令和四年 人形供養祭
今日は午前11時から当社の社務所広間に於いて、毎年3月恒例の行事・神事である「人形供養祭」が斎行されました。
当社では毎年、ひな祭り(3月3日)の次の日曜日に人形供養祭を斎行しており、今年の場合は本日(3月6日)が当該日となり、先月15日から今日までの間に当社に直接持ち込まれたり郵送されるなどした沢山の人形・ぬいぐるみ等が、広間内の正面や左右両側面に舗設された祭壇に全て並べられ、それらの人形・ぬいぐるみ等の前で、厳かに人形供養祭が執り行われました。
当社が人形供養祭を始めた当初(今から三十年近く前)は、人形供養もしくはそれに類する神事を行っている神社は全国的にもまだ少なく、宗教施設での古い人形等の受け入れ先がかなり限られていたため、当社に納められる人形の数は膨大で、人形供養祭の当日やその直前などには、マスコミによる取材もよくありました。
その後、古い人形をお預かりする神社や寺院などが徐々に増えていった事もあり(北海道内でも増えていきました)、当社に納められる人形の数は、年によって多少の増減はあるのですが、概ね横這い、もしくは以前に比べると若干微減の傾向にあります。
しかし、それでも相当な数量(正確な実数は不明です)には違いなく、これだけの数の人形がこのように一同に祭壇にお飾りされる様は、なかなかの圧巻です。
ちなみに、今日執り行われた本年の人形供養祭も、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、所謂「密」となる状態を避ける趣旨から、昨年同様一般の方々の御参列は御遠慮戴き、「神職のみで斎行」とさせて頂きました。
来年こそは、大勢の皆様方御参列の下、平年通りの形で人形供養祭を斎行出来る事を願って已みません。
以下の写真や動画は、いずれも今日の人形供養祭の祭典中に撮影されたものです。
祭壇に並べられた全ての人形・ぬいぐるみ達に対して、神職が「持ち主の方々の愛着や慈しみなどの思いが籠っている、これらの人形・ぬいぐるみ達に宿っている御霊(みたま)が、神様のお導きにより神様の御許へと還り、そこで心穏やかに落ち着き鎮まりますように」という事を祈念させて頂き、併せて、持ち主の方々が人形・ぬいぐるみ達に対して抱く「今までありがとう」という感謝の気持ちを、祭詞(所謂祝詞)という形で、それらの人形・ぬいぐるみ達にお伝え致しました。
今日の人形供養祭の様子を写した写真は、「西野神社アルバム」の「令和4年3月 人形供養祭」のページ(下記URL)にも多数アップロードしておりますので、宜しければこちらも是非御覧下さい。
https://f.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/R040306%20%E4%BA%BA%E5%BD%A2%E4%BE%9B%E9%A4%8A%E7%A5%AD/?sort=old
以下の各記事は、いずれも過去にこのブログにアップした、人形・ぬいぐるみ・フィギュア等、もしくはそれらに類する玩具等についての話題の記事です。興味のある方は、これらの記事も併せて御一読下さい。
▼平成18年2月26日 「人形」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20060226
▼平成18年3月3日 「ひなまつり」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20060303
▼平成19年3月1日 「男雛・女雛の並べ方」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20070301
▼平成20年3月3日 「雛祭り」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20080303
▼平成20年3月4日 「雛人形の仕舞い方」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20080304
▼平成30年5月18日 「フィギュア供養」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/20180518
▼令和元年11月26日 「フィギュアに霊魂は宿るのか? ボーカロイドキャラクターに霊魂は宿っているのか?」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/2019/11/26/000000
▼令和2年4月27日 「会津の郷土玩具 赤べこ」
https://nisinojinnjya.hatenablog.com/entry/2020/04/27/000000
なお、2~3月期の人形類のお預かりは、今日を以て終了させて頂きます。
来月(4月)はお預かりはしておらず、次は、5月1日~7月31日にかけての3ヶ月間、また人形類のお預かりを再開させて頂きます。宜しくお願い致します。
ところで、今更ではあるのですが、この記事の最後に「人形供養祭」という祭典名についても、一応補足させて頂きます。
「供養」という言葉は、本来は仏教に馴染み深い用語であり、神社の立場としては、人形供養祭には別の名称を、例えば、単に「人形祭」、もしくは「人形清祓い」「人形感謝祭」「人形鎮魂祭」などを充てたほうがより適切なのかもしれませんが、現実には、供養という言葉は一般用語として広く世間に定着しており、清祓い・感謝祭・鎮魂祭といった名にするよりも供養祭という名を用いたほうが、どなたにも直ぐに祭典の内容をイメージ・理解して戴ける事から、当社では従前よりあえて人形供養祭という名を使い続けています。
「供養」という用語を使ってはおりますが、当社の人形供養祭には仏教的もしくは神仏習合的な要素は無く、祭典の内容は、純然たる神社神道の信仰に基づく神事である事を御了承下さい。
ちなみに、五来重さんの著書「日本人の死生観」(講談社学術文庫)には、以下のように記されています。
『供養は「日本書紀」(敏達天皇記)では「いたはりやしなふ」と訓じているとおり、もとは生ける親につかえることであり、ひいては尼僧をあがめやしなうことにも用いられた。したがって、必ずしも仏教的なものではないが、神道の氏神祭祀にたいして、仏教の先祖供養または “ほとけ” 供養の概念ができあがったのである。』
つまり、「供養」が仏教用語であるという事は間違いない事実なのですが、それはそれとして、歴史的には、別に仏教だけに限定された用語というわけではない、ともいえるみたいです。