西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神葬祭での神職の装束

【 注 意 】 この記事には一部不正確な情報や修正すべき点などが含まれていたため、この記事の改訂版として新しい記事をアップロードさせて頂きました。この記事ではなく、新しく書き直した平成23年4月6日付の記事のほうをお読み下さい。宜しくお願い致します。


今日・明日の2日間、祭員として神葬祭(神式の葬儀)で御奉仕をさせて頂く事になりました。当社で神葬祭を受けるのは今月に入ってから2件目ですが、前回の神葬祭宮司と松澤権禰宜との二人奉仕であったため、私が神葬祭で御奉仕させて頂くのはかなり久しぶりです。

当社での神葬祭の流れについては、昨年1月18日付の記事「神葬祭」で詳しく記させて頂きましたので詳細は割愛しますが、改めて簡単に記しますと、当社で執行する神葬祭は、「帰幽奉告・枕直し → 通夜祭 → 葬場祭・発柩祭 → 火葬祭 → 帰家祭」という流れで執り行われます。このうち「葬場祭・発柩祭」は、神事としては意味の異なる別々の祭典なのですが、実際には同一斎場で続けて執り行われるため、参列者から見ると同一神事のように映るかもしれません(「帰幽奉告・枕直し」も同様です)。ちなみに通夜祭は、昨年春までは「前夜祭」という呼称を用いていました。

そして、これらの神葬祭では、その時々に応じて神職の装束が変わります。しかし、普段神葬祭に参列する機会が少ない大部分の方は、恐らく神葬祭での神職の装束についてはほとんど御存知ないと思います。そこで今日は、神葬祭神職が着装する装束について、以下に写真を提示しながら紹介させて頂きます(あくまでも西野神社での例であり、実際には各神社によって多少の相違がある事を御了承下さい)。


≪鈍色の衣冠≫

鈍色の衣冠
「鈍色」とは、葬祭奉仕時に神職が着装する装束に使われる専用色で、灰色に近い色です。当社ではこれを「にびいろ」と読み、以前私が実習していた神社では「にぶいろ」と読んでいましたが、改めて「鈍色」という言葉を国語辞典で調べてみるとどちらの読み方も掲載されているため、読み方はどちらでも良いようです。

「鈍色の衣冠」は、「通夜祭」「葬場祭・発柩祭」の時に斎主が着装します。一般の葬祭奉仕時の神祇装束としては最も正式な装束で、装束の色が鈍色という事以外は、基本的に「正服」や「斎服」と変わりはありませんが、ただ、頭に被る冠(かんむり)の纓(えい)の形は、正服や斎服と異なります。正服・斎服着装時の冠の纓は、冠の後方から後ろに垂れているのですが、葬祭奉仕時の纓は後ろに垂れず、クルクルと丸まっています。

なお、この装束の事を「鈍色の斎服」と称する場合もありますが、厳密にいうと、斎服というのはあくまでも白色の衣冠の事なので、この言い方は正確ではありません。

ちなみに、上記文中では「正服」や「斎服」といった言葉が出てきましたが、正服の写真はこのページ(←ここをクリック)に、斎服の写真はこのページ(←ここをクリック)に掲載されていますので、御参照下さい。


≪鈍色の狩衣≫

鈍色の狩衣
「鈍色の狩衣」は、「帰幽奉告・枕直し」「火葬祭」の時に斎主が、「通夜祭」「葬場祭・発柩祭」の時に祭員が着装します。通常の狩衣(かりぎぬ)とは、色が異なるだけで形は全く同一です。

なお、この写真と、この写真の上下の写真とでは、持扇(じせん)の作法(の持ち方)が異なりますが、どちらの持扇も、祭式の教科書に載っている正式な作法です。最も一般的な持扇とされているのはこの写真の作法(主に女子神職向けの作法)で、上下の写真の持扇は、特に男子向けの持扇(主に総代向けの作法)とされています。


≪鈍色の格衣≫

鈍色の格衣
格衣(かくえ)は、本来は正式な神祇装束ではないのですが、着装が最も容易な装束であるため、当社では、装束の着装が容易でない時(例えば改服場所がなかったり、人の往来が激しいような場所)に於いては「鈍色の狩衣」の代わりにこの「鈍色の格衣」を着装する事があります。具体的には、「帰幽奉告・枕直し」の時に斎主が、「火葬祭」の時に祭員が、この装束を着る事があります。


≪備考≫

一連の神葬祭の流れの中で最後の儀となる「帰家祭」だけは、鈍色ではなく白色の装束を用い、具体的には、斎主は斎服を、祭員は浄衣を着装します。

但し、葬儀を執り行う機会が滅多にない神社では、葬祭専用の鈍色の装束を揃えていない所もあり、そういった神社が葬儀を執行する場合、神職は、装束を変える事なく一貫して斎服や浄衣などの白い装束を着装して奉仕されているようです。

ちなみに、神葬祭に於いて当社の神職が手に持つ具は、帰家祭では通常通り(しゃく)ですが、帰家祭以外においては鈍色の中啓(扇の一種)を用います。


(田頭)