西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神職経歴による階位の昇階

神社に奉仕している現任の神職が、現在の階位よりも更に上位の階位を取得するためには、具体的にどのような条件や手続き、経歴等が必要になってくるのでしょうか。現職の神職以外には全く興味のない話となってしまい申し訳ありませんが、神社本庁が発行している階位に関する資料等を読んでも昇階の方法について書かれたものは意外と少ないようなので、今日は階位の昇階についてのお話しをさせて戴きます。

昨年5月6日付の記事「神主になる方法」の「階位取得の概要」でもまとめましたように、神職が階位(但し浄階は除く)を取得する方法としては、①神職養成機関に入学する②階位検定講習会を受講する③神職養成通信教育を受講する④階位検定試験を受験する、という4つの方法があり、戦前の資格により階位を取得するといった例外的な方法を除くと、現在は、この4つ以外の方法で階位を取得する方法はありません。

この4つのうちのを「無試験検定」、を「試験検定」といい、つまり階位を取得するための方法は、「試験検定」と「無試験検定」とに大別されています。を「試験検定」というのは、その名の通り実際に検定試験(受験しようとする階位によって試験科目の種類や数は異なります)を受験して階位の取得を目指す方法であるためで、後の3つを「無試験検定」というのは、学生として神職養成機関に在籍して授業を受けたり、受講生として講習会もしくは通信教育を受講することにより、検定試験の受験が免除されて階位を取得できるからです。

現に階位を取得している者が更に上位の階位の取得を目指す場合も、基本的にはこのの方法を執ることになり、つまり「無試験検定」もしくは「試験検定」により上位の階位を取得するのですが、今回は、このうち「無試験検定」で昇階を目指すという方法を詳しく紹介させて戴きます(それが最も現実的な方法だからです)。

しかし「無試験検定」で昇階を目指すといっても、昇階のためにわざわざ神職養成機関に入学したり、階位検定講習会や通信教育を受講したりする訳ではありません。現にそういった方法をとって昇階される神職もいますし、実際にはその方が後述する方法(神職経歴による無試験検定)よりも短期に昇階できるのですが、しかし現職の神職であれば、養成機関に入学もしくは階位検定講習会を受講するために長期の休暇をとることはまず不可能であるため、現職の神職には、神職経歴により無試験検定で昇階を目指すという方法が用意されているのです。以下に、各階位毎にその方法や条件等を紹介させて戴きます。


≪直階から権正階への昇階≫

以下の(1)〜(3)の条件を満たしている直階の現任神職は、申請するだけで権正階に昇階することができます。

(1)直階を有する神職、または神宮もしくは別表神社の雇員のうち、直階授与後7年以上在職している者であること。

(2)権正階基礎研修の全課程(10日間)を修了している者、もしくは年齢が40歳以上である者。

(3)直階授与後の研修歴が7日間以上(但し権正階基礎研修は研修歴に含めない)あること。

権正階基礎研修は、権正階に昇階するために受講しなくてはならない研修で、各地区や神社庁において開催されておりますが、定期的な実施の有無や回数、分割実施をしているかなどの状況は各地区によってそれぞれ異なっています。

なお、(1)でいう「神宮」とは伊勢の神宮のみを指しており、その他の神宮号を持つ神社は含んでおりません(伊勢の神宮以外の神社の神職については、文中の「直階を有する神職」に含まれます)。また、「別表神社」とはどのような神社をいうのか、ということについては、昨年3月4日付の記事「神社の社格」の中の一番最後の項目「別表神社・諸社(戦後)」を御参照下さい。


≪権正階から正階への昇階≫

以下の(1)〜(3)の条件を満たしている権正階の現任神職は、申請するだけで正階に昇階することができます。

(1)神職にして、権正階を授与されてから10年以上在職する者、もしくは7年以上在職し年齢が47歳を過ぎた者であること。

(2)正階基礎研修の全課程(30日間)を修了していること。

(3)権正階授与後の研修歴が10日間以上(但し正階基礎研修は研修歴に含めない)あること。

正階基礎研修は、正階に昇階するために受講しなくてはならない研修で、神社本庁研修所の主催により伊勢の神宮道場において年に2回、10日間毎に分割実施されています。受講資格は、「権正階授与後、7年以上在職する者、または4年以上在職する年齢44歳を過ぎた者で、成績特に優秀として神社庁長の推薦を得た者」とされています。

ちなみに、神職にして、権正階を授与されてから10年以上在職し、年齢70歳を過ぎ、研修所もしくは神社庁主催の研修や講習会を権正階を授与されてから延べ20日間以上受講している者については、正階基礎研修を修了したとみなされます。つまり、やや乱暴な言い方をすると、70歳以上という高齢で、神職としての経歴が最低10年はあり、神社庁の研修会にもまめに出席している人は、正階基礎研修を受講しなくても正階に昇階できるということです。


≪正階から明階への昇階≫

以下の(1)〜(3)の条件を満たしている正階の現任神職は、申請するだけで明階に昇階することができます。

(1)神職にして、大学卒業または神職養成機関普通課程を修了した者は正階授与後10年以上、短期大学もしくはこれと同等以上の学校を卒業した者は13年以上、その他の者は15年以上在職していること。

(2)明階基礎研修の全課程(30日間)を修了していること。

(3)正階授与後の研修歴(各種研修や中堅神職研修など)が20日間以上(但し明階基礎研修は研修歴に含めない)あること。

明階基礎研修は、明階に昇階するために受講しなくてはならない研修で、神社本庁研修所の主催により伊勢の神宮道場において年に2回、10日間毎に分割実施されています。受講資格は、「神職にして、大学卒業または神職養成機関普通課程を修了した者は正階授与後7年以上、短期大学もしくはこれと同等以上の学校を卒業した者は10年以上、その他の者は12年以上在職し、成績特に優秀として神社庁長の推薦を得た者」とされています。

ちなみに私の階位は正階ですので、もし私が明階に昇階しようとすると、まず、今日の記事の冒頭で紹介したの方法のうち、は除外されます。の階位検定講習会で取得できる階位は直階・権正階正階のみで、明階の検定講習会はそもそも実施されておらず、また、の通信教育で取得できる階位も直階と権正階のみで、正階以上の階位の通信教育は実施されていないからです。の「神職養成機関に入学する」という方法については、明階を取得できる課程(修了時に明階検定合格とされる課程)で、かつ学歴等の条件から私が入学可能な課程といえば、高等課程(国大、皇大にそれぞれ開設されている、高卒以上の者を対象とした4年間の課程)と専修課程(京都國學院にのみ開設されている、短大卒かそれと同等以上、もしくは普通課程修了者、もしくは正階取得者を対象とした2年間の課程)の2課程になります。

つまり、私、あるいは私と同様の立場や経歴の神職(高卒以上の正階取得者)が明階に昇階する方法としては、(A)神職養成機関の高等課程もしくは専修課程に入学する(B)明階の検定試験を受検する(C)神職経歴による無試験検定で昇階する、の3つの方法が考えられるということです。

但し、(A)神職養成機関に入学して当該課程を履修するという方法については、現職の神職であれば退職もしくは休職しなければまず実現不可能であるため現実的な選択とはいえず(学歴が私よりも更に上であれば専攻課程Ⅰ類や同Ⅱ類の入学資格も生じますが、入学のため長期休職もしくは退職を伴うという点においては、どのみち現実的な選択とはいえません)、また、(B)の試験検定についても、合格のためには相当な勉強時間を確保する必要があるため(更に、強い目的意識や不屈の根性も必要)やはり現実的な選択とはいえず、そうなると、正階が授与されてから最低でも10年の時を経なければならないという条件は付くものの、この項で紹介した神職経歴による無試験検定という方法、つまり、(C)が、現職の神職にとっては最も現実的な昇階の方法ということになります。ただし、この方法でも明階基礎研修受講のためトータルで30日間の日程を確保する必要はあるため、社務に全く支障を来たさないということはあり得ません。


≪特別昇階≫

平成18年に神社本庁が設立60周年を迎えたことから、同年、斯界に広く貢献しているもののやむを得ない事情により通常の規程では階位の昇階が困難な状況にある神職(但し直階及び権正階神職のみ)を対象に、記念事情の一環として特別昇階が実施されました。

神社本庁設立六十周年記念階位特別昇階に関する規程」が定める、直階から権正階への特別昇階の対象者は、「年齢満65歳以上(平成17年9月現在)で、直階を取得後10年以上在職し、その階位に相応しい成績を有する神職」もしくは、「直階の宮司代務者は本来であれば5年以内に権正階を取得して宮司に就任しなければならないものの、5年を経過してもやむを得ない事情により権正階の取得が困難な状況にある満55歳以上の直階の宮司代務者」のいずれかに該当する者とされ、また、同規程による権正階から正階への特別昇階の対象者は、「年齢満65歳以上(平成17年9月現在)で、権正階を取得後15年以上在職し、その階位に相応しい成績を有する神職」とされました。

神社庁は、上記の条件を満たす直階及び権正階神職を管内神職の中から選考し(但しその定数は各神社庁毎、当該管内神職数の2%とされました)、選考された者は、本庁での審査委員会での審査を経て昇階が正式に決定し、各神社庁経由で直接本人に連絡がなされました。なお、この特別昇階では、上記の条件(年齢・在職年数)を満たしていなくても、一般社会及び神社界に抜群の功績があり、当該階位に昇階させることが相応しいと特に庁長が判断した者についても、審査の対象とされました。

但し、同規程による特別昇階者は、通常の検定講習会や基礎研修を受講して階位を取得した者と比較して費用の面で不公平が生じることがない様、その階位に応じて神職養成教学興隆基金篤志の寄付金を納めることも併せて規程されており、また、そもそもなぜ特別昇階が実施されるのか、というその趣旨を鑑みて、特別昇階による昇階者の階位証の交付日は全て、神社本庁設立記念日の2月3日付とされました。


≪備考・注意事項≫

今日の記事の≪権正階から正階への昇階≫及び≪正階から明階への昇階≫の各項で述べましたように、神職経歴による無試験検定で一つ上の階位に昇階する場合、権正階から正階への昇階の場合は正階基礎研修を、正階から明階への昇階の場合は明階基礎研修をそれぞれ受講しなければなりませんが、実は、正階基礎研修や明階基礎研修を受講しなくても、特例として昇階が認められる場合があります。

権正階から正階に昇階する場合は、最終学歴が短期大学卒業以上で「神道に関して学識を有することを証明する書類」を提出すれば、正階基礎研修の受講が免除されることがあり、また、正階から明階に昇階する場合も同様に「神道に関して学識を有することを証明する書類」を提出すれば、明階基礎研修を受講が免除されることがあるのです。これは、神社神道に関する著書・研究論文等を提出して検定を行なうという申請方法で、この申請が認められば、≪権正階から正階への昇階≫及び≪正階から明階への昇階≫の各項のそれぞれの(2)が免除されることになります。

但し、この場合の「神道に関して学識を有することを証明する書類」とは、四百字詰め原稿用紙50枚以上で、論文としての体裁を整えたものであり、内容的にも学術雑誌等に掲載可能なレベルであることが求められます。

なお、これは階位の昇階だけに限ったことではないのですが(例えば身分の昇級についても同様です)、神職経歴が考慮される場合には、実際には各階位毎のそれぞれの所定の日数の研修歴の他に、神社庁での役員・委員・講師当の経歴、神社本庁の表彰規程による表彰や神宮大麻頒布功績による神宮からの表彰を受けているか否か、教誨師・保護司・民生委員・教育委員などを務め地域活動に貢献しているか否か、といった経歴も総合的に判断されています。


(田頭)