西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

妖怪アマビエ

御存知の方も多いとは思いますが、新型コロナウィルス感染症が国内外で広く流行するようになって以降、国内のインターネット界隈を中心に、「アマビエ」という半人半魚の妖怪の絵を描いてアップする事が流行っています。
江戸時代に肥後国(現在の熊本県)の海から現れて、疫病の蔓延を予言し「私の姿を写して人に見せると病気から逃れる事が出来る」と言ってまた海に帰って行ったらしいと伝わる妖怪で、この伝承から、疫病退散・疫病鎮静を願って全国でその絵が写されたり、その絵をモチーフとした作品が作られるなどしているようです。

下の画像は、アマビエ出現の報と、その姿絵を描いた、江戸時代の瓦版です(京都大学貴重資料デジタルアーカイブより)。髪が長く、体はウロコに覆われ、顔にはくちばしのような口のある姿で描かれています。

アマビエ出現の報と、その姿絵を描いた江戸時代の瓦版

 

下の画像(但し古いブラウザを御使用の場合は、文字のみが表示され画像は表示されない事もあります)は、我が国を代表する妖怪漫画家であり、「ゲゲゲの鬼太郎」「河童の三平」「悪魔くん」などの代表作でも広く知られた水木しげるさんの描いたアマビエです。

 

下の画像は、厚生労働省が今月作成し公開した、不要不急の外出や「密閉」「密集」「密接」を避ける行動への協力を促すための啓発アイコンで、御覧のようにアマビエがモチーフとなっています。厚労省のHPによると、「こちらのロゴはご家庭や学校、職場において自由にお使いください」との事です。

アマビエ(厚労省啓発アイコン)

 

今月5日に北海道新聞から配信された記事によると、昨今のアマビエ人気について、北海道出身の直木賞作家で妖怪研究家でもある京極夏彦さんは、以下のように述べられています。アマビエを描き写す人達も、本当にそれが疫病鎮静に効果のあるもの、と信じているわけではないが、複製するという行為を通じて精神的安寧を得ている、という見方です。

怪物が災厄を予言し「自らの姿を書き写せ」と告げるというスタイルは類型的なもので、アマビエはそのたくさんあるパターンの中のひとつにすぎません。
こうした “幻獣” は信仰として土地に伝わる民俗ではありません。また現れたという記録は残されているものの、実際に現れたことはないものと思われます。
現れたという情報だけが定期的に流布し、記録されるのです。刷り物が一般化し画像の複製が容易になったことも、こうした言説が流行した一因でしょう。それらは土地に伝わる伝承ではなく、メディアが伝える情報なのです。
予言する怪物は最初から “ビジュアルを含む情報” です。しかも “複製する” という能動的行為を通じて一定の精神的安寧を与える仕組みになっています。
SNSでアマビエが次々に複製されていくことは、ですから至極あたりまえのことだと思います。要はメディアが変わった、というだけのことだからです

 

前出の水木プロダクションによるツイートには、アマビエについて「妖怪、というより神に近い」と書かれており、実際、最近SNSなどでは、疫病鎮静を強く願う余りか「アマビエ様」と敬称を付けて呼ばれる事も多くなっているようですが、仮に神に近いものであるとしても、「様」という敬称を付けて呼ぼうとも、アマビエは「神」ではなく、あくまでも「妖怪」や「怪物」の範疇に分類されるものです。神社の御祭神や寺院の御本尊に相当するものではないですし、そもそも信仰や祭祀の対象でもありません。
しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延やそれに伴う自粛ムードがずっと続いて重苦しい空気が広がる中、お参りに来た人達が暗い雰囲気から少しでも開放されれば、という思いからだとは思いますが、最近は、アマビエの姿が描かれた護符の頒布をしたり、御朱印にアマビエの姿を押印したりする神社仏閣が徐々に増えつつあるようです。

アマビエもしくは妖怪と歴史的に何らかの関係や所縁のある社寺なら、それも構わないと思いますが、私個人としては(あくまでも一神職としての見解ですが)、特にアマビエに拘る事なく、備後国風土記などにも記されている蘇民将来伝説に由来するお札・茅の輪や、医薬・病気平癒などの御神徳で知られる御祭神(例えば少彦名命様など)に因んだ授与品等をお受けする事もオススメします。

 

文責:西野神社権禰宜 田頭