西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

花野さんとの縁結びは難しい 第2巻

令和元年8月31日付の記事では、「花野さんとの縁結びは難しい」というタイトルの、野広実由さんの作品(コミック)の第1巻を紹介させて頂きました。
この作品は、埼玉県に鎮座する架空の神社「永河神社」を主要な舞台とした4コマ マンガなのですが、先週、その続編となる第2巻が発売され、早速私も買って読ませて頂きました。

花野さんとの縁結びは難しい 第2巻

 

この第2巻は、ほぼ2年ぶりとなる新刊ですが、第1巻同様、永河神社やその周辺を舞台に、神職巫女達の日常が丁寧に描かれています。
実際の神社では、日々の奉仕の中で特にドラマチックが出来事や事件が起こるわけではなく、定められた年間行事が毎年淡々と繰り返されていきますが、この作品では、そういった穏かな日常をベースとしながらも、現実離れしない程度の良い塩梅で、マンガならではの独自の設定や、コミカルな展開などが加味され、全体としてバランスのとれた面白い作品に仕上がっています。

第2巻の帯(裏表紙側)に記されている通り、基本的には「恋愛経験0の三十路巫女と 恋愛経験0の三十路神主の もやもやして いちゃいちゃして はらはらして すっきりするラブコメ」という内容の作品で、権宮司(第2巻の途中から宮司に昇進しましたが)である30歳の神職「正信」と、やはり30歳である巫女「花野さん」(巫女達の中では最年長)との関係を中心に、物語は進んでいきます。
ストーリーの進行は比較的スローペースではありますが、第2巻では、正信に恋心を抱いている新たな巫女(園宮さん)がレギュラーキャラとして登場したり、永河神社の宮司が代替わりしたり(正信の父である前宮司は引退して名誉宮司になりました)、正信と花野さんの関係にも大きな進展があったりと、いろいろと変化も起こっています。

実際の神社に於いては、そもそも社内恋愛は全く発生しない事のほうが多いですが、普段はあまり神社に興味・関心を持っていないという方も、この作品をひとつの切っ掛けとして、少しでも神社に関心を持って戴ければ、神社界の末席に身を置く私としては大変嬉しく思います。

「花野さんとの縁結びは難しい」 第1巻&第2巻



ところで、この作品には、メインキャラのひとりとして「久吉さん」という女子神職が登場し、また、やはりメインキャラとして3人の巫女「花野さん」「天沼さん」「園宮さん」が登場しますが、女子神職や巫女については、このブログでも過去に以下の記事で詳しく解説をさせて頂きました。興味のある方は、これらの記事も併せて御一読下さい。

 

▼ 「女子神職
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20060411

▼ 「再び女子神職について」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20070324

▼ 「神職の装束(後編)」記事内で女子神職用の装束について解説しています
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20150827

▼ 「巫女(みこ)」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/2020/03/05/000000



第2巻の1ページ目(カラーページ)には、神職や巫女が使用する装束・祭具などの一部のイラストが掲載されています。これらのうち、立烏帽子(たてえぼし)、神楽鈴(かぐらすず)、笏(しゃく)については、それぞれ以下の記事で詳述させて頂きましたので、興味のある方は、これらの記事も是非御一読下さい。

 

▼ 「冠と烏帽子」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20121114

▼ 「笏(しゃく)」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20130122

▼ 「神楽鈴を新調しました」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20130512



第2巻の79ページには、「階位でなれる役職が決まるよ」と記されており、そのコマの中では、権正階については「別表神社権禰宜」とだけ書かれていますが、実際には、権正階正階同様「一般神社の宮司」にもなれます。これは単に、それを書くスペースがなかったために省略したのだと思いますが。
更に細かい事を言うと、直階でも、一定期間内に権正階を取得する事などを条件として、「一般神社の宮司代務者」に就任する事が出来ます。まぁ、これについてはかなり細かい事でもあるため、あえて省略したのでしょうが。

階位(神職資格)の制度についての詳細や、階位の具体的な取得の仕方や心構えなどについては、このブログに過去にアップした以下の各記事を御参照下さい。
但し、これらはいずれもかなり古い記事であるため、記事の内容については、現在とは変更が生じている箇所がある事も御了承下さい(例えば、明階検定合格・正階授与の方が実際に明階を授与されるに至るプロセスは、これらの記事をアップしてから大きく変わりましたし、京都國學院へ入学願書を提出する際も、現在は年齢制限が設けられるなどしています)。

 

▼ 「神職の階位」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20060316

▼ 「神主になる方法」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20060506

▼ 「神主を目指す学生が勉強する科目」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20070217

▼ 「階位取得に関してのお問い合わせ」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20070424

▼ 「階位取得に関する誤解に対して」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20070828

▼ 「どの課程でどの階位が取得できるのか」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20070829

▼ 「階位取得や神職養成等に関するQ&A(その3)」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20071105

▼ 「階位取得や神職養成等に関するQ&A(その4)」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20090214

▼ 「掲示板やメール等で寄せられた質問(神職養成編)」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20100422

▼ 「宗教者としての聖と俗のバランス」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20130503

▼ 「神職を志す方へ」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20130515



第2巻の途中で、正信の父は永河神社の宮司を退任し、それに伴い「名誉宮司」という名誉職に就任しましたが、名誉宮司については、以下の記事で詳述させて頂きました。こちらも、興味のある方はお読み下さい。

 

▼ 「名誉宮司
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20080726



ところで、私は先程「実際の神社に於いては、そもそも社内恋愛は全く発生しない事のほうが多いですが」と述べましたが、この点について、以下に私の思うところを記します。
神社の正確な実数は不明ですが神社本庁包括下の神社に限っていえば約8万社あると云われており神職の総数が全国で2万人強である現実を踏まえると、実際には、神職が常駐していない無人の神社が多数を占めている事になり、しかも、神職は1人も常駐していないのに巫女だけ常駐しているという事例はほぼ皆無でしょうから、巫女が常勤している神社は、全国全ての神社のうち1%にも満たないでしょう。
つまり、そもそも社内恋愛が成立する環境にある神社(結婚適齢期の未婚の男女が複数在籍している神社)のほうが圧倒的に少数、というのが現実なのです。

一般の方が「神社」と聞いて直ぐに頭に思い浮かぶ神社は、どこの神社でしょうか。
御自宅の近くにある氏神様以外だと、例えば、全国の神社の本宗とされる三重県神宮伊勢神宮)、出雲神話の中心地である島根県出雲大社三種の神器のひとつである天叢雲剣草薙剣)を御神体としてお祀りする愛知県の熱田神宮稲荷信仰の聖地である京都府伏見稲荷大社天神信仰の中心地である京都府北野天満宮や福岡県の太宰府天満宮初詣(三が日)参拝者数が全国の神社仏閣の中で毎年最多を記録している東京都の明治神宮、「こんぴらさん」の愛称で広く知られる香川県金刀比羅宮世界文化遺産に登録されている事でも知られる広島県厳島神社や栃木県の東照宮全国各地に鎮座する護国神社総本宮的な位置付けにあり毎年終戦記念日には必ずテレビニュースやネットニュースで大きく取り上げられる東京都の靖國神社、全国各地に鎮座する神宮号を有する神社(北海道神宮鹿島神宮香取神宮平安神宮石上神宮橿原神宮宇佐神宮宮崎神宮など)、全国各地に鎮座する大社号を有する神社(三嶋大社諏訪大社多賀大社建部大社春日大社住吉大社宗像大社など)でしょうか。

今具体名を挙げた神社はどこも全て、多くの神職や巫女が常勤している神社です。
という事を踏まえると、「常勤の巫女が沢山在籍している神社って、実は結構多いのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これはつまり、一般の人達が直ぐに思い浮かぶ有名どころの神社は、全国的にみれば1%にも満たない例外的な神社ばかり、という事でもあります。
私が奉仕している西野神社も、その1%未満には入っていない、全国的にみれば所謂「その他 大多数」に分類される一民社(諸社)です。
ですから、同じ神社の中で神職と巫女が交際をしたり、なかには実際に結婚に至った、という事例は、大規模な神社に於いては確かに少なからずあるものの、決して多いという程ではなく(神職だけで数十人、本職巫女も10名以上が在籍しているような大規模な神社では、社内に於いて神職と巫女とのカップルが複数あって、2年続けて社内結婚があったとか、場合によっては、同じ年に2組が社内結婚したとか、そういった事例も稀に聞きますが)、全国的にみればむしろかなり少数である、という事は理解して戴きたいと思います。
全国各地の神社で、適齢期の神職と巫女の多くが所謂「いちゃいちゃ」している、なんて事はありません(笑)。

花野さんとの縁結びは難しい 第2巻

 

この作品「花野さんとの縁結びは難しい」の第2巻では、別表神社宮司と、その神社に在籍する巫女が交際を始めますが、現実には、少なくとも私の聞き及んでいる範囲では、そういった事例も皆無だと思います。とは言っても、これは何も、第2巻でのこの展開が現実的なものではない、と批判しているわけではありません。
そもそも別表神社(の中でも、権宮司の職階を置く事が出来る程の大規模な神社)の宮司は、50代・60代・70代などが多く、巫女と恋愛が成立しそうな年齢(20代や30代)でそういった立場の神職は極端に少ないためでもあります。

なので、もし30歳で未婚の宮司権宮司が実際にいたとしたら、20代の巫女と恋愛関係になる事は、可能性としては十分有るでしょう。その良し悪しについてはここでは言及しませんが、一般の会社でいう職場恋愛と同じようなもの、と捉えれば、普通に有り得る事だと思います。
これは私の勝手な推測ですが、花野さんの年齢が、巫女としては高齢に当たる30歳に設定されたのも、別表神社宮司である正信と恋愛関係になる事や、その先にある展開(結婚?)を踏まえた上で、それに釣り合う年齢として設定されたのかもしれませんね。
別表神社宮司なり権宮司なりが、いくら相手が未成年ではないとはいえ、さすがに20歳になってまだ間もないコとお付き合いするというのは、世間的にもちょっとアレだと思いますので(笑)。

神社内に於ける恋愛事情については、実際に本職の巫女として奉仕した経験のある女性が記した、以下のブログ「本職巫女の大和撫子日記」の各記事を御参照下さい。このあたりの事情はそれぞれの神社によってかなり異なるので、これが平均的であるかどうかは兎も角、一例としてはかなり参考になると思います。

 

▼ 「神社内恋愛はOK?」
https://ameblo.jp/dj-p250/entry-10014074120.html

▼ 「神主さんの結婚事情~出会いがあるんだかないんだか」
https://ameblo.jp/dj-p250/entry-10015457954.html

▼ 「巫女の恋愛~ちょっとせつない話」
https://ameblo.jp/dj-p250/entry-10016096077.html

▼ 「出会いがないのよ!~本職巫女の叫び」
https://ameblo.jp/dj-p250/entry-10017790383.html



今後(第3巻以降)、正信と花野さんの関係はどのように進展していくのでしょうか。
久吉さんが四コマのラストで「早くつきあえよ!」と突っ込むオチが定番化しつつありましたが(笑)、実際にその二人のお付き合いが始まった事により、今後はそのツッコミは無くなりそうです。ただ、この二人が最終的には結婚するにしても、そうなるまでにはもう少し時間がかかるのではないかな、と思います。

というのも、正信は作中でああ言っておりましたが(結婚したとしても巫女を辞めろと自分なら言わない、という趣旨の発言)、現実問題として、巫女として大前で奉仕出来るのは未婚の女性に限られるので、花野さんは、正信と結婚をしたら正信の意向に関わらず巫女を辞めねばならず(宮司夫人という立場から社務に関わる事は出来ますが、巫女としての奉仕は原則として続ける事は出来ません)、そうなると、この作品は継続が難しくなるため(「花野さんとの縁結びは難しかったけど、何だかんだで成就した」などに改題すれば継続可能?・笑)、二人の結婚はまだ暫く先になるのかな、という気がしています。知らんけど(笑)。

 

ちなみに、蛇足となりますが、私は今でこそ既婚息子がいる身ですが、そもそも歳の割には恋愛事にはかなり疎く、女性に対しては所謂 “結構奥手” なほうだったので、そういった意味では、30歳なのに恋愛経験が無いという正信には、個人的に勝手に親近感を抱いております。まるで昔の自分を見ているかのようで(笑)。
もっとも、私は一民社の一職員(西野神社に何人もいる権禰宜のなかのひとり)であるのに対し、正信は、歳は若くても別表神社宮司ですから、神社に於ける神職としての立場は全然違うんですけどね(笑)。

 

文責:西野神社権禰宜 田頭