西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

巫女(みこ)

本日・3月5日は、3(さん)と5(ご)の語呂合わせで「サンゴの日」とされていますが、3(み)と5(こ)の語呂合わせから、「巫女の日」ともされています。
もっとも、「サンゴの日」は、国際的NGO(非政府組織)である世界自然保護基金(WWF)が平成8年に制定した正式な記念日ですが、それに対して「巫女の日」は、インターネット上で徐々に広まり、この日に合わせて巫女のイラストや写真などをアップする事が一部の人達の間で慣例もしくはイベントになっていった、というだけで、今後の事は分りませんが現時点に於いては、正式に記念日として制定・認定されているわけではありません。

とはいえ、一応今日は「巫女の日」とされ、少なくともネット上に於いてはそれなりに多くの人達から記念日として認識されているようなので、それに因んで今回は、今更ながら巫女について解説をさせて頂きます。
ちなみに、今回の記事文中からリンクを張っている先の写真については、一部、他所のお宮で撮られた写真も含まれていますが、今回の記事に直接貼付されている写真は全て、当社境内社殿儀式殿授与所など)で撮影されたものです。

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西野神社巫女
平成29年 西野神社正月助勤者(巫女)

 

「巫女」とは、歴史的・民俗学的には「神がかり(御神霊の憑依)を行い託宣をしたり、死者の口寄を行うなどの、呪術的宗教能力を有する女性」を指しますが、明治維新期に、復古的な神道観による神社制度の組織化を図る動きや文明開化による旧来の習俗文化を否定する動きなどから、そういった呪術的・民間習俗的な巫女の行為が全面的に禁止され、そのため明治以降、巫女の役割は神社で神職を補佐する役目へと変化しました。
そういった経緯から現在では、日常に於いて用いられる「巫女」という言葉が前述のような旧来の意味で使われる事はほぼ無く、一般には、「神社で神職を補佐して祭事や社務を行う女性」や「神事に於いて神楽・舞を奉仕する女性」の事を指します。当社を含めた全国各地の神社で奉仕している巫女は、ほぼ全てがこのタイプの巫女であるといっても過言ではありません。
但し、御神霊や死霊などの憑依を受けてその口寄せを現在も行っている東北地方の「イタコ」や沖縄の「ノロ」などは、旧来の意味での巫女(宗教的職能者としての女性)といえます。

神社で奉仕している現代の巫女は、例外もありますが一般には、「白衣を着て、緋袴(ひばかま)という緋色(朱色)の袴を履く」という格好をしており、大前で奉仕する場合や神楽を舞う場合などには、白衣の上に千早(ちはや)という白い上衣を羽織る事が多いです。
神社によっては、特に大きな祭典や特別な祭典では、更に裳(も)という着物(十二単を構成する着物のひとつでもあり、後腰に付ける装飾)を著けたり、あるいは、鳥の姿を模した装束を著けたりする事などもあります。

ただ、神職の装束とは違い、巫女の装束については具体的な規定は無く、神社毎にそれぞれのしきたりに基づいて服制を定めているため、神社によって細かい差異があります。髪の長さ、髪型、髪飾りなどにも細かい指定があったり(一般には巫女は黒髪限定で、茶髪や金髪などは認められません)、神社によっては、奉仕中はメガネも使用禁止という場合があります(そういった神社の巫女で視力が悪い場合はコンタクトレンズを着用します)。

令和2年正月 西野神社 歳旦祭
西野神社 助勤巫女
西野神社 助勤巫女

 

ところで、世間一般では、女子神職と巫女を混同もしくは同一視している方が意外と少なくありませんが、女子神職と巫女は全く別の存在です。奉仕内容も着装する装束も異なりますし、それに、巫女として奉仕するに当たっては別段資格は必要ありませんが、少なくとも神社本庁包括下の神社(全国のほとんどの神社が該当します)に於いては、 神職として奉仕するために男性・女性問わず、必ず「階位」という神職資格を取得していなければなりません。
ですから女子神職の場合は(女子に限らず男子神職も勿論そうですが)、神社に奉職する前から神道や神社に関する専門知識を身につけていなければならないのですが巫女の場合は、そういった知識等については奉職してからそれぞれの神社に於いて教育を受ける事になるため、奉職前から専門知識を身につけていなければいけないという事はありません。神職と違って巫女に資格が無いのは、そういった事情にも因ります。

但し、神職の場合は男女どちらの場合でも、既婚であるか未婚であるかは全く問われませんが、神社で巫女として奉仕する場合は未婚である事が条件となり、結婚してからも巫女を続ける、という事は、通常は認められません。
勿論、巫女ではない立場としてなら、例えば、巫女から事務員に転身した場合や、階位を取得して巫女から神職に転身した場合などは、結婚してからも引き続き神社で奉仕を続ける事は可能です。現実には、そういった事例は多くはありませんが。

なお、これも未婚の場合に限られますが、既に階位を取得している女性の中には、状況に応じて神職として奉仕したり巫女として奉仕したりと、同じ神社の中でその立場を使い分けている事もあります。
ちなみに、巫女は、職種としては男女雇用機会均等法の適用外なので、現在でも「未婚の女性」に限定しての募集や採用が認められています。

 

巫女にはいくつかの分類がありますが、神社で奉仕している現代の巫女を、単に常勤か非常勤かという奉仕(勤務)形態で分けると、神社の正職員(正社員)あるいは契約職員としてその神社で日々常勤する「本職巫女」と、短期間もしくは繁忙期のみ神社で奉仕する「助勤巫女」とに大別出来ます。

本職巫女(略して本巫女ともいいます)の場合、私が今まで自分の身近で見聞きした範囲内で一番多いのは、高校を卒業して直ぐに巫女として奉職し、そのまま5~8年くらい奉仕し続け、20代前半のうち、もしくは25歳前後で退職する、というパターンです。
なかには、専門学校、短大、大学、神職養成機関などを卒業してから本職巫女として奉職する女性もおりますが、神社によって多少の違いはあるものの巫女が退職する年齢は大凡同じですから(20代後半の本職巫女もいますが、さすがに30歳を過ぎても本職巫女として奉仕しているという事例は、皆無ではないもののほとんど見られません)、その場合、巫女として奉仕出来る期間は、高校新卒の巫女よりは当然短くなります。

ただ、高校新卒にしろそうではないにしろ、本職巫女のなかには、奉職して1~2年で退職する、という事例も実はかなり多く見られます。奉職して1ヶ月以内に辞めてしまうという事も少なくはなく、そのため、これはあくまで私の主観ですが「巫女は意外と離職率が高いのかな」というイメージもあります。
もっとも、長く続いたとしても、どのみち巫女の大半は20代のうちに離職する事になるわけですし、それに、そもそも神職だって、神社に奉職してから1年も経たずに辞めてしまう人はやはり時々いますから(他所の神社に転任するとか、自社へ帰るとかではなく、20代や30代で神職そのものを完全に辞めてしまうという人は、残念ながら昔から少なからずいるのです)、離職率が高いのは何も巫女だけに限った話ではありませんが。

ちなみに、職員を何十人も抱えているような大規模な神社の一部では、30代もしくは40代くらいと推定される女性が、白衣・袴を著けた格好で社務所や授与所などに詰めて奉仕している姿を見る事もありますが、そういった場合の袴は、巫女特有の緋色(朱色)ではなく、松葉色(緑色)や赤紫色、もしくは紺色などであり、やはり外見からも巫女とは明確に区別されています。
そういった女性は、職務も、社務所での事務仕事や受付・窓口での参拝者対応が主となり、女子神職としての立場も兼ねている場合を除くと原則として巫女のように大前で奉仕する事は無いようです。

なお、助勤巫女しかいない場合や、本職巫女がいても数人しかいない場合などはその限りではありませんが、本職巫女がある一定人数(その基準が具体的に何人かは神社によって異なります)以上在籍している大規模な神社では、巫女達の中で最上位の序列にある者(巫女としての奉仕歴が最長の者など)を「巫女長」、次席の巫女を「副巫女長」などと称している事もあります。

西野神社授与所で奉仕する助勤巫女達
平成29年元旦の西野神社(授与所窓口)

 

一方、「バイト巫女」や「臨時巫女」などと通称される事も多い助勤巫女は、常勤の本職巫女とは違って、高校生・短大生・大学生など現役の学生である事が多いです。なかには、普段は他の職に就きながら(もしくは定職には就いておらず)、神社が多忙な時だけ巫女として奉仕するという助勤巫女もいますが。
あまり多くはありませんが、稀に、助勤巫女から本職巫女に昇格する事例(例えば、高校在学中は助勤巫女として奉仕し、高校卒業の翌年度から本職巫女として採用されるなど)もあります。

なお、特定の祭事で特定の祭祀舞を舞う事だけに特化した助勤巫女の場合は、必ずしも高校生以上である必要はないので、小学生や中学生の少女が巫女として奉仕する事もあります。ただ、沢山の本職巫女がいる大規模な神社では、そもそも自前の巫女に舞って貰えば足りる事なので、小中学生の助勤巫女がいる神社は概ね、本職巫女がいない、もしくはいても数人しかいない民社に限られる傾向があるようです。
ちなみに、そういった少女の事を「稚児」もしくは「舞姫」などと呼称し、巫女装束を著けてはいても「巫女」とは区別している神社も多くあります。

助勤の巫女
西野神社 助勤巫女(稚児)

 

ところで、巫女として実際に神社で奉仕している女性が、巫女としての日々の様子などを綴っているブログは複数あるようですが、私が個人的にオススメなのは、以下のブログ「本職巫女の大和撫子日記 神社にはナイショでお宮の裏側をお話します」です。
https://ameblo.jp/dj-p250/

ブログを管理されている御本人が既に神社を退職(巫女を卒業)されているため、最後にアップされた記事からもう10年も更新されていませんが、巫女として真摯に神社で奉仕していた姿勢や態度が伝わってくる内容のブログで、神社での日々の奉仕について、神前結婚式での奉仕内容、本職巫女に必須の神楽などの稽古事、本職巫女と助勤巫女の具体的な違い、巫女同士の関係性(先輩や後輩との関係)、巫女の装束や髪型、巫女としてのヘアケアやスキンケア、これから巫女を目指す若い女性へのアドバイスなどの他に、一般にはタブー視されがちな事(巫女の給料・休日・福利厚生、休日をどのように過しているかなどの巫女のプライベート、退職後の巫女の進路、神職や巫女の恋愛事情など)についても述べられており、これから巫女になりたという方には、大いに参考になる内容のブログだと思います。

 

なお、このブログ「西野神社 社務日誌」では過去に、巫女が主人公、もしくは主人公ではないものの主要人物のひとりとして活躍するマンガとして、「高天原に神留坐す」「神社のススメ」「かみさま日和」「花野さんとの縁結びは難しい」なども紹介した事があります。
これらの作品には、ファンタジー系のアニメ・マンガ・ゲームなどによくありがちな所謂 “なんちゃって巫女”(シャーマンとして強力な呪力を持っていたり、場合によって敵と戦うための攻撃的な魔法能力も有している)ではなく、現実に即したリアルな描写の巫女が登場するので、巫女が普段神社でどのような内容の奉仕をしているのか興味のある方は、これらの作品の御一読もオススメします。以下の各記事は、私がこれらの作品について紹介した記事です。

▼ 平成18年3月29日 「漫画で読む神社の内情」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entries/2006/03/29

▼ 平成23年5月21日 「かみさま日和」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entries/2011/05/21

▼ 平成23年12月18日 「かみさま日和 第2巻」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entries/2011/12/18

▼ 平成24年8月5日 「かみさま日和 第3巻」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entries/2012/08/05

▼ 令和元年8月31日 「花野さんとの縁結びは難しい」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entries/2019/08/31

 

文責:西野神社権禰宜 田頭