない宮司もあり得るのですか?」「禰宜の字くらい正確に書いたほうは良いのでは?」といろいろ突っ込みを入れたくなります(笑)。

「大手神社の傘下の神社の宮司にはなれる」というような意味の文章がありますが、これも意味不明ですね。神社本庁包括下の神社は、法的な位置付けとしてはあくまもで神社本庁のみの傘下にあり(法的に包括されているという意味)、各神社は、神社本庁以外の団体(神社庁、神社など)とは何らの包括・被包括の関係は無いからです。例えば、大分県宇佐市に鎮座する宇佐神宮は、全国各地に鎮座する八幡宮八幡神社総本宮とされていますが、それは、全国の八幡宮八幡神社の歴史や名誉を象徴するという意味であって、組織として全国の八幡宮八幡神社を傘下に収めているという訳ではありません。会社でいう、本社と支社のような関係では無いのです。各神社は独立した宗教法人であり、総本宮といえども、各神社の財政や人事などに口を挟む権限は無く、従って「大手神社の傘下の神社」という概念は、法的には存在しません。

ちなみに、神官という呼称がなぜ適切ではないのか、という事については、平成18年6月25日付の記事の「庁と官」の項で解説させて頂きましたので、気になる方はそちらの記事を御参照下さい。

また、この質問には以下のような回答もありました。

神社庁に入るのが手っ取り早いんかな?出仕から出世して権禰宜、禰宜、権宮司、宮司と上がっていくのは至難の技でしょう。

この回答者は、神社庁と神社の区別がついていないようです。神社庁の職員が自社(自分の実家が奉仕している神社)の神職を兼任する事はよくありますが、神社庁と神社は全く別の法人なので(但し神社庁によっては法人格を取得していない所も一部にあります)、神社庁の職員として任用される事と、神職として神社に任用される事は、基本的には全く別の話です。そもそも質問は「宮司さんになるにはどうすればなれるのでしょうか」なのですから、宮司を目指すのであれば最初から神社への奉職を勧めるべきであり、特別な理由がない限り、この回答者が言う“神社庁に入る”事を勧めるのは方向性が違います。


ところで、この質問とほぼ同じ内容で、『宮司になるには?実家には神社があるのですが、神主がいないままになって久しいので、もし成れるのなら、神主にでもなろうかと思っています。神職階位を取得しなければ神主や宮司には成れないと聞いたのですが、どうすれば取得できるのでしょうか? 』という質問が掲載されている「msn質問箱」のページ(http://questionbox.jp.msn.com/qa33604.html)も見つけました。

この質問に対しては、まず以下の回答が掲載されていました。

神社本庁所属の神社でなければ、神職階位なんて必要ありません。あくまでも、神職階位は神社本庁が制定しているものですから・・・。ただ、現在神主がいないような神社は、宮司になったところで生計を成り立たせることは無理ですよ。(それゆえに神主がいないのですから・・・。) それでも、階位取得を考えているのであれば、各都道府県ごとの神社の統括団体である神社庁というところで、講習会を行なっていますので一度問い合わせてみてください。ちなみに、権正階(ごんせいかい)という階位は、講習だけで取れますので、神社本庁所属の神社でなくても、せめて基礎知識だけでも学んでおいた方が良いのではないでしょうか。

神社本庁所属の神社でなければ、神職階位なんて必要ありません」というのは、確かに間違いではありません。実際、教派神道系の団体に奉職するのであれば、階位は別に必要無いと思います。しかし神社神道系であれば、単立の神社の場合も、神社本庁以外の団体の包括下にある神社の場合も、現実には多くの神職が本庁の階位を修得しています。建前としては階位は不要でも、実際問題として、本庁が制定している階位に代わる、もしくはそれに匹敵するような、全国的に通用する神職の資格や制度が他に存在しない以上、現行の階位は、“神職としての知識や実技を修得している事を対外的に証明できるほぼ唯一の手段”として機能しているのです。

あと、この回答には「権正階という階位は、講習だけで取れます」と書かれていますが、階位検定講習の受講を完了するだけで授与される階位は直階のみです。権正階正階の場合は、講習を受講した後、所定の神社で所定の期間、神務実習をしなければ階位は授与されません。また、この回答者は、基礎知識を学ぶために権正階の講習を受ける事を質問者に勧めておりますが、一昔前は兎も角現在は、まず直階を取得しなければ、いきなり権正階の講習を受講する事はできません。

そして、この質問に対しては、以下のような回答もありました。

まず最初に言わせて頂きますけど、「神主にでもなろうか」というのは軽い気持ちなんでしょうか?そりゃあ、就職活動しなくていいかもとか思うかもしれませんけど、かなり大変みたいですよ。私が説教することじゃないですが・・・。 回答です。神職階位を取るにはいくつか方法があります。前の方の回答にもあるように、大学がありますがそこで、大概は夏とかに講習会みたいなのがあります。見てる限りではかなり大変そうでしたけど。皇學館大学のURLをつけておきましたが国学院大学でもやってるそうです。 あと大学を卒業してからでもいいなら、養成所というところもあります。熱田神宮(愛知)や、出羽三山(山形)など。こちらは短期ではなく何年か通うんだったと思います。皇學館大学には専攻科という課程で1年で明階が取得できます。(4大卒業者対象だったと思う) ちなみに明階(めいかい)とは神職階位の名称です。下から直階、正階、明階で、宮司になるには正階以上ないといけないんじゃないでしょうか?(自信なし)

「大学を卒業してからでもいいなら、養成所というところもあります」とありますが、神職養成所(出羽三山神社神職養成所、志波彦神社・塩竈神社神職養成所熱田神宮学院京都國學院神宮研修所大社國學館の6校)の場合、特に普通課程では、大学を卒業してから入学する人よりも、最終学歴が高校卒業という人のほうが圧倒的に多いです(但し専修課程の場合は短大卒以上の学生のほうが多いです)。然るにこの書き方では、質問者に対して、大学を卒業してからでないと養成所には入学できないんだ、という誤解を与えてしまいます。

「こちらは短期ではなく何年か通うんだったと思います」とありますが、これは各課程によって異なり、具体的に言うと、予科大社國學館のみに開設されている課程)と普通課程I類の場合は1年、普通課程II類(全ての養成所に開設されている課程)と専修課程(京都國學院のみに開設されている課程)の場合は2年、普通課程II類を修了してから専修課程に進学する場合は大学同様4年です。元から専修課程への入学資格がある学生の場合、普通課程に1年間在籍してから専修課程に進学するという事例もあり、その場合は3年となります。但し、養成所に在籍する学生のほとんどは普通課程II類の学生で、そのうち専修課程に進学する学生はごく一部なので、大半の学生の在籍期間は2年です。

皇學館大学には専攻科という課程で1年で明階が取得できます」とありますが、専攻科は皇學館大学だけではなく國學院大學にもあります。また、「1年で明階が取得できます」というのも間違いです。専攻科には、修業年限が1年の専攻課程I類と修業年限が2年の専攻課程II類という2つの課程があるのですが、I類の場合、卒業時は「明階検定合格・正階授与」となるので、実際に明階が取得できるのは、早くても卒業の2年後になります。

「下から直階、正階明階」とありますが、権正階が抜けています。「宮司になるには正階以上ないといけないんじゃないでしょうか」とありますが、これは先程も書かせて頂いたように、諸社であれば正階を修得していなくても、権正階でも宮司になる事ができます。


皆さんも、ネット上にアップされているQ&Aの類の情報はあまり鵜呑みにしないほうがいいです。正確な知識を持った方が回答されているのであれば何の問題も無いのですが、明らかに、その方面には詳しくない人が回答をしている場合が結構見受けられます。


(田頭)

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