西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

参拝者の安全確保

当社では明日から秋まつりが始まります。いつもは閑散とした境内ですが、正月、節分、そして秋まつりの期間は、多くの人々が当社を訪れ境内が賑わいます。しかし、普段は閑散とした境内に突然大勢の人々が訪れると、場合によっては当社では想定していないような事態や事故が境内で起こる可能性も否定はできず(幸い今までそういった事例はありませんでしたが)、そういった意味では何かと注意を要します。

昨日、境内の危険区域(主に急な傾斜や激しい段差がある所)や立ち入り禁止区域(通路ではない場所)にロープを張ったりバリケードを築いたりしたのも、秋まつりでの参拝者の安全確保のためです。また、秋まつりの期間は露店が出店されることもあって多くの子供たちが当社を訪れるため、地元町内会やPTAでは、関係者たちが腕章を付けて当社の境内のパトロールをして下さることになっています。

幸い、当社の向かいには札幌西消防署平和出張所があり、また当社から徒歩5分程度の所には交番もありますが、警察や消防が離れた所にあって、それでいて何万人もの人々が一気に押し寄せるような大規模な行事が行われる神社では、その期間中だけ、境内に臨時の警備本部や消防本部などが設けられることもあります。安全というのは、気を遣って遣い過ぎるということがないからです。

なぜ神社ではこれだけ安全確保に気を遣うのかというと、実はかつて、某神社で前代未聞の大惨事が起きたことがあり、神社界では今でもその事件を教訓としているからです。これは決して忘れてはいけない事件なのですが、最近は意外と知らない人が多いため(とはいっても実は私も昨年初めて知ったのですが)簡単にこの事件の概略を説明します。

昭和31年1月1日午前0時20分頃、某国一宮の某Y神社にて、新年をお祝いする餅撒きが行われました。ところが、その「福もち」の奪い合いのため大混乱が生じ、参拝者が高さ3mの石段から転落し、それがきっかけとなって次々と将棋倒しが起こり、その結果、124人もが圧死し94人が重軽傷を負うという、戦後最大の圧死事件となりました。神社で起きた事故としても、当然前例のない大惨事で、私は、過去の代表的な災害が記録されているある本で、事故後にY神社で撮られた写真を見たことがあるのですが、遺体が納められた柩が神社の社殿から次々と運び出される様子は、確かに悲惨で異様としか言い様のない、決してあってはならない光景でした。

事故の起こった日、同社には3〜4万人もの初詣の参拝者が訪れていたにも拘わらずず、警備の警察官はたったの16人しか配置されておらず、この事件の2年前に起きた皇居での一般参賀での事故(16人が死亡)の教訓が全く生かされなかったとしてそのことも大きな社会的な批判を呼び、この事故は当時の県警本部長の進退問題にまで発展したそうです。

この大惨事を受けて、神社本庁では事故の直後、直ちに広く神社界から弔慰金を募るとともに(弔慰金は当時の金額で220万円余に達しました)、「参拝者の激増に処する対策について」と題した通牒を各神社庁に発しました。通牒の内容は以下の通りです。

今回○県○神社で突発した年越参拝者の大惨事は、まことに痛ましい不祥事である許りでなく、一大社会問題として世論を刺激し、今後かかる惨事を頻出するに於いては、将来に於ける神祇の崇敬、神社の参拝にも影響するところが大きく、神社界としても慎重なる対策を要するものと考えられます。就いては本事件を強く肝に銘じ、再びかかる惨害を繰り返さないため、節分その他群参者の想像せられる祭礼、神事に際しては、左記の諸点に御留意の上、万全の措置を採られたく、此の旨取急ぎ貴管内各神社に、徹底示達方御依頼いたします。

一、危険の場所或いはその恐れありと思われるところは、事前に補強・掲示又は警備等万全の措置をとること。

一、群参者の警備、整理については青年団消防団ボーイスカウト、交通関係者等の協力を求めると共に、事前に所轄警察署と、人員の配置、連絡等を始め万一の場合等について、手落ちのないよう充分の打合をなしておくこと。

一、群参者の警備、整理については、一方交通、片側通行等、往路を帰路とを別々にする等の施策をはかること。

一、夜間の場合は、特に照明方法について、適切の措置をとること。予備照明についても準備をしておくこと。

一、群参者に対する伝達事項を徹底せしめるため、拡声器の準備をすること。

一、群参者に対する豆まき、餅まき等を行うに際しては、諸般の情況を勘案し、その方法等については充分研究をすること。

一、特に揉み合うことをしきたりとする行事や、酒気を帯びた群参者が想像される様な場合には、格別の対策を立てること。

一、万一の事故発生に備え、救護所を設置すること。(本件については要請すれば日赤より救護班派遣の便宜がある)

一、火の用心につき一段と留意をすること、特に行事の前後の時期には格段の注意をすること。

なお、比較的近年に起こった、世界各国における宗教儀式中の大事故としては、昭和61年4月にインド・ガンジス川で起きた斎戒沐浴儀式中のパニック事故(50人死亡)、平成3年2月にメキシコのメキシコ市内の教会前で起きたカトリック巡礼者の将棋倒し事故(42人死亡)、平成6年5月にサウジアラビア・メッカでイスラーム犠牲祭中に起きた将棋倒し事故(270人死亡)、同年8月、コンゴのバコンゴでミサを終えて教会の外に出た約2千人の信者が雷雨に見舞われ建物内に殺到したことによる将棋倒し事故(143人死亡)、平成9年4月にサウジアラビア・メッカのムスリム巡礼者200万人が集まる宿営地で起きた大規模な火災事故(343人死亡)、平成11年1月にインド・ケララヒンドゥー教徒の巡礼地で起きた丘の崩落事故(52人死亡)、などが挙げられます。

このような事故は、前出の通牒の文中にもありますように、痛ましい不祥事である許りでなく、一大社会問題として世論を刺激し、その宗教に対する人々の崇敬心にも多大な影響(マイナスの意味で)を与えることになるため、私達宗教家は心して参拝者の安全確保に努めなければなりません。

(田頭)