西野神社 社務日誌

札幌市西区の西野・平和・福井の三地区の鎮守(氏神様)であり、縁結び・安産・勝運上昇等の御神徳でも知られる西野神社の、公式ブログです。

神宮大麻

神棚と神宮大麻

 

三重県伊勢市には、「神宮」と称される、日本人全員の心の故郷とも言うべき大変尊いお宮があります。世間からは一般に「伊勢神宮」と言われている、古来より広く国民に親しまれているお宮でもあります。
ちなみに、今回の記事でこの点にまでついて触れるのは蛇足かもしれませんが一応補足しておきますと、「伊勢神宮」は通称・俗称で、お宮としての正式名称はただ漢字2文字で「神宮」、法人としての正式名称は「宗教法人神宮」です。一般財団法人伊勢神宮崇敬会など、附属団体・関連団体については正式名称に「伊勢神宮」の4文字が含まれる事もありますが、お宮としての正式名はあくまでも「神宮」です。

その神宮は、内宮(ないくう)と通称される「皇大神宮」と、外宮(げくう)と通称される「豊受大神宮」の2つの本宮を中心に、14の別宮と109の摂社・末社・所管社など合わせて125のお社から成り立っている、極めて大規模なお宮なのですが(境内地は一箇所にまとまっている訳ではなく多くの飛び地があります)、神宮を構成するそれら各お宮の中でも最大の信仰の中心となっているのは、皇室の祖神であり日本人全員の総氏神様であられる天照大御神(あまてらすおおみかみ)様を御祭神としてお祀りしている、下の写真のお宮「皇大神宮」です。

皇大神宮 御正殿

 

そして、その皇大神宮の御神札(おふだ)の事を「神宮大麻」(じんぐうたいま)といい、当社では、自社(西野神社)の神札とは別に、その神宮大麻も皆様方に授与しております。

神宮大麻の授与は、神宮の社務所に相当する神宮司庁から、全国各地の神社の大半を包括する神社本庁に全面委託されているため、神社本庁包括下の神社であれば原則として全ての神社で神宮大麻を扱っており(実際には、一部の神社本庁包括外の神社でも扱っていますが)、つまり、神宮大麻は当社を含む全国のほとんどの神社で授与しており、そのため直接神宮に行く事が出来ない人達でも、最寄の神社からいつでもお受けする事が出来ます。

神宮大麻三種

 

具体的には、神宮大麻は『 伊勢の神宮 → 各都道府県の神社庁(当地であれば北海道神社庁) → 神社庁の各支部(当地であれば北海道神社庁札幌支部) → 各地の神社(西野神社など) 』という順に、神宮・神社庁支部・神社などでその度神職により繰り返し祓い清められながら送り届けられ、その上で各神社の社頭(社務所授与所など)から各家庭・氏子崇敬者の皆様方へと授与されます。

また、神宮大麻は単に各神社の社頭で扱っているだけではなく、各神社の神職総代、その他(頒布奉仕者)の皆様方が氏子区域内の家々を個別に訪問して授与するなど、積極的な頒布活動も行われています。

神宮大麻の段ボール箱

 

どうして、各神社では自社の御神札とは別に神宮大麻も扱っているのかというと、歴史的な経緯皇大神宮は第11代垂仁天皇の御世26年・西暦紀元前4年に伊勢の五十鈴の川上に、豊受大神宮は第21代雄略天皇の御世22年・西暦478年に度会の山田の地に、それぞれお鎮まりになられました)や由緒(皇大神宮では天照大御神様から授けられた、皇位の象徴とされる「三種の神器」のうちのひとつの八咫鏡を御霊代としています)などから、伊勢の神宮神社神道最大の聖地且つ信仰の中心地であり、全国の神社の中でも格別に尊いお宮、国民全体で護持すべきお宮とされているからです。
神社本庁でも、神社本庁憲章に於いて伊勢の神宮を「本宗」(ほんそう)と定め、神宮に対しては「奉賛の誠を捧げる」「本庁の本宗として奉戴する」などとしております。

なお、神宮の由来(歴史)や、一般にはあまり馴染みの無い「本宗」という言葉の具体的な意味などについては、以下の各記事を御参照下さい。

▼ 「本宗の定義」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20100512

▼ 「神宮御鎮座の由来」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20100513

 

以上のような事由から、遍く世界を照らし万物の生成に欠く事の出来ない太陽のように最も素晴らしい御存在であり、日本人全員の総氏神様でもあられる天照大御神様を篤く御崇敬申し上げるため、私達日本人は、天照大御神様をお祀りする皇大神宮の御神札「神宮大麻」を天照大御神様の標章と仰ぎ、天照大御神様の御神恩に奉謝すべき表象として、各家庭に於いて神宮大麻をお祀り申し上げるのです。
ですから、もし御家庭の神棚神宮大麻をお祀りしていない場合は、伊勢の神宮もしくは最寄の神社から、必ず神宮大麻を拝受してお祀りするようにしましょう。

大きくて立派な神棚を設けている家でも、神棚には自分の崇敬している神社もしくは氏神様(最寄の神社など)のお札しかお祀りしていないという事例が少なからず見受けられますが、神棚には最低限、神宮大麻と氏神様の2体のおふだをお祀りし、その上で家族揃って日々感謝の祈りを捧げる事が、日本人としての神様に対しての礼儀であり、神様に対して誠の心を示す事になるのです。
神様に祈りを捧げる敬虔な気持ちは、私達の心も豊かにしてくれます。

神棚のお祀りの仕方

 

お札のお祀りの仕方

 

当社で授与している神宮大麻は、前出の写真(この記事に於いて上から3枚目の画像)に写っている3種類で、左から順に、「神宮大麻」(縦24.5cm×横6.8cm×厚さ2mm、初穂料1,000円)、「神宮中大麻」(縦25.2cm×横7.5cm×厚さ5mm、初穂料1,400円)、「神宮大大麻」(縦30.3cm×横10.5cm×厚さ9mm×初穂料2,000円)です。

これら3種の神宮大麻は、それぞれ大きさ・厚さが異なる事から、前記の通り初穂料は異なっておりますが、神宮大麻としての意義・趣旨・御神威などには何らの違いもなく、お受けする方の奉賛のお気持ちによりそれぞれ頒布されるものと御理解下さい(繰り返しますが、御神威には全く差はありません)。

なお、神宮中大麻や神宮大大麻は、スーパーやホームセンターなどで売られている安価な神棚や、高級な神棚であっても比較的小型の神棚などでは、宮形の中に納まりきらない事もありますので、神宮中大麻や神宮大大麻をお受けする場合は、必ず事前にその神棚の宮形のサイズを御確認下さい。
初めて大麻をお祀りするためどの大麻を受ければ良いか分からない、という場合は、先ずは通常サイズ(初穂料1,000円)の神宮大麻を受けられるのが良いかと思います。通常サイズの大麻は、原則としてどの神棚の宮形にも納まりますから。

お正月飾りの実例(神棚)

 

ところで、「神棚には原則としては、神宮大麻氏神様の2体のお札をお祀りしなければならない。それは知っている。でも、神宮大麻とは天照大御神様をお祀りしている皇大神宮のお札なのだから、ウチの氏神様も天照大御神様である場合は、神宮大麻はお祀りしなくてもいいんだよね。同じ神様のおふだが重複する事になってしまうから」と誤解されている方がたまにおられますが、結論から言うと、このような場合でも、神宮大麻氏神様の神札とは別にお祀りすべきです。

当社の本殿でお祀りしている御祭神には天照大御神様は含まれておりませんが、全国的にみると、天照大御神様をお祀りしている神社は数多くあります。平成27年7月22日付の記事で具体的にそれらの神社名を挙げていますが、札幌の市内・近郊だけに限定しても30以上もの神社で、天照大御神様を御祭神としてお祀りしています。
しかし、それらの神社の御鎮座の由緒は決して一様ではなく、実に様々で、神宮と深い御縁故のある神社(古代・中世に神宮の荘園であった、神宮の御神徳を全国に広める役割を担っていた御師が活動の拠点に勧請したなど)もあれば、詳しい由緒の判らない神社や、近代以降に御鎮座した神社もあります。

ただいずれの場合も、それらの神社の奉斎は氏子や崇敬者が中心・主体となっており、この点が、皇室により創建され天皇祭祀を第一義とする神宮とは大きく異なっているのです。ですから、氏神様が天照大御神である場合でも、神宮大麻氏神様とは別に神棚にお祀りすべきなのです。

 

なお、当社をはじめとする全国各地の神社で授与している神宮大麻とは別に、伊勢の神宮に直接お参りに行かれた方だけが現地でのみ受ける事の出来る、皇大神宮のおふだもあります。
それらは「授与大麻」と称され、神宮大麻とは区別されていて、具体的には、形状の違いにより「剣祓」(けんばらい)や「角祓」(かくばらい)、性格の違いにより「神楽大麻」(かぐらたいま)や「御饌大麻」(みけたいま)などがあります。

下の写真は、一番左が西野神社神札(神宮大麻や授与大麻との比較対象のためここに置きました)、その隣の3体が神宮大麻伊勢の神宮及び全国の神社で授与されています)、そしてその右側の2体が授与大麻伊勢の神宮でのみ授与されます)です。

西野神社神札と神宮大麻と授与大麻

 

御覧のように、神宮大麻・授与大麻のいずれにも「天照皇大神宮」という文字が記されており、大きさや形状が違う以外には特に大きな違いはないようにも見え、そのため、「神宮大麻・授与大麻どちらか一方を神棚にお祀りしている場合、もう一方の大麻はお祀りしなくても良い」と解釈されている方も少なくはないようすが、結論をいえばこれは誤解で、神宮大麻と授与大麻の両方がある場合は、どちらか一方だけでなく、どちらも共に神棚にお祀りして下さい。

なぜなら、神宮で直接授与される授与大麻は、「神宮へお参りした感激と喜びに広大無辺の御神徳を祟ぐ心映えをもって拝戴を希望する人に授与されるもの」とされ、要するに、個人的な感情のおもむくところにより受けるものとされており、一方、神宮大麻は、「朝な夕に皇大御神の大前を慎み敬い拝がましめ給ふ」という明治天皇の聖旨により、各地の神社を通じて全国の家庭に遍く頒布される「大御璽」(おおみしるし)とされ、つまり、国民にひとしく頒布されるべきものとされ、その拝戴の趣を異にしているからです。

実際に、それぞれの大麻の奉製に際しては、その修祓式で奏上される祝詞も異なり、奉製の時点からも拝戴の趣旨が違うものとして扱われています。ですから、神宮大麻と授与大麻は、どちらも家庭の神棚にお祀りして、更なる恩頼(みたまのふゆ)を祟ぎ奉るべきなのです。

順番としては、まず年末に、氏神様へお参りに行って、その際に氏神様のおふだと共に神宮大麻を拝受して新年を迎え、日々神様に感謝しながら生活し、その上で、可能であるならば伊勢の神宮へもお参りに行き、授与大麻を受けるのが理想だと思います。
勿論、神宮大麻より先に授与大麻を受けても全く構わないとは思いますが、しかし、もし、既に授与大麻を受けていたりお祀りしている事を理由に「どうせ同じ神宮のおふだなんだから、神宮大麻のほうはお祀りしなくても良いよね」と考えるなら、その解釈はは正しくありません、と言わねばなりません。

 

最後に、伊勢の神宮のおふだをなぜ「大麻」(タイマ)と呼ぶのかについても、解説させて頂きます。
そもそも大麻という言葉自体、神社関係者以外には全く馴染みがないのが実態で、一般の人は大麻と聞くと、ほとんどの場合、神宮大麻ではなく、違法薬物として時々ニュース等で話題になる大麻のほうを想起するのではないかと思います。

実は神道用語としても、神宮大麻の「大麻」とは別に、祭具(祓いの具)として全く同じ漢字で表される「大麻」(但しこちらのほうは、読み方はオオヌサ)があり、ついでにいうと、当社の鎮座する札幌市の隣町である江別市内には「大麻」という地名や駅など(こちらのほうは、読み方はオオアサ)もあるため、実は結構ややこしかったりします。

そういった事情から、当社の神職達が本来の意味で「大麻」という言葉を使う場合、そのほとんどは神職同士もしくは関係者同士などの所謂内輪での会話に限られており、一般の氏子・崇敬者の方々、神社にお参りに来られた方々に対して言う場合、誤解を避けるため大抵は大麻という言葉は使わず、「お伊勢様」「天照(あまてらす)様」「伊勢神宮のおふだ」などと、判り易い別の言葉に言い換えています。

では、なぜ伊勢の神宮のおふだの事を大麻と言うのでしょうか。その理由を求めると、平安時代末期にまで遡る事が出来ますす。
平安時代末期から江戸時代にかけて、伊勢には御師(おんし)と呼ばれる、参詣者を伊勢の神宮へと案内し、参詣者の参拝・宿泊などの世話をする人達がいました。御師は神宮に仕える祀官で、諸国から伊勢へやって来た参詣者の世話をするだけでなく、神宮の御神徳を広めるため自らも全国各地に赴き、崇敬者の家を一軒づつ訪問するといった教化活動も行っていました。
元々神宮は私幣禁断(個人的な祈願を受けない)のお宮でしたが、諸国を巡ったこうした御師達の活躍によって、広く一般の崇敬を集めるようになりました。

そして御師は、「檀那(だんな)」と呼ばれる崇敬者の家を訪ねる度に、幾度となく祓詞を唱えると清めの力が増すという数祓(かずはらい)の信仰に基づく「千度祓」や「万度祓」といったお祓いの御祈祷を行い、その際には、祓串(はらいぐし)を納めた箱などを檀那に持って行きました。
この場合の祓串というのは、神社でお祓いを行う際に今でも使われる大麻(おおぬさ)を小型化した祓いの具のようなもので、その祓串を納めた箱が所謂「お祓い箱」で、これと共に、小さな祓串を剣先形に紙で包んだ「剣先祓い」も広く頒布されました。これは「御祓(おはらい)大麻」とか「お祓いさん」とも呼ばれ、今日の神宮大麻の原型になったと云われています。

御祓大麻

江戸時代中期頃には、全国の総世帯数の約9割に大麻が頒布されるようになり、また、各地に伊勢講と呼ばれる崇敬組織もつくられ、交通事情の発達により庶民の間でもお伊勢参りが盛んになりました。

明治4年、神宮に関する制度が一新されて、御師による祈祷・神楽・配札は全て停止されましたが、翌年、明治天皇の思し召しにより、神宮司庁から大麻が奉製・頒布される運びとなり、これに伴い、大麻の体栽も「天照皇大神宮」の御神号に御璽が押捺された現在の形になり、大麻の名称も「御祓大麻」から「神宮大麻」に改称されました。
ですから、伊勢の神宮のおふだの事を「大麻(たいま)」と呼ぶのは、祓いの具である「大麻(おおぬさ)」からきたものであり、本来は御師がお祓いを修した験(しるし)の祓串であったから、なのです。

ちなみに、伊勢の神宮以外の神社で、その神社で頒布しているおふだの事を「神社大麻」もしくは単に「大麻」と称している例が見受けられますが、これは伊勢の神宮の例に倣った呼び方です。

 

 

 

 

 

文責:西野神社権禰宜 田頭