西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

宗教行為か?収益事業か?(その2)

今日の記事は、ペット供養の解釈について国(税務署)と愛知県内の某寺院が真っ向から対立している事例を紹介した昨年6月15日付の記事「宗教行為か?収益事業か?」(下記URL)の続きです。

http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20070615

昨年6月15日付の記事「宗教行為か?収益事業か?」の内容を簡単にまとめると、その概要は以下の通りです。ペット専用の葬式場、火葬場、墓地、納骨堂などを設置し「動物霊園」の看板を掲げている愛知県春日井市の、天台宗に属する某J寺に対し、平成14年5月、小牧税務署が「ペット供養、納骨供養料その他の事業はいずれも収益事業に該当する」と判断し同寺のペット供養について約600万円を課税したため、J寺は「ペット供養は収益事業ではなく宗教行為である」として、小牧税務署長を相手取り課税処分の取り消しを求めて名古屋地裁に提訴しました。

裁判でJ寺は、「死者の供養や人形供養、針供養などは非課税で、ペット供養だけが課税対象となる合理的な理由がない」「ペットのための読経や火葬は僧侶自身の宗教行為・付随行為であり、受け取る金員は対価性のない布施であって、徴税庁による安易な類推解釈・拡大解釈で収益事業として課税するのは不当」と主張しましたが、平成17年3月、名古屋地裁は徴税庁側の判断基準を支持し、「J寺のペット供養はペット葬祭業者の営業形態と似ており、収益事業(具体的には葬儀と読経は請負業で納骨は倉庫業)であり課税対象である」としてJ寺の訴えを棄却しました。このため、この判決を不服としたJ寺は名古屋高裁に控訴しました。

この問題は宗教法学会などでも取り上げられ、同学会に於いても「社会通念に従えば、ペット供養を宗教行為と考えない方がおかしい」と名古屋地裁の判決を批判する意見が出ましたが、昨年3月、名古屋高裁は、「ペットの葬儀、遺骨の処理などの行為は収益事業に該当する」として、課税処分を適法とした一審の名古屋地裁判決を支持する判決を下し、J寺の訴えを棄却しました。J寺は名古屋高裁の判決を不服として、同月、最高裁へ上告し、現在もこの裁判は続いています。

…というのが、昨年6月15日付の記事「宗教行為か?収益事業か?」で紹介させて頂いた、ペット供養は宗教行為か、それとも収益事業なのか、という争点で争われている裁判の、大まかな概要です。J寺が上告したこの裁判は現在もまだ続いていますが、先月23日、この事例と同様に、東京都内の某E寺と東京都がペット供養施設への課税が適法か違法かで争っていた裁判の判決が、東京高裁で言い渡されました。東京で行なわれていたこの裁判は、争点は多少違うもののJ寺が起こした名古屋での裁判とよく似ており、今回の東京高裁の判決は今後の同種の裁判にも影響を及ぼす事も考えられますので、今日は、東京高裁で行なわれていたこの裁判について、以下に紹介させて頂きます。

東京都墨田区にある、浄土宗に属するE寺は、明暦の大火で亡くなった人々を供養するため明暦3年(1657年)に開創された寺院です。開創の年には、4代将軍徳川家綱の愛馬も葬られ、境内には「猫塚」(文化13年)、「唐犬八之塚」(慶応2年)をはじめ、軍用動物、三味線に使われた動物、実験用動物、オットセイなど、近代の動物供養碑も多く建立され、近年ではペット供養のお寺としても知られています。

現在E寺で行なわれているペット供養は、飼い主からペットの遺骨が持ち込まれると、境内の建物内にあるロッカー(遺骨保管棚)で1年間無料で安置した後、飼い主が希望すれば、年間2〜5万円で安置・供養しているそうなのですが、都は平成15年の調査でこのロッカーの存在と運用を確認し、翌16年からこのロッカーとその敷地について、固定資産税と都市計画税を課しました。

宗教法人を含む公益法人への課税については、33種の収益事業が課税対象とされており、固定資産税と都市計画税は、地方税法348条2項3号に「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第三条に規定する境内建物及び境内地」(つまり宗教目的で使用される建物・土地)は非課税とされていますが、都は、「動物と人は違い、動物の遺骨安置はペット霊園などの民間事業者と同じであり、同寺では動物供養による法人税を納めているといった観点からも、地方税法の非課税には当らない」と判断し、E寺に対して動物の遺骨を安置するロッカー部分と敷地に固定資産税と都市計画税計約140万円を課したのです。

このため、E寺はこれを不服とし、動物供養施設は明らかな宗教施設であるとして、都に課税処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴しました。東京地裁で行なわれた一審でE寺は、「有縁・無縁、人・動物に拘わらず、生ある全てのものに仏の慈悲を説く事が創建以来の理念である」事を歴史資料などを提示して説明し、動物供養施設は「宗教法人が専らその本来の用に供する」ものであると主張しました。しかし、東京地裁は都側の主張を全面的に認め、課税は適法との判決を下したため、E寺はこの判決を不服として東京高裁に控訴していました。ここまでの流れは、前述の愛知県のJ寺と(細部は違いますが)ほぼ同様です。しかし、高裁での判決が、J寺とE寺の事例では全く違ったものになりました。

先月23日、東京高裁で控訴審判決が下され、I裁判長は、「E寺は江戸時代から動物供養が行われ、地域住民からも篤い信仰の対象とされている。保管施設は非課税の宗教施設といえる」として、課税を認めた一審・東京地裁判決を取り消し、都の課税処分を違法とする判決を言い渡しました。東京高裁は、東京都の課税は違法であると判断して、E寺は都に逆転勝訴したのです。

I裁判長は、E寺には多くの動物供養碑があり、昭和37年に「動物回向堂」が建立され家畜やペットの遺骨が安置されてきた事実を認定し、地方税法の「宗教法人が専らその本来の用に供する」かどうかは「使用の実態を社会通念に照らして客観的に判断すべきである」との考えを示し、その上で、「動物供養が世俗一般に広く受け入れられて庶民の信仰の対象になってきた。ロッカー部分のみならず、敷地部分も専ら宗教的に使用する境内地と認められる」と判断し、また、同寺では浄土宗以外の教義での供養は行っておらず宣伝もしていない事から(但し同寺のHPでは案内されています)民間業者の営利事業とは異なると判断し、最終的に地方税法の非課税対象であるとの判決を下したのです。

この判決が下された時点では、都は「極めて残念。最高裁に上告するかどうかはまだ公表する段階にない」とコメントし、一方原告のE寺側は「地方税法で定められている宗教法人の“本来の用”が認められありがたい」とコメントしていますが、東京高裁のこの判決が確定するのか、それともこの判決を不服とした都が最高裁に上告するのかは、現時点ではまだ未定です。

ペットを飼う人が年々増えてきている以上、ペット供養についてはいずれ神社界に於いても同種の問題が発生する可能性があるので(人形供養や針供養などにつても同じ事がいえますが)、ペット供養を巡るこの種の裁判には今後も注目していきたいと思っています。


参考資料 …… 読売新聞(1月23日)、毎日新聞(1月23日)、時事通信(1月23日)、中外日報(1月29日)

(田頭)

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