西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

十日戎(とおかえびす)

西宮神社拝殿

今日(1月10日)は「十日戎」の日です。十日戎は、主に西日本の戎(恵比寿)系神社で執り行われる神事・習慣で、私達北海道の人間にはあまり馴染みのない神事ですが、関西などでは毎年かなり盛大に執り行われており(東北地方などでも一部では行われているようですが)、特に、全国の戎系神社の総本宮で開門神事などで有名な西宮神社兵庫県西宮市)と、福娘のオーディションで有名な今宮戎神社大阪市浪速区)には、十日戎の3日間(1月9〜11日)だけで共に百万人もの参拝者が訪れ、関西における十日戎は初春の風物詩ともなっています。

十日戎というのは、七福神のうちの一柱で特に商売繁盛と豊漁に御利益があるとされる“えびす様”をお祀りしている西日本の戎系神社で執り行われる、主に商売繁盛を祈願する商人のためのお祭り(初詣)です。前日祭に当たる「宵えびす」(1月9日)、当日祭に当たる「本えびす」(1月10日)、後日祭に当たる「残り福」(1月11)の3日間に亘って執り行われ、この3日間は、一年間の福を求めて多くの人々が戎神社を参詣し、授与所などで福娘や巫女さんたちから縁起物の福笹などを受けます(福笹は神棚に飾り、毎年新しいものと取り替えると福が授かると云われています)。また、十日戎は「商売繁盛、笹持って来い!」の掛け声でも有名です。

貼付の写真は、学生だった当時、西宮神社十日戎で助勤させていただいたときに私が撮ったもので、私達助勤者(主に皇學館大学京都國學院に在籍する神職を志す学生たち)は、拝殿前の中央と両脇に仮設された祓所に詰めて参拝者を只管大麻で祓い続けるという所役(写真参照)や、授与所に詰めて授与品の補充をしたり福娘と一緒に福笹の授与を行ったりするといった御奉仕をさせていただきました。かなりハードな内容の奉仕でしたが、今となってはとても貴重な良い思い出です。


西宮神社の開門神事

西宮神社では、毎年宵えびす(1月9日)の深夜12時に神社の全ての門を閉じて忌籠(いみごもり)神事を行い、10日の午前4時に「十日えびす大祭」を厳修し、その後、午前6時に大太鼓を合図に表大門(通称:赤門)を開門します。そして、その開門と同時に、表大門前で待ち構えていた千人余りの参拝者たちが福を求めて一斉に本殿に向かって走り、本殿に到着した順に一番福から三番福までの3人が、その年の「福男」に認定されます。

西宮神社境内の参道約230m(時間にすると僅か30秒程)を本殿めがけて全速力で疾走するこの「開門神事福男選び」は全国的にも有名で、札幌にいる私も、十日戎の時期は毎年テレビの全国ニュースでこの映像を見かけます。昨年の開門神事では、午前0時から表大門の前に並んでいた108人が、開門と同時にくじで決めた位置から一斉にスタートし、その数秒後、更に約1,900人が本殿を目指し境内へ駆け出し、兵庫県加古川市の会社員で甲子園にも出場経験のある元高校球児の男性(当時20歳)が、見事一番福を手に入れました。そして、今朝執り行われた今年の開門神事では、凡そ2千人の参加者の中、昨年一番福を手に入れた元高校球児の男性(21歳)が、昨年に引き続き2年連続で見事一番福の栄冠を手にしました。

しかし、これだけ大勢の人々が参加し、マスコミによって毎年全国に大きく報道されている神事に関わらず、近年までこの開門神事には特にこれといった決まり事はありませんでした(全く無かったという訳ではなかったのですが、明確に明文化はされておらず、参加者達による“慣習”や“暗黙の了解”で行われている部分が多くありました)。

そのため、平成16年の例の騒動(仲間を独走させるために、消防士の集団が他の参加者の走りを妨害したのではないかという疑惑を持たれ、それが大々的に全国に報道されたことから、一番福を手にした消防士の男性が神社に一番福を返上せざるを得なくなり、その年の一番福が「該当者なし」となった前代未聞の騒動)をきっかけに、その翌年からは参加者に対して神社によって明確なルールが提示されるようになりました。西宮神社のHPにも掲載されておりますが、それは以下のようなものです。

①表大門は一月十日午前0時に閉門し、午前六時に開門します。②早くからの場所取りは参拝者の迷惑となりますので禁止します。③表大門付近でのテント設営、火気の使用は禁止します。④開門時の事故防止の為、押し合うことなく係員の指示に従って下さい。⑤転びやすい履物や泥酔状態での走り参りは禁止します。⑥参拝者に参拝証を授与します。但し数に限りがあります。⑦開門神事で表大門に並ぶ順番は抽選で行います。⑧事故防止のため係りの判断により、こども・高齢者等には表大門付近から離れていただくようお願いすることがあります。⑨神事ですので奇抜な衣装での参加はご遠慮下さい。

それまでは、開門の2〜3日も前からテントを張って野宿する人達もいたのですが、このルールが作成されたことによりそういった行為が禁止され(抽選により並ぶ順番が決まるようになったため、早くから並ぶこと自体に意味が無くなりました)、開門神事がより安全に行われるようになりました。

ちなみに、西宮神社による福男の認定は昭和15年から始まり、福男(一番福から三番福まで)には、神社から福男認定証と木彫りの戎様の像、米や酒などが贈られますが、次項で述べる今宮戎福娘のように、賞金を貰ったりその後各種行事に参加したりするようなことはありません(福男になると豪華な景品が貰えたり各種行事に引っ張りだこになると誤解をしている人がいますが、そのようなことはありません)。開門神事の参加者にとっては、神社から貰う記念品などはあくまでもオマケであって、大多数の参加者にとっては「福男」という称号を貰うことに最も重き意味があり(福男になると運気が上昇すると云われています)、そのために全力で走るのです。

なお、そのような実例はまだ一度もないものの、もし女性が一着になれば、「福男」ではなく「福女」の称号が与えられるそうで、参加者のなかには毎年女性も多く含まれています。


今宮戎神社福娘

福娘」というのは、十日戎の期間中(1月9日〜11日にかけての3日間)戎系神社で参拝者に福を授ける(主に福笹授与の奉仕を行なう)女性奉仕者のことで、特に今宮戎神社福娘は、十日戎の花形といえる存在です。授与所に詰めるという奉仕内容だけをみると一般の巫女と特に差はないものの、福娘たちは皆、お揃いの着物の上に千早を着用し、頭には金の烏帽子を付けるため、視覚的にも一見して一般の巫女とは異なっています(但し、後述するように今宮戎福娘は、授与所に詰めるという奉仕以外にも様々な奉仕や活動があります)。

私は学生だった頃、西宮神社十日戎で福笹の授与所に詰めて奉仕させていただいたことがありますが、同じ授与所で全く同じ福笹を授与しているにも関わらず、参拝者の大半は福娘が授与している窓口に列を作って並び、私たち男性奉仕者からの授与を希望する人はほとんどおらず(笑)、やはり福娘たちは人気が高いなぁ、とそのとき実感したものです。また、私が西宮神社での奉仕中に見た限りでは、福娘たちは奉仕中も常に誰かに写真を撮られており、なかにはポーズを要求する図々しい方もかなりおり、福笹を受けるためというよりは、明らかに福娘の写真を撮ることを目的に神社に来ている人もかなり多くいたようでした。

福娘にはそれだけ人を引き寄せる力があるため、最近では、神社とは全く関係のない団体(例えば商店街など)でもイベント時に独自に福娘を募集しているところがあるくらいです。もっとも、神社と関係のない福娘は、所謂「なんちゃって福娘」でしかありませんが。

しかし、前述のように最も代表的な福娘といえば、やはり今宮戎神社福娘です。今宮戎神社福娘オーディションは昭和28年から開催されており、毎年秋に一般公募が始まり、3千人以上もの女性が応募し(応募資格は満18歳〜23歳までの未婚の女性、但し高校生は除く)、その中から特に健康的で笑顔の美しい40人程度の女性が翌年の福娘に選ばれます。

その約40名の名前が発表される最終選考会(発表会)は、福娘たちのマスコミへの“初お披露目”も兼ねているため、例年大阪朝日放送のABCホールにて行われ、最終選考会の審査員には多くの有名人が名を連ねています。昨年(先月3日)の選考会ではどなたが審査員を務められたのかまだ聞いておりませんが、一昨年の選考会では、落語家の桂三枝さん、俳優の辰巳琢郎さん、スポーツキャスターの大林素子さんなどが審査員を務められたそうです。

そして入賞者(今宮戎神社福娘に選出された女性)には、賞金15万円と訪問着一着が贈呈され、入賞後は、官公庁や各関係団体、報道関係などに挨拶回り行き、1月7日には餅まき行事、翌8日には舞楽奉納式、そして本えびすの10日には、大阪ミナミの繁華街を賑々しく繰り出す宝恵駕籠(ほえかご)行列にも参加するなど、他の戎神社の福娘が実質的にはほとんど福笹の授与しか行なわないのに対し、今宮戎福娘たちの奉仕内容は大変豊富で内容も充実しており、世間やマスコミへの露出度も非常に高く、その当たりの事情が、各戎神社の福娘の中でも今宮戎福娘だけが突出して特に有名・人気で、毎年マスコミで取り上げられるほどに注目されている大きな要因になっているのではないかと思います(勿論、毎年盛大に開催されるオーディションの存在も、世間から注目される大きな要因だとは思いますが)。

しかも、関西在住(奈良県出身)の私の友人に聞いたところ、今宮戎福娘経験者は、就職するときにもその経験が有利に働くのだそうです。十日戎福娘とは縁のない北海道にいる私にはあまりピンとこない話ですが、「そうか、あんた福娘をやったことがあるんか。そんならあんたを採用したら縁起がいいな」という理由で、その人(福娘経験者)を採用する企業も大阪には少なからずあるのだそうです。また、「週刊神社紀行50/西宮神社今宮戎神社」(学研)によると、今宮戎福娘経験者には「ぜひお嫁に!」との申し込みも殺到するそうで、今宮戎福娘経験者の中には、その後、ミスユニバースの日本代表に選ばれた方もいるとのことです。


福娘オーディション

【平成17年】

一昨年開催された今宮戎福娘オーディションには、近畿一円から約3,500人の応募があり、まず第一次審査(書類選考)で3,500人から900人にまで絞り込み、続く第二次審査(面接)は11月21日・23日・28日の3日間に亘って同神社の参集殿で行なわれ、第一次審査を通過した女性約900人が、一人づつ審査員の前を歩き、歩き方や姿勢などのチェックを受けました。そして審査終了後、本殿にて合格者の発表が行なわれ、この3日間の第二次審査では約500人の通過者が決まりました。

最終審査は、12月5日、大阪市内のABCホールで行なわれ、第二次審査合格者の中から40人が福娘として選出されました。更にこの最終選考会では、その40人の福娘たちの中から代表の福娘も3人選ばれました。これは、官公庁や各種団体などへの挨拶廻りは3つの班に分かれて行なうため、その際に各班の代表を務めるための選出なのですが、実質的には、マスコミへの露出はこの代表者3人が中心となります。

ちなみに、このときの福娘の代表に選ばれたのは、大阪府茨木市の19歳(当時短大1年)、大阪市鶴見区の20歳(当時大学1年)、大阪府河内長野市の21歳(当時大学4年)の3人で、この中の21歳の女性は、母親も今宮戎福娘として奉仕した経験があり、本人も18歳のときから福娘に挑戦し続け、4回目の挑戦となることの年に、初めて福娘に選ばれたそうです。

【平成18年】

昨年開催された今宮戎福娘オーディションには3,176人の応募があり、最終選考会は先月3日、大阪朝日放送のABCホールで開かれ、海外からの留学生を含む44人が福娘に選ばれました。

最終選考会では、書類と面接で選ばれた39人と、関西大学の留学生の中から選ばれた5人の、総勢44人の女性が、金色の烏帽子に千早姿で登場し、歌や踊りなど得意のパフォーマンスを披露しました。今回の福娘の代表に選ばれたのは、兵庫県加西市の大学生(22歳)、大阪市浪速区の会社員(22歳)、京都市の大学生(22歳)、中国からの留学生(24歳)の4人で、インタビューでは、4人はそれぞれ喜びの心境を述べるとともに十日戎に向けて頑張っていきたいとの抱負を語っておりました。

今年初めて留学生の福娘を登場させたことについて、12月7日付の「中外日報」によりますと今宮戎神社では、「日本の文化を学びたいという留学生の要望に応えるだけでなく、日本の文化に対する留学生の姿勢が日本人の刺激になれば」とコメントしており、日本人・留学生の相互に良い影響を与えるものと捉えているようです。


(田頭)