丁度一年の折り返しとなる6月末日の昨日、当社では、午後3時から拝殿前で、毎年恒例の神事「夏越の大祓式(なごしのおおはらいしき)」を斎行致しました。
一年を上半期と下半期の二期に分けると、6月の晦日(末日)は、上半期の最終日に当たるため、古来より、12月末の大晦日が新年を迎えるための大切な日であるのと同様6月の晦日も、神様にその年の前半の無事を感謝し後半の無事を祈るための大切な物忌みの日、祓いの日とされてきました。
そのため、夏越の大祓(水無月の大祓とも云います)は、「その年の、元日から6月末日までの半年間の罪穢れを祓うと共に、残り半年間の無病息災を願う神事」として、宮中や全国津々浦々の神社で広く斎行されてきました。
歴史的には、後述する“蘇民将来伝説”に絡んで、夏に流行る事が多かった疫病を防ぐための神事としても執り行われてきました。
当社で行う大祓式は、氏子・崇敬者の皆様方が知らず知らずのうちに日々犯してしまった罪や過ち、心身の穢(けが)れを、「人形」(ひとがた)と称される、紙を人の形に切り抜いた形代(かたしろ)に移して清々しく祓い清め、併せて、普段運転したり乗ったりしている車にもしかするとこれから降りかかってしまうかもしれない災難を、車の形をした形代に移して交通安全を願う神事として、毎年執り行っております。
大祓式は、地域や神社によって斎行する日時・場所などが異なり、神事の内容にも差異が見られますが、当社の場合、日時は毎年6月末日と12月末日の年2回、共に午後3時から斎行しており、場所については、6月の大祓式(夏越の大祓)は、雨天でない限りは屋外(拝殿前)で、12月の大祓式(師走の大祓)は天候に関係なく拝殿内で、それぞれ斎行しています。
なお、当社の場合、茅の輪(ちのわ)を舗設するのは6月末の大祓だけで、昨日の大祓式では、その茅の輪を定められた所作に従ってくぐる事で疫病や罪穢を祓う「茅の輪くぐり」も行われました。
具体的には、昨日の大祓式は、斎主(須浪宮司)と、祭員2名(越川権禰宜、門権禰宜)、典儀1名(私)の計4名の奉仕により、以下の【1】〜【12】の次第に則って粛々と執り行われました。ちなみに、典儀というのは、簡単に一言でまとめると、祭典に於ける司会者の事です。
【1】開式の辞
【2】修祓
【3】宮司一拝
【4】大祓詞を宣る
【5】切麻(きりぬさ)を執りて祓う
【6】茅の輪をくぐる
【7】祝詞奏上
【8】斎主以下祭員玉串拝礼(座後列拝)
【9】参列者玉串拝礼(代表者のみ)
【10】宮司一拝
【11】宮司挨拶
【12】閉式の辞
以下に、昨日執り行われた本年の「夏越の大祓式」の様子を、上記次第の順に、その一部を写真と動画で紹介させて頂きます。
但し、以下に貼付の写真は全て、昨日執り行われた本年の夏越の大祓式で撮影されたものですが、動画のみは、昨日の大祓式ではなく平成26年の夏越の大祓式で撮影されたものです。御了承下さい。
大祓詞は、神様を奉ったり神威発動を期待する祝詞ではなく、唱える事に重きを置き、それによって清浄さを招いて、ひいては良い結果をもたらそうとする、祝詞・祭詞等の中では実はかなり例外的で特異な祝詞なのです。
なお、宮司が大祓詞を宣読している時、参列者の皆様方にも一緒に大祓詞を唱えて戴きました。参列者の方々には、大祓式が始まる直前に、大祓詞が掲載されている冊子をお配りし、祭典中はそれを見ながら声を揃えて唱えて戴きました。
この写真は1回目の左回りをする時の様子で、前から2人目の神職が奉持しているのは、皆様方から納められた人形(ひとがた)や車の形代を載せた三方で、前から3人目の神職が奉持しているのは、茅の輪をくぐる直前に参列者全員から回収した切麻の包み紙を載せた三方です。
これら2台の三方に載っている物は、いずれも大祓式の後、当社境内にて忌火でお焚き上げします。ちなみに、神社によっては、これらは川もしくは海に流すという所も多く、その場合、人形などは水に直ぐ溶ける紙が使われいるようです。
ちなみに、今回の記事に貼付した写真・動画の中ではこの動画のみ、本年の大祓式でなく、平成26年の大祓式で撮影したものです。
また、3回目に茅の輪をくぐる際に唱える「蘇民将来(そみんしょうらい)」という唱え言葉は、日本各地に伝わる説話、所謂“蘇民将来伝説”に基づくもので、簡単にまとめると、これは以下のような伝説です。
『 とある神様が、旅の途中で、ある兄弟の家をそれぞれ訪ね、一晩の宿を乞います。神様は先ず最初に、裕福な弟の巨旦将来に宿を乞いますが、巨旦将来は断ります。次に、貧しい兄の蘇民将来に宿を乞います。蘇民将来は、神様に喜んで宿を貸し、更に粟飯でもてなすなどしました。実はこの神様の正体はスサノオノミコトであり、蘇民将来のもてなしに感謝したスサノオノミコトは、蘇民将来に対して「お前の子孫は疫病にかからないようにしよう。疫病が流行したら、お前の子孫は腰に茅の輪をつけなさい。そうすれば疫病を避ける事が出来るだろう」 と教えました。』
そもそも茅の輪とは何なのか、どうして大祓では茅の輪を用いるのか、というと、それはこの “蘇民将来伝説” に因るもの、という事になります。元々は腰に付ける大きさであったはずの茅の輪が、いつから人がくぐれるような大きさになったのかはよく分っていませんが、遅くとも室町時代頃には、既にくぐれる大きさになっていたようです。
前出の大祓詞とは違い、この祝詞の奏上対象は神様なので、当然、この時は神様の鎮まっておられる本殿に向かって奏上されました。
なお、大祓式に参列して下さった方や、事前に人形(ひとがた)等を納められた方には、明日(7月2日)以降当社より、茅の輪守りなどが入っている授与品のセットを発送させて頂きます。5日頃までには届くと思いますので、もう暫くお待ち下さい。
昨日の大祓式の様子を写した写真は、「西野神社アルバム」の平成30年6月「夏越の大祓」のページ(下記URL)にも多数掲載させて頂きましたので、宜しければ是非こちらも御覧下さい。
http://f.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/300630%20%E5%A4%8F%E8%B6%8A%E5%A4%A7%E7%A5%93/?sort=old
(田頭)