西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

呼び覚まされる霊性の震災学

平成23年3月11日、国内では観測史上最大規模となるマグニチュード9.0、最大震度7の大地震東北地方太平洋沖地震)が発生しました。
そして、皆様も御存知のように、この大地震の発生に伴って、最大遡上高が40mにも上る未曾有の巨大な津波や、崖崩れ、火災、余震等が起こり、また、この大地震によって原発事故(福島第一原子力発電所事故)も発生し、東日本各地、特に東北地方と関東地方の太平洋沿岸部は、筆舌に尽くし難い壊滅的な被害を受けました。

これら一連の災害「東日本大震災」が発生してから、来月で丁度6年が経つ事に因み、今回の記事では、最近私が読んだ同震災関係の書籍の中でも特に印象に残った、新曜社から刊行されている『呼び覚まされる霊性の震災学 3.11 生と死のはざまで』という本を紹介させて頂きます。

呼び覚まされる霊性の震災学


この本は、東北学院大学教養学部地域構想学科の金菱清教授とそのゼミの学生達が、震災の被災地を実際に自ら歩いて回り、直接被災者達から聞き取りを行い調査するという地道で綿密なフィールドワークを通して、震災の当事者達がどのようにして「死者」と向き合っていったのかをまとめたノンフィクション(論文集)で、以下の8章から成っています。

【第1章】死者たちが通う街タクシードライバーの幽霊現象(宮城県石巻気仙沼
【第2章】生ける死者の記憶を抱く追悼/教訓を侵犯する慰霊碑(名取市閖上・震災慰霊碑)
【第3章】震災遺構の「当事者性」を越えて20年間の県有化の意義(南三陸町・防災対策庁舎)
【第4章】埋め墓/詣り墓を架橋する「両墓性」が導く墓守りたちの追慕(山元町坂元地区中浜)
【第5章】共感の反作用被災者の社会的孤立と平等の死(塩竃市・石巻市南浜町)
【第6章】672ご遺体の掘り起こし葬儀業者の感情管理と関係性(石巻市・葬儀社「清月記」)
【第7章】津波のデッドラインに飛び込む消防団の合理的選択(岩手県山田町・宮古市田老地区)
【第8章】原発避難区域で殺生し続ける猟友会のマイナー・サブシステンス(福島県浪江町


被災地のタクシードライバー達が震災後に体験した、乗車したお客さんが“実は幽霊だった”という不思議な現象。
我が子は記憶の中で生きていると感じて、慰霊碑を抱きしめる遺族達。
骨組みだけが残った痛々しい姿の防災庁舎を、「震災遺構」として保存するかどうかで当事者達の間でも賛否が分かれる議論。
気温の上昇や梅雨等により想像を遥かに超えた状態となっている約700体もの仮埋葬(土葬)された御遺体を、改葬(火葬)するため土中から掘り起こし、御遺体を一体ずつ丁寧に綺麗にした上で新しいお棺に納めるという作業を請け負った葬儀社。
自己犠牲と義勇の精神・使命感から、海岸の水門を閉めるため津波のデッドライン(死の最前線)へと向い、多くの殉職者が出た消防団員達。

…など、震災による「死」というものに対して現地の人々はどう向き合ったのかを、学生達が真摯な筆致で描いており、私達宗教者とは少し違った視点から、しかし非常に真面目に、目には見えない霊性の世界に迫っています。
本の厚さ(全約180ページ)の割にはお値段はやや高めですが(定価2200円)、内容的にはいろいろな方に読んで戴きたい良書ですので、興味のある方は是非一度読んでみて下さい。個人的に、オススメの本です。

ちなみに、「【第1章】死者たちが通う街」で語られている内容は、平成26年8月28日にこのブログにアップした記事「被災地で語られる幽霊話」ともかなり関連がある内容となっていますので、興味のある方は改めてその記事も併読して戴ければと思います。
幽霊と邂逅した人達の大半は“とても不思議な体験をした”という感想を抱いてはいるものの“恐怖を感じた体験”とは認識していない、幽霊からは突然死した事への“無念”は感じられても怪談でお馴染みの“他人への恨み”などは感じられなかった、という重要な点も共通しています。

また、「【第6章】672ご遺体の掘り起こし」で語られている内容については、別の本になりますが、PHP研究所から刊行されている『東日本大震災「葬送の記」鎮魂と追悼の誠を御霊に捧ぐ』という本(改葬作業を請け負った葬儀社の社長さんが書かれた本です)に更に詳しく書かれておりますので、この章に興味を持たれた方は、そちのら本も併せて一読される事をお勧めします。


なお、このブログの記事ではありませんが、以下の各記事でも、この本『呼び覚まされる霊性の震災学 3.11 生と死のはざまで』が紹介されていますので、この本を実際に買う前にこの本についてもう少し詳しく知りたいという方は、これらの記事も御参照下さい。

「幽霊現象」で考察する「死」と向き合う被災地の今
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/179558

なぜ、被災地で「幽霊」がたくさん出るか
http://blogos.com/article/172156/


(田頭)

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