西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

鎮魂(ちんこん)

鎮魂

今週の日曜日、午前7時から約1時間、北海道神宮の直心亭で、さざれ石会(北海道神宮の崇敬会の一つ)の会員の皆さん方と一緒に“鎮魂”を行ってきました。鎮魂については、昨年5月5日付の記事でも記させて頂きましたが、今日は改めて鎮魂について述べさせて頂きます。

鎮魂とは、一言で簡単にいうと、自らの霊魂を振い起こし、神の「気」を招き鎮めることで、自らの霊魂を安定・充実させ、その霊性や霊能を十分に発揮させる神道独自の行法のことで、全身に冷水を浴びる禊(ミソギ)とともに神社神道では代表的な行法の一つに位置付けられています。

禊が「動」であるとすると、鎮魂は「静」というべきもので、静かなイメージが伴う鎮魂よりも荒々しさが感じられる禊のほうが好き、という人も多いのですが(私も当初はそうでした)、より宗教的・神秘的なのは、禊よりも鎮魂の方だといわれています。特に古神道においては、鎮魂は今でも最も重視されている行法です。ちなみに、私は初めて鎮魂という言葉を聞いたとき、その字面から、「鎮魂」とは亡くなった人の魂を鎮める供養の作法かと勝手に勘違いしていました。

鎮魂にもいくつかの流派があるのですが、神社本庁が公式に採用している鎮魂法は、饒速日命(にぎはやひのみこと)によって伝えられたとされる、石上神宮奈良県天理市)で実践されている「石上鎮魂法」です。この鎮魂法の所作(行事作法)についての詳細はここでは省略しますが、鎮魂行法の中心となる布瑠部神業(ふるべのかむわざ)という儀についてのみ簡単に述べますと、まず鎮魂のための姿勢である安座(上体を真っ直ぐにして両足の裏を合わせ、両膝頭は床より約15度浮かす)という座り方をして、目は半眼にして約3メートル先を見つめ、左手と右手の指を組み合わせ、十種神宝(とくさのかんだから)という御神宝を思念して「ひーふーみーよーいーむーなーやーこーとー」と唱えながら、上体と、組み合わせた両掌を、左・右・前・後・中の順にそれぞれ10回づつ円を描くように回します(写真参照)。この時の自身の体の振動は、御神宝の振動でもあり、魂を揺さぶり動かす事にも繋がります。文章で表すと分かり辛いかもしれませんが、実践してみると、特別に難しいという所作ではありません。

もっとも、特別に難しくないとはいっても、鎮魂は神道独自の霊魂観が根底にある行法であり、単に所作だけを真似て体を揺すったり手を動かすだけでは何の意味もなく、やはり正統な指導者のもとで体得しなくては霊威が正しく発動されません。神社本庁では、鎮魂や禊などの神道行法の指導者は、定期的に行われる石上神宮での研修会において養成しており、「神社本庁錬成行事道彦規程」によると、本庁が主催する神道行法の研修会で講師として指導に当たることができる「道彦」という資格は、神社庁長が適任者と認め内申した者の中から統理が委嘱し、また、道彦の補佐に当たる「助彦」という資格は、適任と認められる者の中から庁長が委嘱することになっています。道彦・助彦ともに任期は3年で、重任は妨げないとされているため、大抵の道彦・助彦は、一期だけではなく何期か続けているようです。

ところで、布瑠部神業(ふるべのかむわざ)は、十種神宝(とくさのかんだから)を思念しながら実践すると先程述べましたが、この「十種神宝」とは、具体的には、澳津鏡(おきつかがみ)、辺津鏡(へつかがみ)、八握剣(やつかのつるぎ)、生玉(いくたま)、足玉(たるたま)、死反玉(まかるがえしのたま)、道反玉(ちがえしのたま)、蛇比礼(へびのひれ)、蜂比礼(はちのひれ)、品物比礼(くさぐさのもののひれ)の十種の御神宝のことをいいます。

十種神宝は、記紀神社神道が神典の中で最重要視する古事記日本書紀)にはその記述が全くなく、物部系統の伝承が詳述されている「先代旧事本紀」(せんだいくじほんぎ)に登場する謎の御神宝で、物部一族の祖神・饒速日命(にぎはやひのみこと)が、天孫に先立って高天原から地上に降臨する際に天津神より授かったものと伝えられています。先代旧事本紀によると、この十種神宝には死者を甦らす程の絶大な霊験があり、その御神宝の名を唱えるだけでも病気や邪気が祓われるなどの効き目があると云われています。

十種神宝の実物を見た人はいないため(現物の実見が許されていなくても三種の神器が現存しているのに対して十種神宝の実物は現在に伝わっていません)、各御神宝の形状などは全く不明ですが(名称から判断すると、鏡、剣、玉、布の4種であると推察できますが)、この御神宝を写しとったとされる秘図は今も伝わっており、石上神宮で毎年新嘗祭の前日(11月22日)夕刻に行なわれている鎮魂祭では、現在でもこの秘図が用いられているそうです。

なお、神社神道では石上神宮によって伝えられてきた石上鎮魂法を公式に採用していますが、教派神道古神道系の教団では、幕末から明治時代初期にかけての古神道家・本田親徳(ほんだちかあつ)が復興・再編した本田流の鎮魂法を継承しているところが多いようです。本田流の鎮魂は、鎮魂石という石を三方の上に載せ、その鎮魂石の前で鎮魂印を組みながら、鎮魂石に自分の霊魂が集中するよう思念しながら行う鎮魂法です。私は本田流の鎮魂は実践した事がありませんが、この鎮魂法が効くようになると、鎮魂石の重量に変化が生じるといわれています(石が重くなったり軽くなったりするそうです)。


===== 追 記 =====

神道行法の「鎮魂」に関して、このブログのコメント欄や、電子メール、電話等で、御質問やお問い合わせを戴く事が時々あるのですが、平成25年以降は、諸般の事情により、鎮魂に関する事については私はお答えしないようにしております。申し訳ありませんが、御了承下さいませ。鎮魂に御興味をお持ちの方は、以下の各記事を御参照下さい。

▼ 平成19年3月11日 「久々に鎮魂をしてきました」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20070311

▼ 平成23年5月5日 「鎮魂勉強会」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20110505

▼ 平成23年5月6日 「十種祓詞」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20110506

▼ 平成24年3月7日 「初めて開催された鎮魂行法研修会」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20120307

▼ 平成24年4月5日 「修行は実践せずして語り得ない」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20120405

▼ 平成24年4月9日 「鎮魂勉強会レジュメ」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20120409

▼ 平成24年4月10日 「昨年に引き続き、鎮魂勉強会を開催しました」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20120410

▼ 平成24年7月8日 「奈良県天理市に鎮座する石上神宮へ研修に行って参ります」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20120708

▼ 平成24年7月13日 「石上神宮神道行法錬成研修会を受講してきました」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20120713

▼ 平成25年1月28日 「今日は鎮魂を行いました」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20130128

▼ 平成25年3月6日 「第2回鎮魂行法研修会に出席してきました」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20130306

▼ 平成25年4月8日 「本田流鎮魂法」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20130408

▼ 平成25年6月20日 「今週は鎮魂と鳥船を行っています」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20130620

▼ 平成26年2月21日 「第3回鎮魂行法研修会に出席してきました」
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20140221


(田頭)

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