西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

階位取得に関する誤解に対して


階位(神職の資格)の取得方法については、昨年3月16日付の記事「神職の階位」、昨年5月6日付の記事「神主になる方法」、今年4月24日付の記事「階位取得に関してのお問い合わせ」をはじめ、このブログでは今まで何度かに亘って取り上げ、その都度詳しく書かせて頂きましたが、最近、階位の取得や神職養成機関に関していろいろと誤解をされている方をお見受けしますので、それらの誤解を個々に解いていくという形式を用いながら、今日は久々に階位の取得や養成機関に関するお話しをさせて頂きます。


神職養成機関には、必ず神社庁長の推薦状がないと入学できない?

そうとは限りません。普通課程(各神職養成所と國學院大學に開設されています)の場合は、神社庁長の推薦状がないと入学できない所がほとんどですが、高等課程(國學院大學皇學館大学に開設されています)は、推薦状がなくても出願可能です。

また、専攻課程Ⅰ類・同Ⅱ類(國學院・皇學館の両大学に開設されています)の場合、國學院大學では推薦状が必要ですが、皇學館大学では推薦状がなくても出願可能です。但し庁長に推薦状を書いて貰える場合は、皇大の専攻課程出願時、勿論それを提出しても構いません(専攻課程は出願倍率が高いので、推薦状はないよりはあった方が有利かと思われます)。

ちなみに、平成19年現在、京都國學院の専修課程と普通課程Ⅰ類・同Ⅱ類では、庁長の推薦状が用意できない場合、それに代わるもの(本庁包括下の神社の宮司による推薦状、身分証明書、志望動機を記した作文等のいずれか)を用意する事でも出願が可能です。


卒業時に明階検定合格・正階授与とされる課程はあっても、卒業時に直ちに明階が授与される課程は、今はもうない?

あります。従来は、國學院・皇學館両大学にそれぞれ開設されている高等課程や専攻課程を修了すると(神職課程単位取得者も含む)直ちに明階が授与されていましたが、制度の改訂により、高等課程では平成10年度入学者から、専攻課程Ⅰ類では平成13年度入学者から、修了(明階検定合格)と同時に明階は授与されなくなり、それぞれの課程修了者は「明階検定合格・正階授与」とされるようになりました。

そのため、「修了と同時に明階が授与される課程は今はもうない」と思っている方がいるのですが、國學院・皇學館両大学にそれぞれ開設されている専攻課程Ⅱ類と明階総合課程の修了者は、原則として修了と同時に明階が授与されます。

但し、専攻課程Ⅱ類の出願資格者は「大学を卒業している者」であり、また、明階総合課程の出願資格者は「高等課程の4年に在籍する者(年次末で高等課程の必要単位を全て修得し、神務実習も全て修了している者)」、「専修課程、高等課程、専攻課程Ⅰ類のいずれかを修了した者」、「階位検定試験により明階検定に合格した者のうち、明階検定合格後2年以内の者」のいずれかに該当する者のみなので、専攻課程Ⅱ類や明階総合課程には、誰でも出願できるという訳ではありません。


明階検定合格となった者は、その2年後に必ず明階が授与される?

明階授与の条件を満たせば、確かに検定合格の2年後にすぐに明階が授与されますが、逆に言うと、その条件を満たさない限りは何年経っても明階は授与されません。この場合の条件(明階検定合格者が明階を申請できる条件)とは、具体的には以下の3つです。明階検定合格者でありながらこの条件を正確には把握していないという方が意外と少なくありません。

(1)伊勢の神宮、各神社、神社本庁及び神社庁にて2年以上の奉職歴を有している事。なお、本庁包括外の神社であっても、その神社が鎮座する神社庁長の具申により本庁が適当を認めた場合は、この要件を満たします。

(2)初任神職研修(新任神職を対象に各神社庁に於いて開講される3泊4日の研修)の受講が完了している事。

(3)初任神職研修以外に、4日間以上の各種研修の受講が完了している事。なお、この場合の研修は内容が限定されていないため、神社庁研修所から修了証の発行される研修であれば、祭式研修、雅楽研修、神道行法研修などどのような研修でも構いません。

つまり、明階検定合格となったからといって、それは「検定合格の2年後に必ず明階を授けられる事が確定している」という訳ではないのです。明階検定に合格していても、上記(1)〜(3)の各条件を満たしていない場合、例えば、神社関係に奉職できなかった場合や、奉職が叶ったとしてもそれが本庁包括外の神社であったり、あるいは、本庁包括下の神社に奉職できたとしても研修に出席できなかった場合などは、残念ながら明階を申請する資格が生じないのです。

実際、折角明階検定に合格していながら、明階申請の条件を満たしていないため、検定合格から2年以上経っているにも拘わらず明階を申請していないという人は意外と多くいます。研修履歴が足りないという理由から申請できないのであれば、多少時間がかかってもその履歴を満たす事さえできれば明階は申請できるようになりますが、もし神社関係に奉職できなかった場合や、本庁包括外の神社に奉職した場合は、残念ながら明階申請のチャンスが訪れる事はないという事になるのです(但し単立の神社であっても特に統理が認めた場合は、その神社に奉職している期間を本庁包括下の神社に奉職していたものと同等を見なす事があります)。

なお、この件に関してはの詳細は、昨年7月31日付の記事「明階検定合格・正階授与」や昨年8月2日付の記事「階位の検定料と授与料」を御参照下さい。


明階を取得しないと宮司にはなれない?

あるサイトを見た所、神主になる方法を教えて下さいという質問者からの質問に対する回答の中に、「正階は一般神職資格でしかありませんので、宮司には道程が遠いです」と書かれており、しかもその回答がいくつかある回答の中で「良回答」に選ばれていて、ちょっとびっくりしました。

現在、神社本庁の包括下にある神社は、事務的な諸手続きや待遇などの面における扱い上、「別表に掲げる神社」と「諸社」の2種に区分されており、「別表に掲げる神社」は通常、単に「別表神社」もしくは単に「別表」と称されています。

その別表神社宮司に任命されるためには明階を取得している事が必要とされるので、この回答が100%間違っているとまで言い切れないのですが、しかし世の中の神社の大半が「諸社」である現実を考えると、この回答の中の「正階は一般神職資格でしかありませんので、宮司には道程が遠いです」という部分は、9割方間違っていると言って差し支えないでしょう(神社本庁包括下の神社は全国に約79,000社あり、そのうち別表神社は約350社ですから、本庁包括下の神社総数に占める別表神社の割合は1%にも満たないのが現状です)。

別表神社宮司には明階を取得している神職しか任命されませんが、諸社においては、権正階以上の階位を取得していれば宮司になる事ができ、実際、正階権正階の階位で宮司として奉仕している神職は全国に沢山おられます。


別表神社の宮司になる訳でなければ明階は必要ない?

本庁教誨師神社庁の参事、その他一部の役職については明階を有している者でなければ任用されないという原則がありますが、(正階であっても任用されるという例外規程もあるため)それらの規定ははっきり言いまして些細な事であり、明階正階との最も大きな違いといえば、「別表神社宮司明階以上の階位を有する神職しか任命されない」という点に尽きます。この規程には例外規程が付かないため、明階とは一言で言うと、「別表神社宮司になるための資格」とも言えます。

という事は、別表神社宮司を拝命している神職は極めて一部の神職でしかないので、大多数の神職明階を取得する必要はないという事になってしまいます。しかしそれを言うのであれば、「諸社」の宮司権正階以上でなる事ができるので、大多数の神社に於いては権正階で十分という事になり、正階すら取得する必要はないという事になってしまいます。もっと極端な事を言えば、宮司になる意志のない者は直階でも十分という事になり、権正階以上の階位の存在意義が無くなってしまいます。

現実には、正階を取得していれば、別表神社宮司になれない事以外、現任の神職として困るような事態はまず起こりません。そのため、正階を有する神職の中には、「自分はこれからも正階で十分。明階を目指すつもりはない」とはっきりと明言する神職がいますし、その一方で、向上心から「やはり明階は欲しい」と考え、昇階を目指している神職もいます。明階を有する神職の中にも、「神職正階で十分。自分は明階を持っていて特した事なんか何もない」と言う神職がいる一方、「神職明階くらいは持っていなくては。明階は持っていて当然」と考えている神職もいます。結局、人それぞれの価値観といった所でしょうか。

私としては、取得できるチャンスがあるのであれば、なるべく上位の資格(明階)は取っておいた方がいいと思います。


養成所の卒業者は明階は取得できない?

神職養成所に開設されている課程のうち、専修課程のみは高等課程同様修了時に「明階検定合格・正階授与」とされますが、それ以外の課程は、修了時には正階(普通課程Ⅱ類修了の場合)、権正階(普通課程Ⅰ類修了の場合)、直階(予科修了の場合)のいずれかが授与される事になっております。

養成所の卒業者の大半が普通課程Ⅱ類の修了者である事を考えると、養成所の出身者の大半は「正階授与」で卒業しているといえるのですが、この場合の正階授与には、高等課程や専修課程の修了者のように「明階検定合格」は付きません。

では、普通課程の出身者は明階は取得できないのでしょうか?勿論、取得は可能ですし、実際明階を取得している養成所出身者(あるいは講習会出身者)は私の周りにも沢山います。

但し、「明階検定合格」の付かない「正階授与」のみで神職養成課程を修了した者は、「明階検定合格」で修了した者よりも、明階を取得するまでに時間がかかるのです。この件に関しては今年3月2日付の記事「神職経歴による階位の昇階」で詳しく紹介させて頂きましたのでそちらを参照して頂きたいのですが、改めて述べさせて頂きますと、正階の現任神職は以下の(1)〜(3)の条件を満たすと、明階に昇階ができるようになります。

(1)神職にして、大学卒業または神職養成機関普通課程を修了した者は正階授与後10年以上、短期大学もしくはこれと同等以上の学校を卒業した者は13年以上、その他の者は15年以上在職していること。

(2)明階基礎研修の全課程(30日間)を修了していること。

(3)正階授与後の研修歴(各種研修や中堅神職研修など)が20日間以上(但し明階基礎研修は研修歴に含めない)あること。

但し、普通課程修了後、直ちに専修課程(京都國學院にのみ開設されている、修了時に明階検定合格・正階授与とされる修業年限2年間の課程)に進学すれば、高等課程に在籍していた学生と同様、結果的には4年間(普通課程に在籍していた2年間も含める)で「明階検定合格・正階授与」とされます。時間的な事を考えると、普通課程修了者はこの方法が最も早く明階を取得できます。

ですから私としては、養成所(普通課程Ⅱ類)出身者で、明階を取得したいと考えていて、しかも年齢がまだ若い場合(例えば20代前半の場合)は、専修課程に進学する事をお勧めします。しかし、明階の取得を考えていたとしても、年齢があまり若くない場合は、高齢になる程奉職には不利になるので、専修課程に進学するよりもすぐに奉職する事をお勧めします。


最終学歴が専門学校卒業では専修課程には入学できない?

できない場合もありますが、単位を認定している専門学校を卒業した場合であれば、大抵は出願が認められます。同課程の出願条件は、「普通課程Ⅱ類修了者、正階所有者、短大卒業以上(もしくはそれと同等以上の学力を有する者)のいずれかに該当する者」とされていますが、専門学校卒業者の場合は、この条件の内の「それと同等以上の学力を有する者」に該当していると判断されるからです。

実際、昨年と一昨年の正月に当社に助勤に来てくれたT君は、高校卒業後、コンピュータ関係の専門学校に進学し、そこで2年間IT関係の勉強をしたのですが、その2年間の専門学校在籍期間が「それと同等以上の学力を有する者」と認められて専修課程に出願・入学し(当社の宮司が推薦状を書きました)、今年の3月、明階検定合格・正階授与で同課程を卒業しました。


普通課程を中途退学した場合、全課程を修了した場合に貰える階位よりも下位の階位なら貰う事ができる?

取得できる場合とできない場合があります。例えば2年間で正階が取得できる「普通課程Ⅱ類」に在籍している場合、その半分の期間の1年間で退学すると、1年間で権正階が取得できる「普通課程Ⅰ類」を修了したのと同等と見做されるため、申請をすれば権正階を取得する事ができます。

しかし、1年間で権正階が取得できるからといって、更に短い期間で辞めた場合なら直階が貰える、という事にはなりません。普通課程で取得できる階位は、あくまでも正階(2年間在籍)と権正階(1年間在籍)であり、それ以外の階位は取得できません。つまり、これは極端な例ですが、もし入学してから11ヶ月で養成所(普通課程)を辞めてしまった場合、あと1ヶ月在籍していれば権正階を取得できた事になりますが、この場合、階位は何も取得できないのです(直階も貰えないという事です)。


通信教育で階位取得を目指す場合、階位の取得までに何年かかっても大丈夫?

イムリミットは“5年”です。通信教育課程(大阪國學院にのみ開設されています)は、修業年限2年以上の権正階課程と、修業年限1年以上の直階課程がありますが、どちらの課程も5年を超えて在学する事はできないと定められています(但し休学期間は除きます)。


他の神職養成機関に転入する事はできない?

その実例はあまり聞きませんが、制度上は可能です。「神職養成機関に関する規程施行規則」第十八条の二に、「神職養成機関の在籍者で転入学を希望する者があるときは、教育上の支障がない場合には、神職養成機関の定めるところにより転入学できる」と明記されているからです。


最終学歴が中学卒業では神職にはなれない?

なれます。「予科」という、中学卒業者を対象とした修業年限1年間の課程(修了時に直階授与)が大社國學館に開設されていますので、中学卒業者はこの課程に入学する事で、神職の階位である直階を取得する事ができます。また、この課程を修了すれば普通課程の出願資格も得られるため、予科修了と同時に普通課程に進学して、その2年後に正階を取得する事も可能です。

但し、正階の取得までならともかく、中学卒業者が更に上位の階位(つまり明階)を取得しようとすると、それなりの困難が伴います。この件については、今年1月24日付の記事「中卒で明階取得は可能か?」を御参照下さい。

私個人としては、そうせざるを得ないような特殊な事情がない限りは、中学卒業後は養成所に入るよりもまずは高校に進学する事をお勧めします。


一度取得した階位が取り消される事はない?

実際に階位が取り消されたという例はあまり聞きませんが、「階位検定及び授与に関する規程」の第十八条には、「階位の検定又は授与について不正の行為が発覚したとき、又は階位の信用を著しく損なふ行為があったと認められるときは、その検定又は授与を取り消し、その旨を公告する」と規定されており、当人の重大な過失(不正行為や信用を損なう行為)により階位が取り消される事は有り得ます。

しかし、実はこれ以外の理由で、しかも当人に特に過失がないにも拘らず階位が取り消されるという事も有り得ます。「本庁に所属しない神社の職員取扱に関する規程」の第一条には、「本庁を離脱した神社の職員で離脱の時から引続いて在職する者は本庁所定の階位及び身分は之を喪失する」と規定されており、つまり神社本庁を離脱した神社の職員は、離脱と同時に自動的に階位と身分を喪失する(事実上剥奪される)のです。

本庁から離脱する神社の宮司は、その点(自分の階位が無くなる事)を十分認識した上で離脱を決めていると思われますが、その神社の職員は、自分の奉職している神社が本庁から離脱するという事をその直前まで知らされていない場合があるので、この点は特に注意が必要です。また、離脱する神社の神職兼務社がある場合、神職たる資格(階位)を失えば当然その兼務神社の神職でもあり得なくなるので、この点も注意が必要です。


(田頭)

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