西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神職の装束(前編)

今回(前編)と次回(後編)の記事では、私達神職が神事で着装する祭祀服装、即ち「装束」について、解説をさせて頂きます。装束には、祭祀の種類や着用する神職の身分に応じて、いろいろな種類があります。
以下(緑文字の文章)は、神社本庁の定める「神職の祭祀服装に関する規程」です。全5条の条文と詳細な具体例を例示している別表から成るこの規定が、神職の装束についての大原則となります。

【第一条】 神職の祭祀服装は、正装、礼装および常装の三種とし、その服装は別表に依る。
【第二条】 正装は、左の場合に用ふ。
 一 大祭の場合
 二 天皇 三后 皇太子または皇太孫御参拝の場合
【第三条】 礼装は、中祭の場合に用ふ。
【第四条】 常装は、小祭及び神社に於て行ふ恒例式の場合に用ふ。
【第五条】 当分のうち、礼装をもつて正装に代へることができる。
神社において由緒ある式年祭その他これに類する厳儀奉仕上、特に必要あるときは、その神社の宮司に限り、統理の承認を受けて、その当日一等級上位の正装を用ふることができる。
当該神社に古例ある場合は、その古例に従ふことができる。
神事又は礼典の場合には、斎服、狩衣、常服、浄衣その他の祭祀に適する服装を用ふることができる。

まず神社における祭祀は、大祭、中祭、小祭(恒例式を含む)の3種類に分ける事が出来ます。
大祭とは、「例祭」「祈年祭」「新嘗祭」「式年祭」「鎮座祭」」「遷座祭」「合祀祭」「分祀祭」や、これらには該当しなくても神社に特別の由緒ある祭祀の事で、中祭とは、「歳旦祭」「元始祭」「紀元祭」「昭和祭」「神嘗奉祝祭」「明治祭」「天長祭」や、その他これに準ずる祭祀及び神社に由緒ある祭祀の事、そして小祭とは、大祭・中祭以外の祭祀の事です。
神職の服装もこれに応じて、大祭には正装を、中祭には礼装を、小祭(恒例式)には常装、と定められております。
但し、第五条で「当該神社に古例ある場合は、その古例に従ふことができる」という“例外”が認められている事から、神社によってはかなり弾力的な運用がなされている実例も見受けられます。

では、正装・礼装・常装とは、具体的にはそれぞれどういった装束なのかというと、まず正装とは、男性の場合は「衣冠」(いかん)の事で、一般には「正服」と呼ばれるものです。冠(かんむり)を被り、神職身分に応じて定められた色の袍(ほう)や袴(はかま)を著けます。
礼装とは「斎服」(さいふく)の事で、冠を被り、神職身分に関わらず袍・袴とも白地のものを用います。
常装には「狩衣」(かりぎぬ)と「浄衣」(じょうえ)の2種類があり、いずれの場合も烏帽子(えぼし)を被ります。
今回の記事(前編)では、これらの装束のうち正服、斎服、狩衣を、以下の各項で解説させて頂きます。



≪ 正 服 ≫

神職が大祭で着装する、各種の祭祀服装の中では最も正式な装束です。
正服は、文官の束帯(そくたい)を簡略化したものなので、装束全体の中で単純に比較すると、衣冠である正服よりも、束帯のほうが更に上位に位置付けられますが、束帯は前出の「神職の祭祀服装に関する規程」には出てこない装束(つまり、束帯は最もフォーマルな装束ではあるが同規程では祭祀服の扱いは受けていない)なので、神職の祭祀服としては事実上、正服が最上位となります。

正服を構成する、冠(かんむり)・袍(ほう)・袴(はかま)の色や紋は、着装する神職の身分に応じて異なり、具体的には、「神職の祭祀服装に関する規程」の別表で以下のように定められています。ちなみに、袍というのは、貫頸衣(中央に穴をあけて首を貫す仕立て)の上衣の事です。
【特級】 冠は文小菱繁文、 袍は黒色・輪無唐草、 袴は白固織・文藤の丸
【一級】 冠は文小菱繁文、 袍は黒色・輪無唐草、 袴は紫固織・文藤の丸
【二級上】 冠は文小菱繁文、 袍は赤色・輪無唐草、 袴は紫固織・文藤の丸共緯
【二級】 冠は文小菱繁文、 袍は赤色・輪無唐草、 袴は紫平絹・無紋
【三・四級】 冠は遠文、 袍は緑色・無紋、 袴は浅黄平絹・無紋

…という事なのですが、文章だけ読んでもよくわかりませんね。
簡単にいうと、特級と一級の神職が著ける袍は、二級上と二級の神職が著ける袍は、三級と四級の神職が著ける袍は緑(但し実際には青に見えます)で、袴については、特級が白地に白紋、一級が紫地に濃い白紋、二級上が紫地に薄い白紋、二級が紫地に無紋、三級と四級が浅黄(実際にはほぼ水色に見えます)に無紋という事です。
つまり、正服の袴、もしくは、後述する狩衣という装束を著ける時に穿く袴を見れば、(三級と四級の区別だけはつきませんが)その神職の身分がほぼ特定出来るという事です。なお、最上位の特級の袴は、白地に、ほぼ同色の白い紋が入っているため、近くで見ると確かに紋様が浮かび上がって見えるのですが遠くから見ると、単に白単色の袴にしか見えない事が多いです。


正服を着装した西野神社神職

▲ 例祭日に西野神社拝殿前にて


新嘗祭(宮司祝詞奏上)

西野神社宮司新嘗祭祝詞奏上


西野神社宮司 神輿渡御での神事

西野神社宮司、駐輿祭で御神輿に拝礼


西野神社 松澤権禰宜

西野神社権禰宜、拝殿内にて


朝日舞を舞う西野神社神職

西野神社権禰宜朝日舞を奉納


平成24年 例祭

西野神社例祭日、発輿に先立って御神輿前にて


北海道神宮例祭(神門前)

▲ 私が参列させて頂いた、北海道神宮での平成21年の例祭の直後


平成15年 石清水八幡宮新嘗祭

▲ 私が助勤させて頂いた、石清水八幡宮での平成15年の新嘗祭の直後



≪ 斎 服 ≫

神職が中祭で着装する、祭祀服装の中では正服に次ぐ上位の装束です。
純白・無紋の絹の衣冠仕立てで、装束としての構成は、白一色である事と文様が無い事以外は、基本的に正服とほぼ同一です(飾具である檜扇を懐中するかどうかという違いはあります)が、正服が元々官位服で本来は神事専用の装束ではないのに対し、斎服は最初から神事専用服です。

袍(ほう)と袴(はかま)の色は、正服とは異なり各級統一で、神事専用服らしく全て白一色となりますが、浅沓(あさぐつ)については、「神職の祭祀服装に関する規程」の別表で「正装に同じ」と規程されているため、正装(正服を着装する場合)に倣って特級と一級では「沓敷白綾有文」、二級上・二級・三級・四級では「敷白平絹」という区別が生じております。もっとも、沓敷は履くと見えなくなる部分なので、結局外見からは神職身分は判別出来ませんが。

ちなみに、「神職の祭祀服装に関する規程」の第五条には、「当分のうち、礼装をもつて正装に代へることができる」とあるため、正服を揃えていないお宮などでは、大祭でも、斎服を正服の代用として用いている事があります。


西野神社宵宮祭での伝供

西野神社宵宮祭での総代幣帛伝供


西野神社権禰宜3人

西野神社権禰宜三人、拝殿内にて


平成26年 宵宮祭

西野神社宵宮祭での修祓


玉串後取をする越川権禰宜

玉串後取を奉仕する西野神社権禰宜


平成27年元日 西野神社 社務所(歳旦祭直前の越川権禰宜)

歳旦祭直前、西野神社社務所にて


平成25年 豊栄神社春季例祭

恵庭市に鎮座する豊栄神社での助勤


護國神社宵宮祭

▲ 札幌市中央区に鎮座する札幌護国神社での助勤
(但し賛者の2人は浄衣。その2人以外の神職は全員斎服)


石清水八幡宮 斎主以下祭員退下

▲ 斎主以下祭員退下、石清水八幡宮にて
(但し先頭を進む先導所役の女子神職は浄衣。彼女以外は全員斎服)



≪ 白地の狩衣 ≫

狩衣(かりぎぬ)は、神職が小祭や日々の御祈祷(内祭・外祭)、その他の神事などで着装する、神職にとっては最も著ける機会が多い装束です。
狩衣は、活動性を高めるために両袖は背中側の一部でしか身頃に縫い付けられておらず、両脇は開いたままになっていて、重くて動き辛く着装も容易ではない束帯や衣冠などに比べると立ち居振る舞いに不自由さが無く着用も簡便である事から、主に公卿が野外での鷹狩り用の軽装として用いてきました(狩衣という名前の由来もそういった経緯に由ります)。頭頂には、正服や斎服のように冠は付けず、烏帽子を被ります。

狩衣は、その便利さから、平安時代初期頃には上流階級の日常着として広く普及するようになり、後には上皇も普段着として狩衣をお召しになるようになり(但し天皇東宮が狩衣をお召しになる事はありませんでした)、更に時代が進むと、武家の礼装としても用いられるようになりました。今日では神社神道神職の常装となっているため、一般の方にとっても、各種の時代装束の中では最も目にする機会が多い装束と思われます。
なお、狩衣には神職身分による区別は無く、色や文様などは自由に選べますが、狩衣を著ける際に穿く袴(はかま)については、それぞれの神職身分に応じた色・紋を選ばなければなりません。

ちなみに、前出の「神職の祭祀服装に関する規程」では、狩衣を白地とその他の色とで区別したりはしていませんが、今回の記事では、掲載する狩衣の写真の枚数が多い都合上、この項の「白色の狩衣」と次項の「各色の狩衣」に二分しました。あくまでもこの記事の中で便宜的に分けただけで、狩衣をこのように分類するのが一般的というわけではない事を御承知おき下さい。


松澤権禰宜と越川権禰宜

西野神社で斎行された神前結婚式での斎主と祭員


平成26年 古神札焼納祭

西野神社境内で斎行された古神札焼納祭での斎主と祭員


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▲ 元日の零時丁度に新年幕開けの号鼓をする西野神社宮司


平成23年元旦 宮司による御祈祷

▲ 新年の御祈祷をする西野神社宮司


西野神社 田頭権禰宜

▲ 新年の御祈祷をする西野神社権禰宜


平成25年正月 御祈祷中

▲ 新年の御祈祷をする西野神社権禰宜


結婚祝賀会での朝日舞 演舞

西野神社権禰宜による朝日舞の演舞



≪ 各色の狩衣 ≫

この項では、白地以外の様々な色の狩衣について、紹介させて頂きます。前項には白色の狩衣の写真ばかりを掲載しましたが、実際には、むしろ白色一色ではない、華やかな色彩の狩衣のほうが一般的で、神職が着用する現代の狩衣には、実に様々な色彩・文様の狩衣があります。
なお、公家が用いていた当時の狩衣は、身分による違いこそ無かったものの、著ける人の年齢によって色が決まっていたり、四季に応じて重ね色目(狩衣の表地と裏地の色の組み合わせ)が指定されていたり、いろいろと複雑な決まり事がありましたが、現代の狩衣の色彩・文様には特にそういった決まりはありません。
ちなみに、狩衣の場合も、正服や斎服と同様、その内側(白衣の直ぐ上)には単(ひとえ)という一枚の小衣を着るのが正式ですが(前項に掲載の白地の狩衣の写真のうち、狩衣の下に見えているオレンジ色の小衣が単です)、これは省略しても良い事になっており、実際大抵の場合、単は省略されています。

ところで、私が知る限り札幌支部管内にはそういった神社は無いようですが、神社によっては、正服や斎服を揃えていないため、大祭・中祭・小祭、全ての祭事を狩衣を著けて奉仕している、というお宮もあります。
神職の祭祀服装に関する規程」の第五条に、「当該神社に古例ある場合は、その古例に従ふことができる」「神事又は礼典の場合には、斎服、狩衣、常服、浄衣その他の祭祀に適する服装を用ふることができる」という条文(例外を認める規程)がある事を前述しましたが、こういった事例はその具体例のひとつといえます。


平成25年 節分祭

西野神社節分祭での斎主と祭員


参集殿増築工事 安全祈願祭

西野神社参集殿増築工事安全祈願祭


祖霊殿竣工祭

西野神社祖霊殿竣工祭


平成19年 西野神社神輿殿地鎮祭

西野神社神輿殿地鎮祭


西野神社 車祓い

▲ 車をお祓いする西野神社権禰宜


西野神社 車祓い

▲ 車をお祓いする西野神社権禰宜


竣工祭

▲ 竣工祭を奉仕する西野神社権禰宜


西野神社・越川権禰宜

西野神社権禰宜、拝殿内にて


西野神社 田頭権禰宜

西野神社権禰宜、渡り廊下にて


狩衣(石清水八幡宮にて)

神職実習生だった当時、石清水八幡宮にて


狩衣(石清水八幡宮にて)

神職実習生だった当時、石清水八幡宮にて



※ 「後編」に続きます。なお、このシリーズは「前編」「後編」「番外編」の3部構成とさせて頂きます。

※ 今回の「前編」と、次回の「後編」、次々回の「番外編」の3本の記事を作成するにあたり、以下の文献・資料等を参考にさせて頂きました(順不同、著者名敬称略)。
 『神社本庁規程類集 平成二十一年版』
 『祭祀服の概説』 星野文彦著
 『有職故実図典 −服装と故実−』 鈴木敬三著
 『素晴らしい装束の世界 いまに生きる千年のファッション』 八條忠基著
 『カラー版 十二単のはなし 現代の皇室の装い』 仙石宗久著



(田頭)

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