西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

宗教者の教誨活動

全国教誨師連盟旗

今日は「更正保護記念日」です。これは、刑務所から出所してきた人達の更正の道を社会全体で開く事を目的とした記念日で、昭和27年のこの日に東京・日比谷で更正保護大会が開かれた事から、それまでの司法保護記念日(9月13日)と少年保護記念日(4月17日)を統合してこの日が新たに「更正保護記念日」に制定されました。

矯正施設(刑務所や少年院など)で行われている教誨(きょうかい)活動については一昨年3月22日付の記事で詳しく解説させて頂きましたが、残念ながら世間一般では教誨の趣旨や具体的な内容についてはほとんど知られていないので、今日は、更生保護記念日である事に因んで、改めて、宗教者の行う宗教教誨について解説をさせて頂きます。

教誨」とは、全国の各矯正施設に於いて、その施設に収容されている被収容者(受刑者)の精神的救済や更正などを目的に行われる活動の事をいい、明治41年に制定された「監獄法」第二十九条の条文「受刑者ニハ教誨ヲ施ス可シ其他ノ在監者教誨ヲ請フトキ之ヲ許スコトヲ得」がその法的根拠とされてきました(平成18年に新たに「刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律」が制定された事により、100年以上運用されてきた監獄法は同年廃止されました)。

そして、教誨活動に従事している人の事を「教誨師」といい、教誨師(いずれも非常勤・無報酬)は各宗教・宗派・教会の教師(神職・僧侶・神父・牧師・その他)がそれぞれ所属する宗教団体から任命され(但し矯正施設毎に教誨師の定員が定められており、更に各宗教毎に割り当ての人数枠があるため無制限に任命される訳ではありません)、当社の宮司も一昨年までは、神社本庁から任命を受けて、札幌市東区東苗穂にある札幌刑務所で神社本庁教誨師を務めていました。ちなみに、平成14年末のデータによると、宗教者の教誨師は全国に1,870人おり、平成17年7月のデータによると、そのうち神社本庁教誨師は全国に約130人いるそうです。

昨年12月12日付の記事で詳しく報告させて頂いたように、私は昨年の12月、札幌刑務所の敷地内にある男子刑務所と同所内別棟の女子刑務所の二箇所で、教誨活動の一環として斎行された大祓式(その年一年間の罪穢れを祓う神事)で祭員の一人として御奉仕させて頂いたのですが、その札幌刑務所では、平成17年末のデータによると30人の教誨師(内訳は神道3人、仏教24人、キリスト教3人)がそれぞれ本務の傍らで教誨活動を行っており、希望者に対して宗教講話を行ったり、あるいは大祓式、彼岸法要、盆法要などの宗教行事を執行しています(政教分離の原則との兼ね合いから、教誨は強制ではなく、あくまでも希望者に対してのみ行われています)。

札幌刑務所は、B級(犯罪傾向の進んだ者)とF級(日本人とは異なる処遇を必要とする外国人)の受刑者を主に収容しているのですが、同じくB級受刑者を多く収容している網走刑務所で教誨をされている教誨師の秋永智徳さん(北海道教誨師連盟会長)は、平成18年5月に刊行された「全国教誨師連盟創立五十周年記念誌」の中で、B級受刑者に対する教誨の注意事項として以下のように述べられています。

教誨希望を申し出た収容者について、時間的な余裕を持ちうるならば、罪名、刑期、犯数、年齢、精神状況、特殊性癖、所内生活の動向、家庭環境等々について十分な事前検討がなされなければならない。暴力団関係、麻薬関係の増加と、入れ墨のある者が非常に目立っている環境において、宗教意識に乏しく感心の低いと思われる収容者を対象とする諸条件を熟知し、それに対応しうる宗教教誨の内容が求められるのは当然である。

(中略)教誨出席者の実態について考察してみるに、比較的短期刑、累犯、暴力団、麻薬、若年層という現実にあって、宗教教誨が「教誨のやり放し」「教誨の受け放し」に終始するということがあるならば、そこには教誨そのものに根本的な大きな問題を抱えていることに注目しなければならない。(中略)私自身の最近の傾向として、教誨出席者は回を重ねる毎に増加の傾向にある。数そのものについては喜ぶべき現象ではあるが、それをそのまま受け止めてよいかと自己反省の素材にしている。教誨に望んで、宗教的情操の喚起、宗教的雰囲気への導入、展開、さらには教誨後の評価(反応)を怠ってはならないと思われる。

当社の宮司教誨師を務めていた関係上、当社には教誨についての資料が少なくはなく、当社にある教誨関係の書籍、会報、研修会の資料などには教誨活動についてのもっと具体的な内容が多数掲載されているのですが、しかし受刑者のプライバシーや各宗教団体の事情等を考慮すると、それらを全て公開するのは必ずしも適当とは思えない点もありますので、教誨内容についての記述は以上とさせて頂きますが、これらの記述から、全国の各施設で宗教者によりボランティアとして行われている教誨活動の一端を少しでも感じて戴ければ幸いです。

なお、昭和37年には、矯正施設に於ける宗教教誨の充実徹底を図る事を目的に「財団法人全国教誨師連盟」という全国組織が設立され、被収容者の改善更生という一つの目的の下に、各宗教の教誨師が垣根を越えて協力し合っています。具体的には、同連盟では全国の矯正施設に於ける教誨活動を様々な側面から支援し、また、教誨師に対する研修(中央研修・管区研修・都道府県研修・施設研修)、宗教教誨に関する調査・研究、全国大会の開催、機関誌の刊行等を行うなどしています。ちなみに、今日の記事に貼付のイラストが同連盟の連盟旗です。

平成18年1月のデータによると、同連盟の総裁は大谷光真氏(浄土真宗本願寺派門主)、理事長は山田義俊氏(浄土真宗本願寺派)、副理事長は平野俊興氏(浄土真宗本願寺派)と中村昌之氏(真宗大谷派)の2名、常任理事は秋永智徳氏(日蓮宗)・菊池了俊氏(浄土真宗東本願寺派)・市川信行氏(臨済宗妙心寺派)・田中明博氏(金光教)・櫻井正弥氏(神社本庁)・長尾惠證氏(高野山真言宗)・桐林三巳氏(浄土真宗本願寺派)の7名、監事は中村文隆氏(神社本庁)と山口芳典氏(浄土宗)の2名です(この他にも、同連盟には顧問、参与、理事の役員がいます)。

明治5年に真宗の僧侶の請願により初めて近代の教誨が行われるようになったという歴史的な背景から、真宗は特に教誨には積極的に関わっており、同連盟の役員に真宗の関係者が多いのはそういった経緯を反映しての事と思われます。

(田頭)

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