西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

伊勢の神宮についての公式ガイドブック

本年5月に大手出版社の小学館から、「図解 伊勢神宮」というタイトルの、その名の通り、全国の神社が本宗と仰ぐ伊勢の神宮についての、A4判オールカラー160ページのガイドブックが発売されました。
興味があったので、私も個人的に1冊購入しました(税抜1,818円)。

「図解 伊勢神宮」表紙

 

伊勢の神宮についてのガイドブックは、ここ数年だけでも既にかなりの冊数が出版されており、神宮についての本が世に出る事自体は今更珍しい事でも何でもありませんが、この本の最大の特徴は、「神宮司庁広報室の神職さん達が直接執筆・編集に関わった、初めての神宮公式ガイドブック」という点にあります。

「図解 伊勢神宮」目次
「図解 伊勢神宮」目次

 

神宮に関しては、正確とは言い難い情報や、明らかに誤った情報、根拠の無い俗説などが数多く流布しているため、神宮司庁では以前から「正確な情報を神職から発信出来ないだろうか」という構想を抱いていたらしく、その構想を具体化するため、小学館の図鑑チームのスタッフ達が結集して執筆・編集・レイアウトに3年かけて完成したのが本書なのだそうです。

そのため、本書の中にある、神宮の公式な見解が示されている「Q&A」のコーナーでは、あえて一般的な俗説を否定する回答も少なくはなく、それもまた、本書の大きな特徴のひとつになっています。
例えば、「神宮内にパワースポットはありますか?」という問いに対しては、「特にそのような場所はありません。(中略)あえていうなら神域すべてがそうなるでしょう」
参道の中央は神様の通り道なのですか?」という問いに対しては、「そのように説明する神社もありますが、神宮では違います。内宮は右側通行、外宮は左側通行としていますが、神様が通るからという理由ではありません」
大きな木に抱きついている人を見ましたが何かいわれでもあるのですか?」という問いに対しては、「いわれは何もありません。木からパワーをもらうなどといっていますが、神宮としては木の根元や木肌を傷めるのでご遠慮下さい」
正宮では個人的なお願いごとをしてはいけないのですか?」という問いに対しては、「正宮は公の祈願をお祭りという形で行なう場所ですので、感謝の気持ちを天照大御神に伝えるのが古くからの風習です。ですが、決して個人的なことを祈っていけないところではありません」
両宮の千木の切り口の形状が違うのはなぜですか?」という問いに対しては、「男神と女神、陰と陽などさまざまな説がありますが、特に理由はありません。(後略)」
といった回答が、それぞれ示されています。


千木(神社の社殿屋根の両端でX字状に交差させた部材)の先端切り口の形状については、「外削ぎ(縦削ぎ)」と「内削ぎ(横削ぎ)」の2種があり、これについては、「男性の神様をお祀りしている社殿は外削ぎで、女性の神様をお祀りしている社殿は内削ぎ」という俗説が広く流布しており、神社関係者の中にもそのように説明されている方がおられます。
昨年8月31日付の記事で紹介したコミック「花野さんとの縁結びは難しい」第1巻でも、主人公達が伊勢の神宮を参拝した際に、永河神社(架空の神社)の権宮司が「外宮は女神なのに男千木なのだよな」と説明したり(原則として内削ぎは女神、外削ぎは男神、という前提での説明ですね)、その次のページでは、千木のイラストと共に「一般には 男神→男千木、女神→女千木」といった解説もされていますが、前述のように「図解 伊勢神宮」では、この俗説についても「特に理由はありません」と一蹴しています。
「内削ぎは女神、外削ぎは男神」という俗説は、これを原則としてしまうには余りにも例外が多過ぎるのが現実で、とても原則とは認められないのです。

 

というわけで「図解 伊勢神宮」は、神宮暦を思わせるような雰囲気の白地の表紙はいたってシンプルなのですが、それに対して内容のほうはかなり濃く、それでいて写真やイラストも豊富で読みやすいため、私としては大変オススメの本です。
今のところ売れ行きも大変好調で、今月にも増刷される見通しとの事ですが、紙媒体である本の宿命として、いずれは絶版になってしまう可能性が高いので、伊勢の神宮に興味のある方は、まだ入手が容易な今のうちに、本書を一冊購入されてみてはいかがでしょうか。

 

文責:西野神社権禰宜 田頭