西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

階位取得や神職養成等に関するQ&A(その4)

平成19年4月24日付の記事では、今まで私に寄せられた問い合わせや質問等の内容を元に、「明階検定合格の有効期間について」「神社本庁の包括下にある神社以外の神職子弟が階位を取得する方法について」「階位の試験検定の概要について」「階位の通信教育(大阪國學院)について」の4点について、やや舌足らずならが私なりに解説をさせて頂きました。

また平成19年8月28日付の記事では、Q&A形式を用いて、「神職養成機関には必ず神社庁長の推薦状がないと入学できない?」「卒業時に明階検定合格・正階授与とされる課程はあっても、卒業時に直ちに明階が授与される課程は、今はもうない?」「明階検定合格となった者は、その2年後に必ず明階が授与される?」「明階を取得しないと宮司にはなれない?」「別表神社宮司になる訳でなければ明階は必要ない?」「養成所の卒業者は明階は取得できない?」「最終学歴が専門学校卒業では専修課程には入学できない?」「普通課程を中途退学した場合、全課程を修了した場合に貰える階位よりも下位の階位なら貰う事ができる?」「通信教育で階位取得を目指す場合、階位の取得までに何年かかっても大丈夫?」「他の神職養成機関に転入する事はできない?」「最終学歴が中学卒業では神職にはなれない?」「一度取得した階位が取り消される事はない?」という12の設問を設定し、それぞれの設問に回答をする形で解説をさせて頂きました。

そして、平成19年11月5日付の記事では、「今年から階位の授与料が改定されたと聞きましたが、詳しく教えて下さい」「大学と養成所の違いを教えて下さい。神職になりたい場合、どちらに入学した方が良いですか」「神社への奉職状況について教えて下さい」「巫女から神職になる事はできますか」という4つの設問を新たに設定し、8月28日付の記事同様、それぞれの設問に回答をする形で解説をさせて頂きました。

今日の記事は、それら過去3回の記事に続く、階位取得や神職養成等に関するシリーズの第4弾となる記事で、過去の記事に倣って今回も、Q&A形式にて以下にまとめさせて頂きました。とりあえず、今日の記事を含むこれら4回分の記事と、あとは、平成18年5月6日付の記事「神主になる方法」を一読して戴ければ、一般の方が抱く階位取得や神職養成に関する疑問のほとんどは解決するのではないかと思います。これらの記事が、これから階位を取得しようと考える人達の一助になれば幸いです。


そもそも神職養成機関とは何ですか?

神社本庁の定める「神職養成機関に関する規程」の第二条によると、神職養成機関については、『神職養成機関は、国典を講じ、国体に基く教育を行ふことを基本方針とする教育機関であって、神職を志す者に神道に関する学芸を教授し研究せしめ、及び神社信仰を強固にすると共に神祇奉仕の精神を淘治せしめる教育課程(以下「神職課程」といふ)を設置する』と定義付けられており、同規程第三条では『本庁の承認を受けなければならない』とされ、また、同規程第四条では、『神職課程は、高等課程、普通課程、専攻課程、専修課程及び明階総合課程の五種とする』と定められています。

つまり、神社本庁の承認を受けて設立されている、神職を養成するための課程(高等課程、普通課程、専攻課程、専修課程、明階総合課程)を開設している教育機関を、「神職養成機関」というのです。ですから、神社関係者の中には「神職養成機関とは、神職の養成所(2年制の普通課程が開設されている養成機関)のみを指す」と誤解している人がよくいるのですが、神職の養成所(志波彦神社・塩竈神社神職養成所出羽三山神社神職養成所神宮研修所熱田神宮学院京都國學院大社國學館)のみならず、神職を養成するための課程(高等課程・専攻課程・明階総合課程など)が開設されている國學院大學皇學館大学も、神社本庁の立場から見ると「神職養成機関」に含まれます(勿論、神職の養成とは関係のない学部・学科等は、神職養成機関という言葉の範疇には含まれません)。

もっとも、神社関係者以外の方に説明をする場合は、「神職養成機関とは神主を育成するための学校の事で、4年制の大学であったり、2年制の専門学校みたいな学校であったりと、養成機関によって学校としての形態には差異があるけど、とにかくそういった学校を卒業すると、“階位”という神主の資格が授与されるんだよ。神社本庁に加盟している神社に神主として奉職するためには、階位は絶対に必要なものなんだ。但し、階位には5段階のランクがあって、神職養成機関の卒業時に貰える階位は、学んだ期間や内容に応じて異なるんだよ」という簡単な説明で構わないと思います。


神職養成機関の入学試験のレベルについて教えて下さい。

この質問は、実は今までに何回も寄せられています。これから養成機関を受験しようとする人にとっては、当然気になる事だろうと思います。以下に、私の知っている範囲内、関係者などから聞いた範囲内で、各養成機関別に入試レベルを簡単にまとめてみました。これ以上の詳しい事は、私としては答えかねますので御了承下さい。

【國學院大學・皇學館大学の学部】 教学社から刊行されているそれぞれの大学の入試過去問題集(通称:赤本)を御参照下さい。大学の歴史や、学部・学科の内容、特色など、受験生にとって不可欠と思われる各種情報が多数掲載されている他、最近数カ年の入学試験の問題・解答や、傾向・対策等も、学部・系当別にまとめて掲載されております。國大・皇大の学部の入学試験を受けるのであれば、入試過去問題集は必須です。

【國學院大學 専攻課程】 昨年3月27日付の記事同年5月22日付の記事などで紹介させて頂いた、昨年3月に國學院大學の専攻課程I類を卒業し現在は札幌市北区に鎮座する某神社に奉職されているH権禰宜に、先程電話をかけて同大学専攻課程の入試レベルについて尋ねてみた所、H権禰宜曰く、「日本史の試験のレベルは、大学入試レベルというよりは、高校の定期試験(中間や期末など)のレベルに思えた。小論文は、それ程難しくはない大学の入試レベルかもしれない。但し、神道に関しての知識は多少は必要になるかもしれない。あとは、制限時間内にまとめられるように留意しておくべき」との事でした。ただ、H権禰宜は「テストの自己採点がかなり悪かった人でも合格していたので、実際には、試験の点数は必ずしも重視はされていないのかもしれない。面接では卒業後の奉職についていろいろと訊かれたので、面接の方が重視されているのかもしれない」とも補足されていました。ちなみに、H権禰宜が専攻課程を受験した時は、不合格になった人も何人かはいたそうですが、受験した人の大半は合格していたそうです。同大学専攻課程の場合、出願時に神社庁長の推薦状を提出しなければいけないので、神社庁から推薦状を書いて貰えたという時点で大抵の場合は「信頼に足る人物」と見て貰えるようです。

【皇學館大学 専攻課程】 皇大の専攻課程は、国大の専攻課程とは異なり出願時に神社庁長の推薦状を必要としないため(但し推薦状を書いて貰える場合はそれも受け取って貰えます)、国大の専攻課程よりも出願が容易であり、そのため、どうしても国大の専攻課程以上に出願者の数が多くなる傾向があり、当然その分、出願倍率が高くなります。昨年10月19日付の記事で紹介させて頂いた、昨年3月に皇學館大学の専攻課程I類を卒業し現在は九州某県の神社に奉職されているN出仕に、先程電話をかけて同大学専攻課程の出願倍率について尋ねた所、N出仕曰く、「自分が受験した時の倍率は4倍だった」との事なので、単純計算すると、受験した4人のうち3人は不合格になるという計算になります。また、入学試験のレベルについては、「一般の大学入試レベルよりは易しいと思う。試験のレベルは、高校卒業レベルの学力があれば十分に対応できると思う。但し国語や小論文に関しては、神道についての知識がある程度は必要になると思う」との事でした。とはいえ、「これは入学してから聞いたのだが、実際には筆記試験よりも面接の方が重視されていたようだ」とも補足されていました。

【各神職養成所】 志波彦神社塩竈神社神職養成所、出羽三山神社神職養成所神宮研修所熱田神宮学院京都國學院大社國學館の各入学試験のレベルは、一般常識レベルの学力・知識があれば十分に対応できるレベルだと思います。というよりも、(これはあくまでも私の主観ですが)養成所に於ける入学試験では、そもそも筆記試験の結果はあまり重視されていないように感じられます。現実には、たまに不合格になる人もいるので、決して「誰でも受かる」という訳ではないのですが、とりあえず、試験や面接を受ける際に明らかに態度が悪い(言動・姿勢・服装など)、規則正しい2年間の寮生活にとても耐えられそうにない程肉体的もしくは精神的に弱々しく見える(分散実習を行う國大の別科を除くと普通課程は原則として全寮制です)、筆記試験の成績があまりにも酷過ぎる(白紙で提出したのと大して変わらない点数だった)といったような事がなければ、普通は合格すると思います。養成所の場合は一部の例外を除くと、前述の國大専攻課程同様、出願時に神社庁長の推薦状を提出しなければならないため、庁長から推薦状を書いて貰えたという時点で、大抵は「信頼に足る人物」と見て貰えるのだろうと推測されます。昨年11月12日付の記事今月12日付の記事にそれぞれ付けられたコメントも御参照下さい。


昔と違い、今では国大や皇大で4年間修学しても、すぐには明階が取得できないと聞いていますが、4年間で明階を取得する方法はないのですか?

以前にも何度か述べさせて頂きましたが、従来は、國學院・皇學館両大学にそれぞれ開設されている高等課程や専攻課程を修了すると(神職課程単位取得者も含む)直ちに明階が授与されていましたが、制度の改訂により、高等課程では平成10年度入学者から、専攻課程I類では平成13年度入学者から、修了(明階検定合格)と同時に明階は授与されなくなり、それぞれの課程修了者は「明階検定合格・正階授与」とされるようになりました。つまり現在では、高等課程に4年間在学しても、昔のように卒業と同時には明階は授与されないのです。但し、それはあくまでも「原則」であり、実は「例外」もあります。神社関係者の間でもあまり知られてはいませんが、現在でも、國大もしくは皇大に4年間在学する事で、修了(卒業)時に明階が授与される道はあるのです。

前述の制度の改訂により、京都國學院には「専修課程」が、そして國學院・皇學館の両大学には「明階総合課程」という、従来はなかった新しい課程がそれぞれ開設されましたが、大学に4年間在学する事で明階が授与される場合に関わってくるのは、このうち「明階総合課程」です。同課程の履修対象者は、「高等課程の4年に在籍する者(年次末で高等課程の必要単位を全て修得し、神務実習も全て修了している者)、もしくは専修課程・高等課程・専攻課程?類のいずれかを修了した者、もしくは階位検定試験により明階検定に合格した者のうち明階検定合格後2年以内の者」と定められており、修業期間は6ヶ月以上(但し30日間の神社実習を含む)とされているのですが、何と言ってもこの課程の最大の特徴は、修了すると直ちに明階が授与される事にあります。

そして、明階総合課程について、國學院大學のHPには『神道文化学部の3年次成績優秀者より選抜し、卒業時に明階を授与』と記されており、また皇學館大学のHPには『「明階総合課程」は「明階」という神職階位を取得するための課程です。4年生在学中に、所定の単位を修得し、審査を経た学生にのみ授与されます』と記されている事から、國學院・皇學館の両大学の学部(神職養成課程のうちの高等課程)に在学する学生のうち、特に成績が優秀で、且つ本人に明階総合課程に進む意思がある場合は、4年次に明階総合課程に進む事ができ、そうなると卒業時に晴れて明階が授与されるのです。

ちなみに、國大のHPによると明階総合課程の「主な履修科目」の欄には、祭祀学特殊講義、神道教学特論、神道教化システム論、神社祭式特論、神社管理特論、神社実務演習、現代時局論等の科目が記されていました。明階神職養成機関で取得できる階位の中では最上位の階位なので、当然、明階総合課程ではそれに見合うだけの専門的で高度な内容を学ぶ事になります。


階位の取得に年齢制限はあるのですか?

「階位検定及び授与に関する規程」を読む限りでは、階位の取得や授与に対して特に年齢制限は設けられていないようですが、階位を取得するために学ぶ神職養成機関や階位検定講習会などには、入学者や受講者に対して年齢制限が設けられている事があるので注意が必要です。

例えば、志波彦神社塩竈神社神職養成所の場合は「年齢満21歳未満の者」、熱田神宮学院神宮研修所の場合は「満25歳未満」と、それぞれ入学資格に年齢制限が設けられています(しかも神宮研修所の場合は男性のみ)。また、階位検定講習会の場合は、主催者(國大・皇大・各神社庁)によって、受講対象者の制限年齢が異なっており、例えば最近の事例では、國學院大學主催の検定講習会は65歳以下、皇學館大学主催の検定講習会は70歳以下、京都府神社庁主催の検定講習会は75歳未満と、それぞれ異なる年齢上限が示されています。

なお、通信課程の大阪國學院の場合、出願資格は「満25歳以上65歳以下」と定められており、上限の他に年齢の下限も示されています。


直階から権正階、権正階から正階、正階から明階へと昇階する方法を教えて下さい。

直階から権正階へは、原則として「直階を有する神職、または神宮もしくは別表神社の雇員のうち、直階授与後7年以上在職している」「権正階基礎研修の全課程(10日間)を修了している、もしくは年齢が40歳以上である」「直階授与後の研修歴が7日間以上ある(但し権正階基礎研修は研修歴に含めない)」の3つの要件を満たしていれば、申請するだけで昇階する事ができます。

権正階から正階へは、原則として「神職にして、権正階を授与されてから10年以上在職している、もしくは7年以上在職し年齢が47歳を過ぎている」「正階基礎研修の全課程(30日間)を修了している」「権正階授与後の研修歴が10日間以上ある(但し正階基礎研修は研修歴に含めない)」の3つの要件を満たしていれば、申請するだけで昇階する事ができます。

正階から明階へは、原則として「神職にして、大学卒業または神職養成機関普通課程を修了した者は正階授与後10年以上、短期大学もしくはこれと同等以上の学校を卒業した者は13年以上、その他の者は15年以上在職している」「明階基礎研修の全課程(30日間)を修了している」「正階授与後の研修歴(各種研修や中堅神職研修など)が20日間以上ある(但し明階基礎研修は研修歴に含めない)」の3つの要件を満たしていれば、申請するだけで昇階する事ができます。もっとも、「3つの要件を満たしていれば、申請するだけで昇階する」とは言っても、その3つの要件を全て満たすのが現実にはなかなか大変なのですが(笑)。

但し、前述の、正階から明階への昇階条件は、あくまでも明階検定に合格していない場合の条件であり、既に明階検定に合格している場合、正階から明階への昇階はもっと容易であり、「神宮・神社・神社本庁神社庁のいずれかで2年以上の奉職歴を有している」「初任神職研修の受講が完了している」「初任神職研修の他、4日間以上の各種研修の受講が完了している」の3つの要件を満たしさえすれば、申請するだけで明階に昇階する事ができます。

なお、階位の昇階については平成19年3月2日付の記事「神職経歴による階位の昇階」で更に詳しく解説させて頂いておりますので、そちらも併せて御参照下さい。ちなみに、警察官・消防官自衛官などは、殉職すると、死後、階級が二階級上がる事はよく知られていますが、神職の場合は、生前の功績や神社界への貢献度によっては、死後、身分が一階級だけ昇級する事はありますが、死後、階位が昇階する事はありません。


神社本庁包括外の神社に奉職すると階位は剥奪されるのですか?

神社本庁包括外の神社(単立の神社や、神社本庁以外の団体の包括下にある神社)に奉職すると、神社本庁から授けられた階位を失う事になるのですか、という質問を過去に何度か寄せられた事がありますが、結論から言いますと、本庁包括外の神社に奉職したからといって、それを理由に階位が取り上げられるような事はありません。実際、単立の神社や、神社本庁以外の団体の包括下にある神社に奉職している神職の多くは、神社本庁の階位を取得し、現に保持している方が多いです。

但し注意すべきは、「本庁に所属しない神社の職員取扱に関する規程」の第一条には、『本庁を離脱した神社の職員で離脱の時から引続いて在職する者は本庁所定の階位及び身分は之を喪失する』と定められているため、例えばある神社が神社本庁を離脱した場合、その神社の離脱後も引き続きその神社に職員として在籍し続ける神職は、自動的に、自分が持っている階位と身分の両方を喪失する(事実上剥奪される)事になります。

逆に言うと、その神社が本庁から離脱する時に神職・職員としてその神社に在籍していなければ、基本的には全く関係のない事であり、例えば、かつて神社本庁から離脱した経緯がある単立の神社に職員として採用され奉職したからといって、自分の持つ階位には何の影響もありません。その神社が本庁から離脱した当時、職員としてその神社に在籍し、その後も在籍していた神職は、確実に階位を失っているはずですが。

また、これは私がある神社庁(北海道ではありません)の参事さんから聞いた話なのですが、その神社庁管内の某神社が本庁から離脱する事が決まった際、離脱は宮司とその一族が職員達に相談する事なく独断で決めた事であって、職員達には離脱が正式に決まってから知らされ、職員達の間で動揺が広がったため、神社庁としてはその神社の職員達を救済するため(その神社の宮司は自分の階位・身分を失う事は当然覚悟の上で離脱を決めたのだからいいとして、このままでは、それを知らされていなかった職員達までも離脱と同時に全員が階位と身分を失うため)、その神社が正式に離脱をする直前に、職員達を、本庁包括下の別の神社に転任させる手続きを採ったとの事でした。

実は、この手法を逆手にとれば、つまり「離脱決定 → 離脱直前に形式の上でだけ本庁包括下の別の神社に転任 → 正式に離脱 → 離脱した神社に再び籍を戻す」という手順を踏めば、その神職は、実態としては離脱前も離脱後もその神社に職員として在籍しているにも拘らず、階位は失わない事になります。もっとも、次項で述べるように他所の神社に「転任」するというのは、実際には口で言う程簡単な事ではなく、そもそも、階位を失いたくないためだけにそこまで手の込んだ事をして離脱した神社に再び戻るような神職は神社界・同業者から完全に信用を失う事になると思われるので、実際にそのような事を行う神職はまずいないと思いますが。(それにこの方法では、階位は保持できたとしても、「神職身分○級」という身分を失う事には変わりないので、実はあまり意味はありません。)

なお、数年前に、東京都内に鎮座する某神宮が本庁を離脱した際には、某神宮側と本庁側とが協議の結果、「某神宮に奉職している職員の中には、いずれ自社に帰ってお宮を継がなければならない神職が多数いるため、階位を失うと困る」という問題があった事に加え、「職員の大半は某神宮が離脱する事を公告まで知らされておらず、離脱の決定には関わっていなかった」という事と、「某神宮は将来的には本庁に復帰する可能性がある」という事が確認されたため、特例として、離脱の決定に関わった一部の職員を除く大半の職員は、離脱後もそのまま階位が保持されました。但し、これはあくまでも特例であり、通常はまず認められません。


神社に奉職してから、そことは別の神社に異動になるという事はあるのですか?

実は、これもよく受ける質問の一つなのですが、結論から言うと、「可能性としては、異動するという事は全く有り得ない訳ではありませんが、通常は、他所の神社に移動する事は滅多にありません」です。本庁包括下の神社は、それぞれが独立した法人であり(宗教法人ではない神社は本庁包括下となる事ができないため、本庁包括下の神社は例外なく全て法人です)、そのため、各神社の宮司が、会社でいえばCEO(最高経営責任者)や代表権取締役に相当するため、基本的には、神社の人事はその神社内で完結しているものなのです。

とはいえ、他所の神社に「異動」したとか「転任」したという話は、現実には意外とよく聞きます。私の周りの神職でも、所属先の神社を変えた経験を持っている神職は何人かいます。しかし、私が今まで見た限り、最も多い異動の実例は、神職養成機関を卒業した後に奉職した神社から自社(自分の実家が奉仕している神社)へと戻る、という異動であり、これは、まずはある程度規模の大きな神社で神職としての修行や経験を積んでから、将来自分が宮司を継ぐべき自社へと帰る、という事です。こういった異動は、神社界に限らず仏教界などでもよく行われていると思います。

しかし、頻繁にある事例ではないものの、それまで在籍していた神社から、自社ではない別の神社にまた異動するという事例も、現実には間々あります。家庭の事情(例えば親の介護など)により別の土地に移らなければならなくなった、体調を崩すなどし長期療養の必要があったため一度退職せざるを得なかった、別の神社から強力な引き抜きがあった、今までいた神社に於いて人間関係で揉めた、などその理由は様々ですが、ただ、こういった異動はやはり「特殊な例」と言うべきかと思います。

この件に関して、以前某神社庁の主事(当時は録事)さんにお訊きした所、『自己都合で神社を退職した上で別の神社へ異動するとなると、自分で後の道を切り開いて行かなければならず、再奉職はなかなか難しいと思う。異動する本人の立場にならないと分からないが、異動といっても最初の神社にとっては退職となるため、新しい神社では、どうしても前の神社の状況について訊かれるはず。神社庁にも、元神職だった人から神社への奉職を斡旋して欲しいという問い合わせがたまにくるが、やはりそこでもネックになるのがどうして退職したのかという点で、「良い所から求人が来ているからすぐに異動」と都合の良い展開にはなかなかならない。円満退社してすぐ別の神社に異動されている神職のほとんどは、放出する神社・採用する神社の間に縁故関係があるなど、両神社が所謂“相思相愛”の関係にある場合であり、異動のコンタクトが上手くいないと、一旦は退職する事になってしまうと思う。但し、ある程度の年齢になってくると、宮司や禰宜として是非来て欲しい、というヘッドハンティングのような事もある』と教えて下さいました。

養成所での私と同期や後輩にも、当初奉職した神社から所属先の神社を変えた人が何人かおりますが、その人達も、やはり異動(再奉職)にはかなり苦労をしていたようで、最初の神社を退職した後、地元の神社庁に通ったり関係者に連絡を取るなどして懸命に情報を収集し、いろいろな縁故や繋がりを利用して、退職してから数ヶ月後を経て次の神社(もしくは神社関係団体)などへの奉職を無事に果たしたようでした。ただ、こういった事例の場合は「転任」扱いとはならないため(最初の神社に所属していた時期と次の神社に所属している時期との間に、神職ではない空白の期間がある)、神職経歴は継続しておらず、そのため、年齢が20〜30代のうちは特に関係はないのですが、将来、神職としての身分が昇級する際や本庁から表彰を受ける際など勤続年数が考慮される時に、少なからず影響が出ると思います。かなり細かい話ですが。

なお、前述の主事さん曰く、都道府県を跨って神社を転任する場合は更に手続きが複雑になるそうで、転出元の神社、転出元の神社が所属する支部、転出元の神社が属する神社庁、転任先の神社、転任先の神社が属する支部、転任先の神社が属する神社庁、当人の7者の間で「宮司の転任同意書」「神社庁長の同意書」「統理宛転任同意書」「退職願」「任命具申書」「研修データ」などの各種文書が行き来する事になるため、まずはこれら7者の間が極めて良好な関係である事が大前提となり(つまり、人間関係で揉めるなどして円満に退社できなかった場合や、転出元神社の宮司と転任先神社の宮司の仲が悪い場合などは、転任は無理という事です)、当然日数もそれなりにかかり、しかも、宮司として転任する場合は更に事務手続きが煩雑になります。

こういった事情もあって、現実には、「自社へと帰る」という事例を除くと神職の転任は稀なのです。


(田頭)

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